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クエスト攻略ランクアップ編
59話 剣聖
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「猫ちゃん、すごすぎっ!」
レイナさんがナコに抱き付く。
話題はナコの奮闘ぶりで持ち切りだった。そんな中、僕とサマロはハイスパイダーの素材収集に走る。
「クーラ、お前――いや、クーラさん、あんたは一体何者なんだ?」
「えぇっ?」
急なサマロの豹変ぶりに驚きの声がでる。
「俺は長い冒険者人生、ネームドは数回しか戦ったことがなくてな。ハイスパイダーは巨大な蜘蛛くらいの情報しか持っていなかった。正直なところ、あのままだったら確実に死んでいただろう。運良く撃破できたところで、最後の毒液を撒くトラップでギルドは全滅していた。クーラさんはあいつと戦ったことがあるのか? やつの知識なんてどこで蓄えてきたんだ?」
ゲーム時の知識です、なんて言えるわけもない。
「両親が冒険者だったんだ。幼少期から色々と冒険譚を聞かされていて、勝手に覚えていたというかなんというか」
とりあえず、アドリブで誤魔化してみる。
「へぇ、有名な人だったのかもしれないな」
「剣聖って言われてたかな」
「ほ、本気か? あの剣聖の血筋なのかっ?!」
えっ、剣聖って実在するの?
「伝説も伝説だぜ。最近も王都で大活躍してるって話を聞いたばかりだ。そうか、そりゃすごいはずだ。クーラさんの連れてる黒猫が強いのも納得だ、実は剣聖の隠し弟子とかじゃないのか? Fランクなのもなにか事情があるんだろ、この話は誰にも言わないから安心してくれ」
今さら撤回することもできず、僕は愛想笑いで返す。
まあ、なんか勝手に納得してくれてるしいいか。それにしても、サマロはネームドと数回しか戦ったことがないと言っていたよな。
現実となった今、この世界全体のネームド出現率はどうなっているんだ?
ゲーム時はハイスパイダーなんて三日に一回はポップしていた上、湧いていたら片手間に倒しておこうくらいのネームドだった。
サマロたちは毒液の情報すら持っていなかった。
ゲーム時と勝手が違うことは重々理解しているが、僕が想像する以上にプレイヤーと現地人は知識に差があるのかもしれない。モンスターに対する情報共有ラインが恐ろしいくらいに細いのだろうか。
ハイスパイダーの素材を剥ぎ取りながらサマロと色々なことを話す。
「ハイスパイダーが出現した時、第三層にいたギルドの中では俺たちが一番なんとかできる可能性が高かった。高ランクだからってだけの理由じゃないが、誰かを置いて一目散に逃げることだけはいやなんだ。鉄の絆と鉄の意思、俺たちは"Eisen"だからな」
「ぼ、僕の仲間にクソ猫とか言ってた人とは思えない」
「……クーラさん、その節は本当に悪かったと思っている。素直に言うが、低ランクのクエストに特化して街の人気者になってることに嫉妬していた部分があった。俺たちもやりゃいいだろって話だが、生活をしていくために中々そうはいかなくてな」
「いや、僕たちも報酬金度外視でやってたからさ。周囲のことを考えなさすぎたってのもある。今回のことは和解ということでお互い水に流そう」
もう少し、報酬金のバランスを考えてもよかった。
そりゃ、結成したばかりの新ギルドが普通じゃないことをやってるんだ。なにかしら注目を集めるのは当たり前の話である。毎度毎度お小遣い程度の報酬金、ギルドを運営していくための資金源はどうなっているのかという噂も立つだろう。
――加えて、マイホームもある。
ナコのためと僕が一直線になりすぎた感は否めない。周囲の目を気にしすぎるのもアレだが、気にしすぎないというのもまたアレだ。
僕たちも街の便利屋さんってだけじゃなく、ギルド全体を向上できるような運営方針を考えてみよう。
レイナさんがナコに抱き付く。
話題はナコの奮闘ぶりで持ち切りだった。そんな中、僕とサマロはハイスパイダーの素材収集に走る。
「クーラ、お前――いや、クーラさん、あんたは一体何者なんだ?」
「えぇっ?」
急なサマロの豹変ぶりに驚きの声がでる。
「俺は長い冒険者人生、ネームドは数回しか戦ったことがなくてな。ハイスパイダーは巨大な蜘蛛くらいの情報しか持っていなかった。正直なところ、あのままだったら確実に死んでいただろう。運良く撃破できたところで、最後の毒液を撒くトラップでギルドは全滅していた。クーラさんはあいつと戦ったことがあるのか? やつの知識なんてどこで蓄えてきたんだ?」
ゲーム時の知識です、なんて言えるわけもない。
「両親が冒険者だったんだ。幼少期から色々と冒険譚を聞かされていて、勝手に覚えていたというかなんというか」
とりあえず、アドリブで誤魔化してみる。
「へぇ、有名な人だったのかもしれないな」
「剣聖って言われてたかな」
「ほ、本気か? あの剣聖の血筋なのかっ?!」
えっ、剣聖って実在するの?
「伝説も伝説だぜ。最近も王都で大活躍してるって話を聞いたばかりだ。そうか、そりゃすごいはずだ。クーラさんの連れてる黒猫が強いのも納得だ、実は剣聖の隠し弟子とかじゃないのか? Fランクなのもなにか事情があるんだろ、この話は誰にも言わないから安心してくれ」
今さら撤回することもできず、僕は愛想笑いで返す。
まあ、なんか勝手に納得してくれてるしいいか。それにしても、サマロはネームドと数回しか戦ったことがないと言っていたよな。
現実となった今、この世界全体のネームド出現率はどうなっているんだ?
ゲーム時はハイスパイダーなんて三日に一回はポップしていた上、湧いていたら片手間に倒しておこうくらいのネームドだった。
サマロたちは毒液の情報すら持っていなかった。
ゲーム時と勝手が違うことは重々理解しているが、僕が想像する以上にプレイヤーと現地人は知識に差があるのかもしれない。モンスターに対する情報共有ラインが恐ろしいくらいに細いのだろうか。
ハイスパイダーの素材を剥ぎ取りながらサマロと色々なことを話す。
「ハイスパイダーが出現した時、第三層にいたギルドの中では俺たちが一番なんとかできる可能性が高かった。高ランクだからってだけの理由じゃないが、誰かを置いて一目散に逃げることだけはいやなんだ。鉄の絆と鉄の意思、俺たちは"Eisen"だからな」
「ぼ、僕の仲間にクソ猫とか言ってた人とは思えない」
「……クーラさん、その節は本当に悪かったと思っている。素直に言うが、低ランクのクエストに特化して街の人気者になってることに嫉妬していた部分があった。俺たちもやりゃいいだろって話だが、生活をしていくために中々そうはいかなくてな」
「いや、僕たちも報酬金度外視でやってたからさ。周囲のことを考えなさすぎたってのもある。今回のことは和解ということでお互い水に流そう」
もう少し、報酬金のバランスを考えてもよかった。
そりゃ、結成したばかりの新ギルドが普通じゃないことをやってるんだ。なにかしら注目を集めるのは当たり前の話である。毎度毎度お小遣い程度の報酬金、ギルドを運営していくための資金源はどうなっているのかという噂も立つだろう。
――加えて、マイホームもある。
ナコのためと僕が一直線になりすぎた感は否めない。周囲の目を気にしすぎるのもアレだが、気にしすぎないというのもまたアレだ。
僕たちも街の便利屋さんってだけじゃなく、ギルド全体を向上できるような運営方針を考えてみよう。
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