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王都突入編

122話 暴走するゴザル

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 翌日。
 ホームのリビングにて僕は王都に向かう準備、揃えておくべきであろうアイテムをメモしていく。
 痛みに効く麻痺薬、現状手に入る最高ランクの回復薬、大陸龍に乗って王都に移動するだけでも油断は禁物、なにが起きても不思議ではない世界なのだ。

 今できる最高の状態を常に整えておくに越したことはない。
 そんな中、階段を降りてくる音が響く。
 その足取りは驚くくらいに弱々しく、一段一段命懸けのように感じるのは気のせいではないだろう。
 青白い顔付き、ゴザルが虚ろな目で言う。

「……おはよう、ソラ」
「おはよう。めちゃくちゃ顔色悪いけど大丈夫?」
「二日酔いよ」
「そんな気はした」
「ねえ、これって回復薬かなにかで治ると思う?」
「試してみようか」

 僕は回復薬をゴザルに手渡す。
 ゴザルはそれを一気に飲み干し、気だるげな息を吐く。最早、ゴザルという存在自体がアルコールと化していた。

「酒くさぁっ!」
「……女の子になんて失礼なこと言うのよ。怒鳴ってやりたいところだけれど、今日のところは許してあげる」

 ふらりと、ゴザルがソファーに倒れ込む。

「ぜ、全然効く気配がないわ。むしろ、回復薬が美味しくないから余計に気持ち悪くなってきた」
「まあ、効くんだったらそれ専用のアイテムが売られてそうだもんね」
「そう思うのなら先に言いなさいよ」
「いやぁ、治る可能性もゼロじゃないからね」
「……わ、私を実験台にしないで」

 昨日、全てが一段落したということで打ち上げをした。
 ナコ以外、成人していることもあり、美味しいご飯とお酒を片手に皆で騒ぎに騒ぎまくったのだ。
 無論、まだまだ色々な障害は残っている。
 だけど、全てを忘れて――ひと時の休息も必要だろう。ダンジョン調査によるランクアップ、僕の無実が認められたこと、リボルという脅威も一時的ではあるが去った。
 無制限に飲んでもいいというナコの許可も得て、僕はそれはもう今までの疲れを吹き飛ばすかのごとく――飲んだ、飲みまくった。
 ゴザルが負けじと付いて来た結果がこの有り様だったりする。

「……ソラも結構飲んだのに、どうしてそんな元気なの」
「意外と飲める方なんだよ」
「うぅ、視界がくらくらする。触診で治らない? もうスリーサイズは一度見られてるから気にしないわ」
「試してみようか」

 僕は触診をゴザルの身体に繋ぐ。


 ジョブ     武者
 コンディション 重度の二日酔い
 スリーサイズ  B78(Cカップ) W54 H77
 最近の趣味   ソラにもらった刀を磨くこと


「暴飲暴食のせいかな、ウエストの値が1センチ増えてるね」
「ねえ、数値を覚えていたの? 背筋が凍りついたんだけれど」
「それはさて置き、体内に魔力を通してみるよ」
「……んぅっ」
「どう? 効いてる感じある?」
「な、なにこれ、身体の奥側がピクッときたわ」

 ゴザルが吐息を漏らしながら、

「もっと、もっと強くしてみて」
「……」
「もっと、強く」

 エロい。
 シンプルにエロい――口にしたら怒りそうなので言わないけど。どうやら効果がありそうなので、僕は追加で魔力を注入していく。

「……ん、あっ」
「……」
「は、ぁっ」
「もう我慢できない! エロい声ださないでよっ!」
「なっ! べ、別にだしてないでしょっ?!」
「だしまくりだよっ! 僕の中身が男だってこと忘れないでっ!」
「……は、発情しちゃったの?」
「前も似たようなこと言ってたけど、するに決まってるだろっ?! バリバリに性欲のあるお年ごろだよっ!」
「……ご、ごめんなさい」
「普通に謝られると困っちゃう」
「ど、どうすればいいの?」
「えっ?」
「私、そこら辺あまりよくわからないから。しょ、触診のおかげでだいぶ体調はマシにはなったし、そのお礼っていうのかしら」

 ゴザルがじっと上目遣いにて、

「な、なにか、できることある?」

 予想外の返答に僕は言葉を失うのであった。
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