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最強の武者Gozaru編
113話 零の呼吸
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「これがクーラの言っていた帰還用転移陣なんですね」
謁見の間、玉座に繋がる階段下に僕たちの探し求めるものはあった。
4~5人ほどが入れるほどの白い魔法陣、ゲーム時と同じような形のためすぐに把握できた。
ナコがペコリと頭を下げながら、
「私のせいで大変なことになってごめんなさい」
「説明不足だった僕も悪いよ。これからはダンジョン内、違和感のあるものは先に報告するようにしていこう」
「はいっ!」
ナコが威勢よく返事する。
「ナコちゃん、気に病む必要なんてないわ。最初はこうやって身体で覚えて強くなっていくのよ」
「もとを正せばイレシノンテに無理やり連れて来たゴザルが事の発端だから。ナコがやっちゃった率なんて可愛らしいものだよ」
「……は?」
「冗談だよ。殺意盛り盛りにして睨まないで」
「皆さん、仲がいいのです」
僕たちのやり取りを見て、キャロルさんがくすくすと笑う。
あとはウィンウィンに帰るだけ、皆で帰還用転移陣の上に乗る。ゴザルがアイテムボックスから白い紙切れを取り出し、
「ソラ、ここの帰還用転移陣セーブしていかない?」
「名案だね。『メモリー紙』は持ってるの?」
「ええ。一枚だけあるわ」
メモリー紙とは、帰還用転移陣をセーブできるSランクアイテムである。
ゲーム時は最大5人まで名前が保存でき、特定の場所から簡単に行き来ができるようになっていた。
「この大都市、今回は探索しきれてない場所も絶対にある。また来る可能性は高いと思っているわ」
ゴザルがメモリー紙に名前を書いていく。
《 Gozaru、Kura、Naco、Carol 》
「なんか、今まではキーボードで打っていたから新鮮な気分ね」
「じ、自分の名前までいいのでしょうか?」
「もちろんよ。キャロルさんは私たちの仲間なんだから。それに、まだまだここは探索してみたいでしょ?」
「はぅう。嬉しいのです、ありがとうなのです」
帰還用転移陣が起動するまでの間、ここまでの経緯を話し合う。
ナコとキャロルさんは城内からの異常な魔力を避けて、大都市の内部を探索することに重きを置いたそうだ。そんな中、戦闘の気配を察知して僕たちが到着しことに気付いたという。
ガラスティナとの熾烈な争い、勝利の貢献者にゴザルが尋ねる。
「キャロルさん。どうやってガラスティナの心臓を奪い取ったの?」
「ああ。それは僕も気になっていた」
あの瞬間、キャロルさんという存在が急に認識されたかのようだった。
はっきり言うと異常事態、キャロルさんが現れるまで――僕とゴザルはキャロルさんが記憶から消えていたのだ。
「言葉で説明するより、お見せする方が早いのです」
と、キャロルさんが消え――いや、今誰かいたか?
脳が混乱しているのがわかる。僕たちは3人パーティー、今からこの帰還用転移陣でウィンウィンに帰るのだ。
あってる、よな? あってるのか?
「ありがとう、全ての謎が解けたわ。だけど、無茶はしないで――もし少しでも敵意が込もっていたら無意識に斬っていたかもしれない」
「はわわ。やっぱり、ゴザルさんには気付かれてしまったのです」
キャロ、ル? キャロルさんが姿を現した。
ツンっとゴザルの頬を指で触ろうとしたのだろうか。ゴザルが真剣な表情にて手で受けとめている。
僕の脳が正常な状態に、キャロルさんという存在を再認識していた。
「これは自分の超越者スキル――"零の呼吸"なのです」
キャロルさんは言う。
「ゲーム時はモンスターの敵対心を全消去、仲間すらも自分をターゲットできなくなる。そういったスキルでした。ですが、この世界に来てからは――存在自体が消去されるという効果になっていたのです。自分にとってはソロで隠し要素を探すのに、敵対心リセットはとても便利なスキルでした。魔力消費が大きく多用できないので、今までは窮地の場面の時だけ使っていたのです」
キャロルさんは次いで、
「ゴザルさんのような戦闘に関してのスペシャリストは、微細な魔力を感知しての反応速度が段違いなのです。零の呼吸は誰かに触れてしまえば強制的に解除されてしまうので、達人相手には姿が見えた瞬間にやられるという危険性もあるのです」
「僕とゴザルに認識のラグがあったのはそういうことだったのか」
「王様の心臓を取れたのはナコさんとの事前打ち合わせ、お二人の戦闘を"隠密"で気配を消しつつ遠くから伺っていたおかげと言いますか。弱点を明確に知った上で城内への突入を決断したのです」
「私はお城に突入した瞬間、キャロルさんの存在が頭から消えました。私が二人を助けなきゃっていう気持ちに切り替わったんです」
単身という強制的な意識の埋め込み。
仲間すらも存在を忘れるということは、自身の様子から敵に気付かれるという心配も皆無となる。
特にナコは隠しごとが苦手なタイプだろう。
仲間が隠れているという素振りを一切見せることなく、いつも通りの状態で戦えるということだ。
想像を絶する超越者スキル、使用者によって『神』となるか『悪魔』となるか。
超越者はオンリー・テイルの世界に置いて重要な存在となるだろう。今はただ、二人が仲間でよかったと切に感じるのであった。
謁見の間、玉座に繋がる階段下に僕たちの探し求めるものはあった。
4~5人ほどが入れるほどの白い魔法陣、ゲーム時と同じような形のためすぐに把握できた。
ナコがペコリと頭を下げながら、
「私のせいで大変なことになってごめんなさい」
「説明不足だった僕も悪いよ。これからはダンジョン内、違和感のあるものは先に報告するようにしていこう」
「はいっ!」
ナコが威勢よく返事する。
「ナコちゃん、気に病む必要なんてないわ。最初はこうやって身体で覚えて強くなっていくのよ」
「もとを正せばイレシノンテに無理やり連れて来たゴザルが事の発端だから。ナコがやっちゃった率なんて可愛らしいものだよ」
「……は?」
「冗談だよ。殺意盛り盛りにして睨まないで」
「皆さん、仲がいいのです」
僕たちのやり取りを見て、キャロルさんがくすくすと笑う。
あとはウィンウィンに帰るだけ、皆で帰還用転移陣の上に乗る。ゴザルがアイテムボックスから白い紙切れを取り出し、
「ソラ、ここの帰還用転移陣セーブしていかない?」
「名案だね。『メモリー紙』は持ってるの?」
「ええ。一枚だけあるわ」
メモリー紙とは、帰還用転移陣をセーブできるSランクアイテムである。
ゲーム時は最大5人まで名前が保存でき、特定の場所から簡単に行き来ができるようになっていた。
「この大都市、今回は探索しきれてない場所も絶対にある。また来る可能性は高いと思っているわ」
ゴザルがメモリー紙に名前を書いていく。
《 Gozaru、Kura、Naco、Carol 》
「なんか、今まではキーボードで打っていたから新鮮な気分ね」
「じ、自分の名前までいいのでしょうか?」
「もちろんよ。キャロルさんは私たちの仲間なんだから。それに、まだまだここは探索してみたいでしょ?」
「はぅう。嬉しいのです、ありがとうなのです」
帰還用転移陣が起動するまでの間、ここまでの経緯を話し合う。
ナコとキャロルさんは城内からの異常な魔力を避けて、大都市の内部を探索することに重きを置いたそうだ。そんな中、戦闘の気配を察知して僕たちが到着しことに気付いたという。
ガラスティナとの熾烈な争い、勝利の貢献者にゴザルが尋ねる。
「キャロルさん。どうやってガラスティナの心臓を奪い取ったの?」
「ああ。それは僕も気になっていた」
あの瞬間、キャロルさんという存在が急に認識されたかのようだった。
はっきり言うと異常事態、キャロルさんが現れるまで――僕とゴザルはキャロルさんが記憶から消えていたのだ。
「言葉で説明するより、お見せする方が早いのです」
と、キャロルさんが消え――いや、今誰かいたか?
脳が混乱しているのがわかる。僕たちは3人パーティー、今からこの帰還用転移陣でウィンウィンに帰るのだ。
あってる、よな? あってるのか?
「ありがとう、全ての謎が解けたわ。だけど、無茶はしないで――もし少しでも敵意が込もっていたら無意識に斬っていたかもしれない」
「はわわ。やっぱり、ゴザルさんには気付かれてしまったのです」
キャロ、ル? キャロルさんが姿を現した。
ツンっとゴザルの頬を指で触ろうとしたのだろうか。ゴザルが真剣な表情にて手で受けとめている。
僕の脳が正常な状態に、キャロルさんという存在を再認識していた。
「これは自分の超越者スキル――"零の呼吸"なのです」
キャロルさんは言う。
「ゲーム時はモンスターの敵対心を全消去、仲間すらも自分をターゲットできなくなる。そういったスキルでした。ですが、この世界に来てからは――存在自体が消去されるという効果になっていたのです。自分にとってはソロで隠し要素を探すのに、敵対心リセットはとても便利なスキルでした。魔力消費が大きく多用できないので、今までは窮地の場面の時だけ使っていたのです」
キャロルさんは次いで、
「ゴザルさんのような戦闘に関してのスペシャリストは、微細な魔力を感知しての反応速度が段違いなのです。零の呼吸は誰かに触れてしまえば強制的に解除されてしまうので、達人相手には姿が見えた瞬間にやられるという危険性もあるのです」
「僕とゴザルに認識のラグがあったのはそういうことだったのか」
「王様の心臓を取れたのはナコさんとの事前打ち合わせ、お二人の戦闘を"隠密"で気配を消しつつ遠くから伺っていたおかげと言いますか。弱点を明確に知った上で城内への突入を決断したのです」
「私はお城に突入した瞬間、キャロルさんの存在が頭から消えました。私が二人を助けなきゃっていう気持ちに切り替わったんです」
単身という強制的な意識の埋め込み。
仲間すらも存在を忘れるということは、自身の様子から敵に気付かれるという心配も皆無となる。
特にナコは隠しごとが苦手なタイプだろう。
仲間が隠れているという素振りを一切見せることなく、いつも通りの状態で戦えるということだ。
想像を絶する超越者スキル、使用者によって『神』となるか『悪魔』となるか。
超越者はオンリー・テイルの世界に置いて重要な存在となるだろう。今はただ、二人が仲間でよかったと切に感じるのであった。
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