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最強の武者Gozaru編
102話 王
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「あなたが王で間違いないのかしら」
「その通りだ、余の名はガラスティナ・グラスティ。流の王国ウィンディア・ウィンドの王であった、というのが正しい表現ではあるな。民のいない国、今の余は亡霊みたいなものよ、ただの一個に過ぎん」
「私たちもこの城に着くまでの道中、誰もいないことは見てきたわ」
「余が全てを滅ぼしたからだ」
ガラスティナが即答する。
「王が国を滅ぼす? どんな理由があるというの?」
「決断せねばならぬ時、選択肢を間違えた。変化することを恐れ、現状を維持しようとした末路が今というわけだ。今もなお、余はここに縛り付けられている。誰もいぬこの王国にただ一人な」
ガラスティナが剣を構える。
「話の続きを聞きたくば、強者よ――どうか余を殺してくれ」
「ソラ、伏せるわよっ!」
ゴザルさんが僕の頭を押し込める。
その瞬間、背後の床一面に斬撃痕が刻み込まれた。
……全く見えなかった。
ゴザルが助けてくれなかったら直撃していただろう。
今の一撃にて、僕は自分が戦力外であることを理解する。
「銀の方、余の攻撃を察知して避けるか」
「銀? もう少し考えたネーミングにしなさいよ」
「くっくっく。銀髪と金髪、区別のしやすい呼び名だろう。金の方、お前はどうやらこの場に相応しくないのではないか。どう考えても足手まといであろう」
「それはどうかしらね」
「ほう?」
「ソラを甘く見ていると痛い目見るわよ」
ゴザルが一直線に突っ走る。
躊躇なく急所に振るわれたゴザルの一撃、首を刎ね飛ばすかと思われたが――寸前、ガラスティナが剣でガードする。
「この威力と速度、覚悟の込もった一刀。銀の方、お前ならば本当に余を解き放ってくれるやもしれぬな」
「あなたと同じようなことを言っていたやつに出会ったわね」
「そいつはどこにいた?」
「ここより上層、上の階にいたネクロマンサーね」
「面白いことを聞いた。そうか、やつは諦めておらんかったか」
「呪いかなんだか知らないけど、私が解き放ってやるわよ。黙って私に成仏させられなさい」
「願わくば、お前がその強者であってくれ」
激闘。
二人が玉座の前にて、人外の戦いを繰り広げる。ゴザルからガラスティナに距離を縮めたのは、僕が巻き込まれないようにと考えてかもしれない。
今はただ見上げ続ける。
「探せ、僕にできることを」
役に立たないからと絶望するな。
一秒後、一分後、未来の僕ならば――戦力になる可能性はある。
「その通りだ、余の名はガラスティナ・グラスティ。流の王国ウィンディア・ウィンドの王であった、というのが正しい表現ではあるな。民のいない国、今の余は亡霊みたいなものよ、ただの一個に過ぎん」
「私たちもこの城に着くまでの道中、誰もいないことは見てきたわ」
「余が全てを滅ぼしたからだ」
ガラスティナが即答する。
「王が国を滅ぼす? どんな理由があるというの?」
「決断せねばならぬ時、選択肢を間違えた。変化することを恐れ、現状を維持しようとした末路が今というわけだ。今もなお、余はここに縛り付けられている。誰もいぬこの王国にただ一人な」
ガラスティナが剣を構える。
「話の続きを聞きたくば、強者よ――どうか余を殺してくれ」
「ソラ、伏せるわよっ!」
ゴザルさんが僕の頭を押し込める。
その瞬間、背後の床一面に斬撃痕が刻み込まれた。
……全く見えなかった。
ゴザルが助けてくれなかったら直撃していただろう。
今の一撃にて、僕は自分が戦力外であることを理解する。
「銀の方、余の攻撃を察知して避けるか」
「銀? もう少し考えたネーミングにしなさいよ」
「くっくっく。銀髪と金髪、区別のしやすい呼び名だろう。金の方、お前はどうやらこの場に相応しくないのではないか。どう考えても足手まといであろう」
「それはどうかしらね」
「ほう?」
「ソラを甘く見ていると痛い目見るわよ」
ゴザルが一直線に突っ走る。
躊躇なく急所に振るわれたゴザルの一撃、首を刎ね飛ばすかと思われたが――寸前、ガラスティナが剣でガードする。
「この威力と速度、覚悟の込もった一刀。銀の方、お前ならば本当に余を解き放ってくれるやもしれぬな」
「あなたと同じようなことを言っていたやつに出会ったわね」
「そいつはどこにいた?」
「ここより上層、上の階にいたネクロマンサーね」
「面白いことを聞いた。そうか、やつは諦めておらんかったか」
「呪いかなんだか知らないけど、私が解き放ってやるわよ。黙って私に成仏させられなさい」
「願わくば、お前がその強者であってくれ」
激闘。
二人が玉座の前にて、人外の戦いを繰り広げる。ゴザルからガラスティナに距離を縮めたのは、僕が巻き込まれないようにと考えてかもしれない。
今はただ見上げ続ける。
「探せ、僕にできることを」
役に立たないからと絶望するな。
一秒後、一分後、未来の僕ならば――戦力になる可能性はある。
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