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王都突入編
120話 デバフ
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「無礼をすまなかったっ!」
リボルが姿を消した後、騎士団長が部屋に訪れた。
どうやら、呪法による混乱の付与――騎士団たちの記憶を操作していたようだ。現実となった今、デバフをメインとする呪術師は色々な意味で最強の一角かもしれない。
人間には知能がある、心がある、繋がりがある。どれか一つでも掌握されたら、脆く崩れやすいものだ。
騎士団長が深々と頭を下げる。
「王宮地下の調査に出向いてくれた、Sランク冒険者の仲間になんてことを――いくら操られてたとはいえ、これはもう私は首になるかもしれぬな」
「大丈夫です。ゴザルには僕から説明するので」
「まさか、大臣に成り代わっているとは想像もつかなかったぞ」
「本物の大臣はどうなりました?」
「クーラ殿は例のスカル・キラーの事件の当事者、凄惨な内容はご存知だろう。後日、遺体の回収に騎士団が赴いたのだ。その遺体の中の一人に見るも無惨な姿でいた。あの男に利用されていたのだろう。驚くことに、今の今まで我々は成り変わっていることに気付かなかった。何者なのだ、あの奇妙な男は?」
騎士団長は言う。
「もともと、亡くなった大臣は王に不満を持っていた一人でな。クーラ殿も見てわかる通り、ウィンディア・ウィンドはミミモケ族が人権を持つ国だ。これを良きとせぬものも多いのが事実、なにか口車に乗せられて騙されていたのかもしれん」
「王に不満、ですか」
「今のは失言だったな。忘れてくれると嬉しい」
「いえ、僕は王の考えに賛同です。耳や尻尾があるだけで、根本的な部分は僕たちと同じです。ミミモケ族が安心して過ごせる国こそがあるべき姿だと思いますよ」
「ありがとう。その言葉は王も喜ぶだろう」
ファンタジーにはよくある話。
オンリー・テイルの世界も例に漏れず、よくある話の一部なのだ。
人間を基準とし、自分たちと異なる見た目だからと――それだけで身分差を設けている世界観は多い。
特にミミモケ族のよう見た目が獣人となるものは、もとの世界でいうペットに近しい存在となる。
もし仮にもとの世界で動物が言葉を話すことができていたら、僕たちは同じベクトルで接することは可能なのだろうか。
この世界に根付く問題は大きいと、改めて認識させられるのであった。
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