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氷迷宮の迷い子編
33話 ナコの決意
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明朝。
魔核を出入り口付近に設置し、安全地帯に退避する。
予定通りに事は運び、リーナのパイロキネシスにより魔核は大爆発――通路は無事確保された。
そう、ウィンディア・ウィンドまでの道が開通されたのだ。
氷と雪、白色に染まった景色とは一変、緑色の大地が目の前に広がる。
新たなフィールドが待ち構えると同時、お別れの時も近付いていた。
「リーナ、ありがとう。色々な話をしてオフ会みたいで楽しかったよ」
「リーナもだよー。クーちゃん、黒猫ちゃん、二人に出会えて本当に嬉しかった。いつかまた絶対に」
言いかけて、リーナの言葉が詰まる。
「絶対に会おう。次は僕たちの仲間として待ってるよ」
「リーナさん、その時は親友さんも連れて来てくださいね」
続きであろう気持ちを――僕とナコは紡いだ。
僕たちとリーナは目的が違う。
だけど、それは今だけの話だ。お互いに為すべきことを為したのならば、また必ず交わる瞬間は訪れる。
リーナは満面の笑顔で大きく両手を振りながら、
「うん、うんっ! 絶対、絶対にまた会おうねっ! 約束だからねっ!!」
氷迷宮ホワイト・ホワイトを通過し、僕たちはリーナと別れた。
ウィンディア・ウィンドまではもう目と鼻の先――とはいかず、まだ草原地帯を抜けてある程度の行程が必須となる。
一歩ずつ着実に進んではいた。
王都までの道のりは――少しずつではあるが縮まっているのだ。
僕はマップを開き――進むべき経路を自身の知識と照らし合わせていく。
その知識だけで補えない部分があることは今の僕は重々理解している。
それでも、なにもない空っぽな状態よりは断然マシだ。基本的な土台を確保しつつ、常にイレギュラーを視野に入れて頭を回転させればいい。
「『グリーンラム草原』を通って行こう」
「クーラ、また新しい場所を通るんですよね?」
「このフィールドには可愛い羊がいっぱいいてね、ナコも楽しめると思うよ」
「一つ、お願いがあります」
「うん」
ナコの真剣な表情に、僕は説明を中断する。
なんとなく、ナコが言いそうであろう内容は――察していた。それに対する答えも僕の中ではもう決まっている。
リーナの話を全て聞き終わってから、その気持ちはさらに強くなった。
「昨日の要塞型ゴーレムです。二度とあんなことをしないと、私を助けるために無茶をしないと約束してください」
「約束はできない。僕はまた同じことが起きたら必ず君を助けに行く」
即答する。
僕の答えにナコは目を見開きながら、
「クーラっ!」
「でも、死なないと誓うよ」
「本当、ですか?」
「お互いの主張の譲れない部分だけを取り合おう。僕はナコが目の前で死んでしまうことを、ただ呆然と見ているだけは耐えられない。ナコも救って僕も生きる、これだったら許してくれるかな?」
「……わかり、ました」
ナコがなにかを決意したよう胸に手を当てながら、
「クーラが生きていたのは、ファーポッシ村で捕食したからですよね」
「そうだね。あの時の騒動が巡り巡って、僕の命を救ってくれたことになる」
「だったら、別のお願いを聞いてください」
この時、僕はどんな顔をしながらナコの言葉を聞いていたのだろう。
「クーラの気持ちは私の気持ちでもあります。私もあなたが死んでしまうことはいやなんです。いつかどうしようもなくなった時、この世界の理不尽に対抗できず私が死んでしまった時、あなたと一つになることで力になりたい」
それは、お互いの主張の――譲れない部分、誓いに似た約束。
「私を食べてください、クーラ」
魔核を出入り口付近に設置し、安全地帯に退避する。
予定通りに事は運び、リーナのパイロキネシスにより魔核は大爆発――通路は無事確保された。
そう、ウィンディア・ウィンドまでの道が開通されたのだ。
氷と雪、白色に染まった景色とは一変、緑色の大地が目の前に広がる。
新たなフィールドが待ち構えると同時、お別れの時も近付いていた。
「リーナ、ありがとう。色々な話をしてオフ会みたいで楽しかったよ」
「リーナもだよー。クーちゃん、黒猫ちゃん、二人に出会えて本当に嬉しかった。いつかまた絶対に」
言いかけて、リーナの言葉が詰まる。
「絶対に会おう。次は僕たちの仲間として待ってるよ」
「リーナさん、その時は親友さんも連れて来てくださいね」
続きであろう気持ちを――僕とナコは紡いだ。
僕たちとリーナは目的が違う。
だけど、それは今だけの話だ。お互いに為すべきことを為したのならば、また必ず交わる瞬間は訪れる。
リーナは満面の笑顔で大きく両手を振りながら、
「うん、うんっ! 絶対、絶対にまた会おうねっ! 約束だからねっ!!」
氷迷宮ホワイト・ホワイトを通過し、僕たちはリーナと別れた。
ウィンディア・ウィンドまではもう目と鼻の先――とはいかず、まだ草原地帯を抜けてある程度の行程が必須となる。
一歩ずつ着実に進んではいた。
王都までの道のりは――少しずつではあるが縮まっているのだ。
僕はマップを開き――進むべき経路を自身の知識と照らし合わせていく。
その知識だけで補えない部分があることは今の僕は重々理解している。
それでも、なにもない空っぽな状態よりは断然マシだ。基本的な土台を確保しつつ、常にイレギュラーを視野に入れて頭を回転させればいい。
「『グリーンラム草原』を通って行こう」
「クーラ、また新しい場所を通るんですよね?」
「このフィールドには可愛い羊がいっぱいいてね、ナコも楽しめると思うよ」
「一つ、お願いがあります」
「うん」
ナコの真剣な表情に、僕は説明を中断する。
なんとなく、ナコが言いそうであろう内容は――察していた。それに対する答えも僕の中ではもう決まっている。
リーナの話を全て聞き終わってから、その気持ちはさらに強くなった。
「昨日の要塞型ゴーレムです。二度とあんなことをしないと、私を助けるために無茶をしないと約束してください」
「約束はできない。僕はまた同じことが起きたら必ず君を助けに行く」
即答する。
僕の答えにナコは目を見開きながら、
「クーラっ!」
「でも、死なないと誓うよ」
「本当、ですか?」
「お互いの主張の譲れない部分だけを取り合おう。僕はナコが目の前で死んでしまうことを、ただ呆然と見ているだけは耐えられない。ナコも救って僕も生きる、これだったら許してくれるかな?」
「……わかり、ました」
ナコがなにかを決意したよう胸に手を当てながら、
「クーラが生きていたのは、ファーポッシ村で捕食したからですよね」
「そうだね。あの時の騒動が巡り巡って、僕の命を救ってくれたことになる」
「だったら、別のお願いを聞いてください」
この時、僕はどんな顔をしながらナコの言葉を聞いていたのだろう。
「クーラの気持ちは私の気持ちでもあります。私もあなたが死んでしまうことはいやなんです。いつかどうしようもなくなった時、この世界の理不尽に対抗できず私が死んでしまった時、あなたと一つになることで力になりたい」
それは、お互いの主張の――譲れない部分、誓いに似た約束。
「私を食べてください、クーラ」
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