98 / 384
最強の武者Gozaru編
98話 謎の大都市
しおりを挟む
50階に到達。
眼下に広がる一変した光景に――僕とゴザルは思わず立ち止まる。
「……なによ、これ」
「王宮の地下にこんなものが存在したのか」
一つの大都市が目の前に存在していた。
中心には大きな城があり、文明が栄えていたことが容易に想像できる。同時に誰もいないゴーストタウンだということも理解できた。
人の気配がまるでしないのだ。
だが、建物は風化されていることもなく保たれた状態だった。なにか特殊なもので保護されているのかもしれないが、その平常さが異常さに拍車をかけている。
ダンジョンという規模を遥かに超越していた。
「ちょ、ちょっと怖いわね」
「ゴザルはこういうの苦手?」
「お化けがいそうな場所とかは駄目なの」
「全くそんな風には見えない。力尽くで除霊できそうなタイプなのに」
「私のイメージってどうなってるのよっ!」
自身を落ち着かせるようゴザルは深呼吸を繰り返し、
「よし、気を引き締めて行きましょう。このどこかにナコちゃんとキャロルさんがいる可能性は高いわ」
「となると、一番目立つあそこしかないか」
「そうなるわね」
「まだ魔力感知が未熟な僕でもわかる。あの城――とてつもないやつがいる」
「ええ。化け物がいるわ」
僕たちは一直線に駆け走る。
驚くことに、街中からモンスターの気配は微塵も感じない。その閑散とした空気、静けさが嵐の前兆のようにも思える。
「私たちも50階に来ると考えていたら、あの城の周辺で待機していると思うわ。このイレギュラーな事態、二人だけで突撃するには危険すぎるもの」
「ナコだったら突撃してそうで怖い」
「大丈夫、今回はキャロルさんというブレーキが付いているわ。そういう意味では30階で出会えたことは運がよかっ」
「むごっ」
ゴザルが言いかけて急停止、ついでに僕の顔を掴んで制止する。
「待って、なにかいるわ」
ゴザルの視線の先、不規則に蠢く巨大な影が見えた。
城に向かう道中、曲がり角から――異様なものがでてくる。僕とゴザルは即座に横の建物の中へと退避した。
真正面から遭遇しないに越したことはない。
「……声を潜めて」
「……むぐっ」
ゴザルが僕を胸に埋める。
ここまでしなくとも、自分で声くらい抑えられるのに――柔らかい部分が顔に当たって違う意味でドキドキしてくる。
その体勢のまま一分ほど、僕はゴザルの心音を聞き続け、
「行ったわ。なんだったのあれ」
「……」
「ソラ?」
「……い、息が」
「きゃぁああっ! ごめんなさい!!」
少し名残惜しいが解放される。
「ふぅ、ありがとう」
「どういう意味のお礼なの?」
「こっちの話、それで今の影の正体は?」
「銀色の丸い個体、完全に機械だったわね」
「機械? オンリー・テイルの世界設定には、そんな近代的な技術や科学は存在しないはずだよね」
「だけど、現実に私たちの目の前にいる。ロボットという方が当てはまるかしら。私の魔力感知に引っかからないわけだわ。一体どの形態に分類されるの? あんな種類のモンスター記憶にないわよ」
「シークレットかもしれない」
「シークレット? 面白い言い方するのね」
「前にホワイト・ホワイトでも似たようなことがあったんだ。固定のフロアボスとはまた違う、ゲーム時でも未確認のモンスターがいてね。その時に出会ったプレイヤーがそう称していたんだ」
未確認だらけの事態。
機械文明なんてオンリー・テイルの世界観がひっくり返る。この大都市にはどれだけの秘密が隠されているのだろうか。
ゴザルは周囲を伺いながら、
「しばらくの間、ここに身を潜めましょう。あの銀色――シークレットが1体だけとは限らないわ。今すぐ不用意に動くことは避けた方がいいと思う」
「勢いで入ったけど、ここってどこなんだろう」
「中を探索してみましょうか」
僕とゴザルは建物の奥に足を運ぶ。
やはり、外観から見たのと同じく――内部も風化された様子はない。今ここに人が住んでいたと言われても信じるだろう。魔法的ななにかで建物自体がコーティングでもされているのだろうか。
建物の中心に飾られた大きな剣と盾が目に入る。
「騎士団の施設みたいなものかしら」
「可能性は高そうだね。もう少しこの大都市について探ってみようか」
僕は本棚の書物を手に取る。
緊急として偶然入った建物だったが、なにか情報の得られる貴重な場所だったかもしれない。
眼下に広がる一変した光景に――僕とゴザルは思わず立ち止まる。
「……なによ、これ」
「王宮の地下にこんなものが存在したのか」
一つの大都市が目の前に存在していた。
中心には大きな城があり、文明が栄えていたことが容易に想像できる。同時に誰もいないゴーストタウンだということも理解できた。
人の気配がまるでしないのだ。
だが、建物は風化されていることもなく保たれた状態だった。なにか特殊なもので保護されているのかもしれないが、その平常さが異常さに拍車をかけている。
ダンジョンという規模を遥かに超越していた。
「ちょ、ちょっと怖いわね」
「ゴザルはこういうの苦手?」
「お化けがいそうな場所とかは駄目なの」
「全くそんな風には見えない。力尽くで除霊できそうなタイプなのに」
「私のイメージってどうなってるのよっ!」
自身を落ち着かせるようゴザルは深呼吸を繰り返し、
「よし、気を引き締めて行きましょう。このどこかにナコちゃんとキャロルさんがいる可能性は高いわ」
「となると、一番目立つあそこしかないか」
「そうなるわね」
「まだ魔力感知が未熟な僕でもわかる。あの城――とてつもないやつがいる」
「ええ。化け物がいるわ」
僕たちは一直線に駆け走る。
驚くことに、街中からモンスターの気配は微塵も感じない。その閑散とした空気、静けさが嵐の前兆のようにも思える。
「私たちも50階に来ると考えていたら、あの城の周辺で待機していると思うわ。このイレギュラーな事態、二人だけで突撃するには危険すぎるもの」
「ナコだったら突撃してそうで怖い」
「大丈夫、今回はキャロルさんというブレーキが付いているわ。そういう意味では30階で出会えたことは運がよかっ」
「むごっ」
ゴザルが言いかけて急停止、ついでに僕の顔を掴んで制止する。
「待って、なにかいるわ」
ゴザルの視線の先、不規則に蠢く巨大な影が見えた。
城に向かう道中、曲がり角から――異様なものがでてくる。僕とゴザルは即座に横の建物の中へと退避した。
真正面から遭遇しないに越したことはない。
「……声を潜めて」
「……むぐっ」
ゴザルが僕を胸に埋める。
ここまでしなくとも、自分で声くらい抑えられるのに――柔らかい部分が顔に当たって違う意味でドキドキしてくる。
その体勢のまま一分ほど、僕はゴザルの心音を聞き続け、
「行ったわ。なんだったのあれ」
「……」
「ソラ?」
「……い、息が」
「きゃぁああっ! ごめんなさい!!」
少し名残惜しいが解放される。
「ふぅ、ありがとう」
「どういう意味のお礼なの?」
「こっちの話、それで今の影の正体は?」
「銀色の丸い個体、完全に機械だったわね」
「機械? オンリー・テイルの世界設定には、そんな近代的な技術や科学は存在しないはずだよね」
「だけど、現実に私たちの目の前にいる。ロボットという方が当てはまるかしら。私の魔力感知に引っかからないわけだわ。一体どの形態に分類されるの? あんな種類のモンスター記憶にないわよ」
「シークレットかもしれない」
「シークレット? 面白い言い方するのね」
「前にホワイト・ホワイトでも似たようなことがあったんだ。固定のフロアボスとはまた違う、ゲーム時でも未確認のモンスターがいてね。その時に出会ったプレイヤーがそう称していたんだ」
未確認だらけの事態。
機械文明なんてオンリー・テイルの世界観がひっくり返る。この大都市にはどれだけの秘密が隠されているのだろうか。
ゴザルは周囲を伺いながら、
「しばらくの間、ここに身を潜めましょう。あの銀色――シークレットが1体だけとは限らないわ。今すぐ不用意に動くことは避けた方がいいと思う」
「勢いで入ったけど、ここってどこなんだろう」
「中を探索してみましょうか」
僕とゴザルは建物の奥に足を運ぶ。
やはり、外観から見たのと同じく――内部も風化された様子はない。今ここに人が住んでいたと言われても信じるだろう。魔法的ななにかで建物自体がコーティングでもされているのだろうか。
建物の中心に飾られた大きな剣と盾が目に入る。
「騎士団の施設みたいなものかしら」
「可能性は高そうだね。もう少しこの大都市について探ってみようか」
僕は本棚の書物を手に取る。
緊急として偶然入った建物だったが、なにか情報の得られる貴重な場所だったかもしれない。
21
お気に入りに追加
414
あなたにおすすめの小説
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク
普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。
だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。
洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。
------
この子のおかげで作家デビューできました
ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが
断罪済み悪役令嬢に憑依したけど、ネトゲの自キャラ能力が使えたので逃げ出しました
八華
ファンタジー
断罪済みの牢の中で悪役令嬢と意識が融合してしまった主人公。
乙女ゲームストーリー上、待っているのは破滅のみ。
でも、なぜか地球でやっていたオンラインゲームキャラの能力が使えるみたいで……。
ゲームキャラチートを利用して、あっさり脱獄成功。
王都の街で色んな人と出会いながら、現実世界への帰還を目指します!

ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜
むらくも航
ファンタジー
ド田舎の村で育った『エアル』は、この日旅立つ。
幼少の頃、おじいちゃんから聞いた話に憧れ、大都会で立派な『探索者』になりたいと思ったからだ。
そんなエアルがこれまでにしてきたことは、たった一つ。
故郷にあるダンジョンで体を動かしてきたことだ。
自然と共に生き、魔物たちとも触れ合ってきた。
だが、エアルは知らない。
ただの“遊び場”と化していたダンジョンは、攻略不可能のSSSランクであることを。
遊び相手たちは、全て最低でもAランクオーバーの凶暴な魔物たちであることを。
これは、故郷のダンジョンで力をつけすぎた少年エアルが、大都会で無自覚に無双し、羽ばたいていく物語──。

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます
海夏世もみじ
ファンタジー
月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。
だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。
彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる