上 下
36 / 358
クエスト攻略ランクアップ編

36話 エドルの価値

しおりを挟む
 僕たちはウィンウィンにある冒険所ぼうけんじょに足を運ぶ。
 冒険所とは様々なクエストを受註したり、クエストをこなすことで日々の金銭を稼ぐことのできる――冒険者にとっての生命線、腕に自身のあるものが活動を主とする場、集会所みたいなものだ。

 冒険所は王都に渡るための『必須事項』が存在する場所であり、どちらにせよ訪れる予定ではあったのだが――今一番の最たる目的は別のものとなっていた。
 受付嬢が書類を手に、記入漏れがないかを確認する。

「それでは、新しいギルド"Kinglyキングリー"の申請を受理しました。個人ではなくギルドとして冒険所に登録された場合、なにか不祥事があった際はギルド全体の連帯責任となります。質問等なければこちらに了承のサインと、冒険所への登録料100万エドルいただきます」

 僕はサインを記し、登録料を受付嬢にわたす。

「クーラ、100万エドルって価値としてはどれくらいなんですか?」
「こっちの物価を見た限り、日本の通貨単位と大差ないかな」
「私、月のお小遣い千円だったんですが」

 ナコが遠い眼差しで虚空を見つめながら、

「千円ってすごいんですよ? 流行りの少女漫画も買えますし、好きなお菓子だっていっぱい食べちゃえます。私のお小遣い約100年分ですよ? クーラ、登録するの考え直しましょう」
「急にリアルな顔してどうしたの?! 大丈夫、これくらいの出費なら問題ないよ。僕も覚悟を決めてギルドを結成したんだから必要経費だって」
「そうですか。ちなみに、私っていくらで買ったんですか? いえ、私を助けるためにいくら使ったんですか?」
「えぇっ、それは、別に聞かなくても」
「隠さないでください。全て知りたくなりました」
「よ、4000万だったかな」

 ナコが金額を聞いた瞬間、その場にぶっ倒れた。

「4000万? 私が、4000万??」
「な、ナコさんっ?! カムバックっ!」
「あのー、盛り上がっているところ横から大変失礼します。全ての手続きが完了しましたので、最後に冒険所カードを発行してお渡ししますね」

 ギルド名の由来は、この世界だからこそ堂々と生きていく。
 各々が自由に逞しくという意味合いを込めた名前にした。

 上下などなく皆平等に、家族だと言えるように。

 現状は僕とナコ、個性の強いユニーク職のみの編成だからこそ――ある意味マッチしている気はする。
 受付嬢が僕たちに銅製のカードを手渡し、

「"Kingly"様、冒険所ランクは『F』からスタートとなっております。ランクに応じたクエストを規定回数、または緊急高難易度のクエストをクリアすることによって、ランクは上がっていきます。今後の躍進に期待しておりますね」

 こうして――今はまだ二人だが、僕とナコのギルドが発足したのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

「お前のような奴はパーティーに必要ない」と追放された錬金術師は自由に生きる~ポーション作ってたらいつの間にか最強になってました~

平山和人
ファンタジー
錬金術師のカイトは役立たずを理由にパーティーから追放されてしまう。自由を手に入れたカイトは世界中を気ままに旅することにした。 しかし、カイトは気づいていなかった。彼の作るポーションはどんな病気をも治す万能薬であることを。 カイトは旅をしていくうちに、薬神として崇められることになるのだが、彼は今日も無自覚に人々を救うのであった。 一方、カイトを追放したパーティーはカイトを失ったことで没落の道を歩むことになるのであった。

俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜

平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。 『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。 この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。 その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。 一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

世界中にダンジョンが出来た。何故か俺の部屋にも出来た。

阿吽
ファンタジー
 クリスマスの夜……それは突然出現した。世界中あらゆる観光地に『扉』が現れる。それは荘厳で魅惑的で威圧的で……様々な恩恵を齎したそれは、かのファンタジー要素に欠かせない【ダンジョン】であった! ※カクヨムにて先行投稿中

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

処理中です...