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最強の武者Gozaru編
108話 王の末路
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「哀しき王、己の選択を悔いてこの地に眠るのです」
キャロルさんが核を握り潰す。
瞬間、ガラスティナの姿がもとの人間に戻り――その場に崩れ落ちた。周囲を満たしていたガラスティナの魔力が徐々に薄れていく。
勝敗は意外すぎる形で幕を閉じた。
一体、キャロルさんは――いや、それは後回しだ。僕とゴザルはガラスティナのそばに歩み寄り質問をする。
「私たちの勝ちよ。約束通り、この大都市でなにが起きたのか話しなさい」
「……ふっ、そうだったな。核がなくなった今、余の命は間もなく。完全に消え去るまでに話そう、ここでなにが起きたか。まず、余はこの流の王国ウィンディア・ウィンド初代の国王だ」
ガラスティナは一拍置き、
「そして、この流の王国ウィンディア・ウィンドは二千年の歴史で終わりを迎える。国王は余のままでな」
「二千年よ? どういうことなの」
「魔人化の契約だ。人間を超越した存在、不死の存在となる契約、全ては余という揺るぎなき柱を建て、国の繁栄が全てだった――そうだな、そう思っていた、思えていたのは何百年くらいまでだったろうな」
ガラスティナは言う。
「余以外、百年も経てば世代は移り変わっていく。移り変わる度に意味のない口論、争いの火種、辟易していた――余は民にも不死を強制したのだ。余だけでなく民すらも変わらねばなにも起きぬであろうとな」
狂った極論、破滅への第一歩が始まった。
「不死となれば代償として子を宿すことはできぬ。それでも現状を維持し続けるのであれば利の方が大きいと考えていた。賛成するもの否定するもの、意見は大きく二つに分かれたが、全ての決定権は国王の余にある。否定したものたちは国から追放したのだ」
最初は安定していた。
まさに理想郷、ユートピアが建国されたのだとガラスティナは言った。文明は恐るべき速度で発展し、全てが上手くいった――いっていたはずだった。
「百年、また百年と過ぎ去り、死にたいと言うものが現れ始めた」
当然のことだろう。
不死というもの、死という概念のない世界、皆がガラスティナのよう――国王のように強い存在なんかじゃない。
「民の不死は余を主とした弱い契約でな、強き力で手を下せば死にいたる。余も民の願いを受け入れた、受け入れ続けた」
気付けば、全ては終わっていた。
「この国の未来を嘆き、なんとかするべく動いた配下や民もいた。お前たちが上で出会ったのはそのものたちであろう。余はことごとく選択肢を取り違えた――いや、最初から己以外を信じず王で居続けた時点で終わりは見えていたか」
ガラスティナが僕の方を向き、
「なあ、金の方。余もお前のように周りにいてくれた人々を信じ続けていれば、生まれてくる未来を信じ続けていれば違った結果があったやもしれぬな」
「それでも、君は皆に愛された王だったんじゃないかな」
「……余が愛された王? どういうことだ?」
「ガラスティナ、君と国の名前は地上にも立派に残っているよ」
ガラスティナ王宮、風の都ウィンディア・ウィンド。
狂った極論を押し付けるにいたった理由、王にしかわからない葛藤――追放された民も王を憎むというよりは哀れむ感情の方が大きかったのだろう。
地上に名が残る。
それは民に愛されていたという証だ。最終的に変わらぬ安定を望んだ王、結果として残念な答えはでたが――今までが否定されることでもない。
「そうか。不死を否定し、未来を繋いでいったものたちが――余の名を後世に伝えていってくれていたのだな」
ガラスティナは憂うよう瞳を閉じる、その頬には一筋の涙が零れていた。
キャロルさんが核を握り潰す。
瞬間、ガラスティナの姿がもとの人間に戻り――その場に崩れ落ちた。周囲を満たしていたガラスティナの魔力が徐々に薄れていく。
勝敗は意外すぎる形で幕を閉じた。
一体、キャロルさんは――いや、それは後回しだ。僕とゴザルはガラスティナのそばに歩み寄り質問をする。
「私たちの勝ちよ。約束通り、この大都市でなにが起きたのか話しなさい」
「……ふっ、そうだったな。核がなくなった今、余の命は間もなく。完全に消え去るまでに話そう、ここでなにが起きたか。まず、余はこの流の王国ウィンディア・ウィンド初代の国王だ」
ガラスティナは一拍置き、
「そして、この流の王国ウィンディア・ウィンドは二千年の歴史で終わりを迎える。国王は余のままでな」
「二千年よ? どういうことなの」
「魔人化の契約だ。人間を超越した存在、不死の存在となる契約、全ては余という揺るぎなき柱を建て、国の繁栄が全てだった――そうだな、そう思っていた、思えていたのは何百年くらいまでだったろうな」
ガラスティナは言う。
「余以外、百年も経てば世代は移り変わっていく。移り変わる度に意味のない口論、争いの火種、辟易していた――余は民にも不死を強制したのだ。余だけでなく民すらも変わらねばなにも起きぬであろうとな」
狂った極論、破滅への第一歩が始まった。
「不死となれば代償として子を宿すことはできぬ。それでも現状を維持し続けるのであれば利の方が大きいと考えていた。賛成するもの否定するもの、意見は大きく二つに分かれたが、全ての決定権は国王の余にある。否定したものたちは国から追放したのだ」
最初は安定していた。
まさに理想郷、ユートピアが建国されたのだとガラスティナは言った。文明は恐るべき速度で発展し、全てが上手くいった――いっていたはずだった。
「百年、また百年と過ぎ去り、死にたいと言うものが現れ始めた」
当然のことだろう。
不死というもの、死という概念のない世界、皆がガラスティナのよう――国王のように強い存在なんかじゃない。
「民の不死は余を主とした弱い契約でな、強き力で手を下せば死にいたる。余も民の願いを受け入れた、受け入れ続けた」
気付けば、全ては終わっていた。
「この国の未来を嘆き、なんとかするべく動いた配下や民もいた。お前たちが上で出会ったのはそのものたちであろう。余はことごとく選択肢を取り違えた――いや、最初から己以外を信じず王で居続けた時点で終わりは見えていたか」
ガラスティナが僕の方を向き、
「なあ、金の方。余もお前のように周りにいてくれた人々を信じ続けていれば、生まれてくる未来を信じ続けていれば違った結果があったやもしれぬな」
「それでも、君は皆に愛された王だったんじゃないかな」
「……余が愛された王? どういうことだ?」
「ガラスティナ、君と国の名前は地上にも立派に残っているよ」
ガラスティナ王宮、風の都ウィンディア・ウィンド。
狂った極論を押し付けるにいたった理由、王にしかわからない葛藤――追放された民も王を憎むというよりは哀れむ感情の方が大きかったのだろう。
地上に名が残る。
それは民に愛されていたという証だ。最終的に変わらぬ安定を望んだ王、結果として残念な答えはでたが――今までが否定されることでもない。
「そうか。不死を否定し、未来を繋いでいったものたちが――余の名を後世に伝えていってくれていたのだな」
ガラスティナは憂うよう瞳を閉じる、その頬には一筋の涙が零れていた。
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