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クエスト攻略ランクアップ編
61話 可愛い
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「はぁああああっ!」
絶え間なく響く剣戟音。
ナコの猛攻によりスカル・キラーは防戦一方、強敵相手にもナコの力は驚くくらいに通用している。
スカル・キラーは初級ダンジョンに湧くモンスターの中では戦闘力が高く、ゲーム時の適正レベルは50代とされていた。
やはり、モンスター自体はレベルに応じた強さを持っているのだろう。
ハイスパイダーより格段に動きがいいのはもちろん、高レベルなモンスターほど厄介なスキルを保有している。
僕は知識を総動員、スカル・キラーを分析する。
サークルドレインの効果が切れるまで、できる限りのことをするんだ。スカル・キラーはレベル55、属性は闇、保有スキルはサークルドレイン、シャドウムーブ、あと1つなにか持っていたはずだ。
基本的にモンスターの持つスキルは全部で3~4つのことが多い。
「……まずい。"デスクロック"がある」
回避不可能の即死攻撃。
一回限りの大技スキル、対象に一分間の猶予を与え、その時間内にスカル・キラーを撃破することができなければ、
――死ぬ。
スカル・キラーがサークルドレインを乱発する。
地面であろうと空中であろうと自由自在という厄介なスキル――その範囲内、回避することがかなわずナコに被弾する。
一瞬、ナコの身体が揺らいだが、
「これくらいで、私は倒れないっ!」
即座に立て直し反撃する。
ナコの力の源はどうなっている? 装備による耐性を持つ僕ですら、全身が脱力するレベルの攻撃を物ともしていない。
ここまでの旅路を振り返る限り、ナコは人一倍体力があると思っていた。そこに魔法少女の身体能力が上乗せされていると思っていた。
そんな簡単な言葉では説明できないなにか、本人ですら気付いていないなにか、異次元の強さとなる根本をナコは秘めている。
「闇斬っ!」
ナコの会心の一撃により、スカル・キラーの左腕が粉砕する。
デスクロックの発動タイミングはスカル・キラーが窮地に追い詰められた時、もう間もなくその瞬間が訪れようとしている。
デスクロック、即死攻撃を防ぐ方法は一つだけあった。
――僕は倒れるレイナさんを視界に入れる。
悪魔的発想が脳内を渦巻いていた。
デスクロックの効果的に受けてからの上書きも可能か。だが、このラインを踏み超えてしまったら僕はもう完全に後戻りできなくなってしまう。
僕の中で間違いなく――なにかが壊れる。
決断の時は刻一刻と迫っていた。
黒い波動が四方八方飛び散り、激しい死闘も決着が近付いている。スカル・キラーが魔法陣を展開、その中心から針が飛び出しナコを穿とうとした。
サークルドレインの効果は完全に消え、身体は万全の状態に戻っている。
針の軌道上に重なるよう、僕はデスクロックを防ぐため――ナコのもとに跳躍した。
「クーラ、ごめんなさい」
寸前、ナコがハッピーの柄で僕を突き飛ばす。
ナコは全て理解していたのだろう。
僕が土壇場でこうすることを――ナコの身代わりになろうとしていたことを。
針がナコを貫き、頭上に時計が出現する。
''60''、''59''、''58''、無情にもカウントは進んでいく。
この秒針が一周した時、ナコは絶命する。
「クーラ、情報をいただけますか?」
「こいつはネームド、スカル・キラーの持つスキル――デスクロックだ。その針がもとの位置に戻ったら即死する」
「対処法はありますか?」
「時間内に、やつを倒すしかない」
「わかりました」
「……どうして、僕を突き飛ばしたんだ?」
「クーラが身代わりになると思ったからです」
「このままだと、君が死ぬ」
僕はユースさんとモッズさんを見やる。
確実性のあるバフを獲得すれば、超絶強化を施せば――時間内にスカル・キラーを倒すことだって現実的になる。
僕の意図に気付いたのか、ナコが手を掴んで制止する。
「クーラ、ダメです」
「でも、生き残るにはこれしかない」
「私との約束を守ろうとする気持ちはとても嬉しいです。ですが、その一線だけは超えちゃいけません。誰彼構わず食べてしまってはファーポッシ村の襲撃者と変わらなくなってしまう」
「……だったら、僕はどうしたらいいんだよっ?! 黙ってナコが死ぬのを眺めていろっていうのかっ?!」
こんな揉めごとをしている間にも秒数は進んでいく。
カラカラと響くスカル・キラーの歯音が、なにもできなかった僕を嘲笑っているかのようだった。
僕はナコを抱き寄せ、溢れ出す気持ちを叫ぶ。
「いやだ、いやだ、いやだ! 僕はナコが死ぬことは耐えられない! 絶対に無理だ、君のいない世界なんて生きていけないっ!! この体温が失われる未来なんて想像するだけで真っ暗になるっ! ナコがいてくれないと駄目なんだっ! 家族なんだ!!」
「クーラ、可愛い」
「……こんな時に、なに言って、るんだよ」
「駄々をこねて泣いているクーラを可愛いと思いました。いつも冷静なクーラが感情をさらけ出している姿にドキッとしました」
ナコが優しく微笑みながら、
「大丈夫です。私は必ず戻って来ます」
残り''42''秒。
ナコがハッピーを前方に構え、力強く地面を蹴り飛ばした。
絶え間なく響く剣戟音。
ナコの猛攻によりスカル・キラーは防戦一方、強敵相手にもナコの力は驚くくらいに通用している。
スカル・キラーは初級ダンジョンに湧くモンスターの中では戦闘力が高く、ゲーム時の適正レベルは50代とされていた。
やはり、モンスター自体はレベルに応じた強さを持っているのだろう。
ハイスパイダーより格段に動きがいいのはもちろん、高レベルなモンスターほど厄介なスキルを保有している。
僕は知識を総動員、スカル・キラーを分析する。
サークルドレインの効果が切れるまで、できる限りのことをするんだ。スカル・キラーはレベル55、属性は闇、保有スキルはサークルドレイン、シャドウムーブ、あと1つなにか持っていたはずだ。
基本的にモンスターの持つスキルは全部で3~4つのことが多い。
「……まずい。"デスクロック"がある」
回避不可能の即死攻撃。
一回限りの大技スキル、対象に一分間の猶予を与え、その時間内にスカル・キラーを撃破することができなければ、
――死ぬ。
スカル・キラーがサークルドレインを乱発する。
地面であろうと空中であろうと自由自在という厄介なスキル――その範囲内、回避することがかなわずナコに被弾する。
一瞬、ナコの身体が揺らいだが、
「これくらいで、私は倒れないっ!」
即座に立て直し反撃する。
ナコの力の源はどうなっている? 装備による耐性を持つ僕ですら、全身が脱力するレベルの攻撃を物ともしていない。
ここまでの旅路を振り返る限り、ナコは人一倍体力があると思っていた。そこに魔法少女の身体能力が上乗せされていると思っていた。
そんな簡単な言葉では説明できないなにか、本人ですら気付いていないなにか、異次元の強さとなる根本をナコは秘めている。
「闇斬っ!」
ナコの会心の一撃により、スカル・キラーの左腕が粉砕する。
デスクロックの発動タイミングはスカル・キラーが窮地に追い詰められた時、もう間もなくその瞬間が訪れようとしている。
デスクロック、即死攻撃を防ぐ方法は一つだけあった。
――僕は倒れるレイナさんを視界に入れる。
悪魔的発想が脳内を渦巻いていた。
デスクロックの効果的に受けてからの上書きも可能か。だが、このラインを踏み超えてしまったら僕はもう完全に後戻りできなくなってしまう。
僕の中で間違いなく――なにかが壊れる。
決断の時は刻一刻と迫っていた。
黒い波動が四方八方飛び散り、激しい死闘も決着が近付いている。スカル・キラーが魔法陣を展開、その中心から針が飛び出しナコを穿とうとした。
サークルドレインの効果は完全に消え、身体は万全の状態に戻っている。
針の軌道上に重なるよう、僕はデスクロックを防ぐため――ナコのもとに跳躍した。
「クーラ、ごめんなさい」
寸前、ナコがハッピーの柄で僕を突き飛ばす。
ナコは全て理解していたのだろう。
僕が土壇場でこうすることを――ナコの身代わりになろうとしていたことを。
針がナコを貫き、頭上に時計が出現する。
''60''、''59''、''58''、無情にもカウントは進んでいく。
この秒針が一周した時、ナコは絶命する。
「クーラ、情報をいただけますか?」
「こいつはネームド、スカル・キラーの持つスキル――デスクロックだ。その針がもとの位置に戻ったら即死する」
「対処法はありますか?」
「時間内に、やつを倒すしかない」
「わかりました」
「……どうして、僕を突き飛ばしたんだ?」
「クーラが身代わりになると思ったからです」
「このままだと、君が死ぬ」
僕はユースさんとモッズさんを見やる。
確実性のあるバフを獲得すれば、超絶強化を施せば――時間内にスカル・キラーを倒すことだって現実的になる。
僕の意図に気付いたのか、ナコが手を掴んで制止する。
「クーラ、ダメです」
「でも、生き残るにはこれしかない」
「私との約束を守ろうとする気持ちはとても嬉しいです。ですが、その一線だけは超えちゃいけません。誰彼構わず食べてしまってはファーポッシ村の襲撃者と変わらなくなってしまう」
「……だったら、僕はどうしたらいいんだよっ?! 黙ってナコが死ぬのを眺めていろっていうのかっ?!」
こんな揉めごとをしている間にも秒数は進んでいく。
カラカラと響くスカル・キラーの歯音が、なにもできなかった僕を嘲笑っているかのようだった。
僕はナコを抱き寄せ、溢れ出す気持ちを叫ぶ。
「いやだ、いやだ、いやだ! 僕はナコが死ぬことは耐えられない! 絶対に無理だ、君のいない世界なんて生きていけないっ!! この体温が失われる未来なんて想像するだけで真っ暗になるっ! ナコがいてくれないと駄目なんだっ! 家族なんだ!!」
「クーラ、可愛い」
「……こんな時に、なに言って、るんだよ」
「駄々をこねて泣いているクーラを可愛いと思いました。いつも冷静なクーラが感情をさらけ出している姿にドキッとしました」
ナコが優しく微笑みながら、
「大丈夫です。私は必ず戻って来ます」
残り''42''秒。
ナコがハッピーを前方に構え、力強く地面を蹴り飛ばした。
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