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氷迷宮の迷い子編
32話 蘇生魔法
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「ぃ、生きてるー」
「リーナ、過去に死ぬことを考えていた人の一言とは思えないよ」
「クーちゃんの意地悪、そこツッコまないでよー。いやぁ、ここまで生を実感したのは初めてだって」
キャンプ地に戻り、僕たちは戦闘後の休息を取っていた。
魔核を用いてダンジョンを通過する話はさて置き、メインはもちろん要塞型ゴーレムの話であった。
ボス戦ならぬ強敵を倒したあとはそれを話のタネにする。ここら辺はゲームの時と変わらないなと苦笑した。
ナコは疲れ切ったのだろう、今は僕の肩に頭を乗せて熟睡している。
「まあ、無事に皆で生きて帰ることができて嬉しいよ」
「えぇー、クーちゃんがその締めの言葉言っちゃうー?! 開幕早々完全に逝っちゃったのクーちゃんだと思ったからね」
リーナが呆れた顔で言い返す。
「アイテムボックスの反応から察するに、要塞型ゴーレムの起動条件は魔核をいくつか集めることだったんだろうね」
「……ごめんね。リーナがあんな場所を案内したせいで」
リーナが弱々しく顔を俯かせる。
「リーナはなにも悪くない、色々な偶然が重なった結果だよ」
「やっぱりそう思う? そうだよねー、リーナもそう思ってた」
切り替えがとってもスピーディ。
「あーでもさ、魔核全部使っちゃったから集め直さないといけないよねー」
「問題ないよ。代わりにこれが手に入ったからね」
僕はアイテムボックスから、大きい魔核を取り出す。
要塞型ゴーレムの魔核を貫いた時、代用できると考えて入手しておいたのだ。衝撃によっていくつかに分離されてしまったが、その内の一つでもバスケットボールほどの大きさがあるので集めていた魔核の総量くらいにはなるだろう。
リーナは両手で魔核を持ち上げ、マジマジと見つめながら、
「なんか赤みが通常より濃いねー。保有してる魔力量が段違いなのかな」
「間違えても今パイロキネシスしないでね」
「なんかそう言われると、しなきゃいけない使命感がモリモリ溢れ出しちゃう」
「ナコだけ抱えて全力で離脱するよ」
「リーナは置き去り確定なんだーっ?!」
「とりあえず、魔核については心配しなくていいよ。繋がれていた鎖の一部も持って来たけど――リーナいる?」
「んんー、気持ちだけ受け取っておこうかな。今はリーナがアイテム持っていても仕方ないし、二人の報酬にしといてー」
この鎖も『シークレット』のドロップ品みたいなものだ。
気になって拾ってはきたものの、こういった謎アイテムは鑑定しないとわからない。ウィンディア・ウィンドについたら鑑定士に依頼してみるか――レア素材とかだったら嬉しいなぁ。
「じゃあ、明日は予定通り決行日だね。クーちゃんたちは、ウィンディア・ウィンドに到着したあとはどうするのー?」
「王都に行くつもりだよ」
「リーナも転生してからはまだ直接行ったことないけど、訪れる価値は絶対にあると思うー。情報の最先端は間違いなく王都に集まるだろうからね。でもでも、王都までの道のりには“必須事項”があるけど大丈夫ー?」
「もちろん。その上で王都には必ず行く、大事な仲間がいるんだ」
「プレイヤーサーチしたのー?」
「サーチしたら二人だけ見つかったよ」
「そっか、それはクーちゃんのためにオンにしてるのかもね。すごく仲間思いの人たちじゃないー」
「僕のためにオンにしてる?」
「クーちゃん、まだそこら辺も知らない感じかー。仕方ないなぁ、転生者の大先輩としてリーナが手取り足取り優しく教えてあげる」
リーナが一つのウィンドウを表示させる。
「プライバシー管理は知ってるでしょ?」
「自身のプレイ状況を細かく設定するところだよね」
プライバシー管理。
オンライン状態を隠匿したり、サーチ検索禁止など細かい設定が可能となる欄だ。ひっそりソロ活動したい時など、オフにして楽しむこともできた。
そこら辺に関してはスルーしていたな。
リーナがウィンドウをポチポチとタップしながら、
「その設定はね、この世界にも適用できるんだ。プレイヤーサーチに引っかからないよう、基本的には自身の居場所はオフにしておいたほうがいい。余程の理由がない限りデメリットでしかないからねー。そこでさっきの話に繋がるわけ、クーちゃんの仲間は故意にオンにしているはずだよ。そうそう、そこをそうしてこうして、あとで黒猫ちゃんにも教えてあげてねー」
オンオフを切り替えられる。
だとすると、ニャニャンやゴザルさんがこの世界に来ている可能性も――あるのか?
僕はリーナに倣って、プライバシー管理をオススメ設定にしていく。
「名前のスペルを知られていなかったら問題ないんだけど、黒猫ちゃんやクーちゃんはそのまま読む感じだからわかっちゃうよねー。あとはフレンドリスト、今後はこっちをメインに心から信頼できる人だけ集める方がいいよ。フレンドリストは個別に細かく設定できるんだー」
出会った相手がリーナだからこその――優しさの詰まった情報である。
出会う順番が違っていたら、僕のこれからは大きく変動したことだろう。
僕は素直な気持ちをリーナに伝える。
「リーナ、君に出会えてよかった」
「きゅ、急にどうしたのさ? そんな面と向かって言われると、さすがのリーナも照れちゃうよ? ほらほら続き、クーちゃん知らないこと多いんだから、今日は徹夜になっちゃうかなー?」
徹夜でも問題ない。
命を賭した激戦後は興奮冷めやらぬ、まだまだ睡魔の来る気配はなかった。
少しずつ、夜が更けていく。
話も終わりに近付いた頃合い、僕はリーナに最後の質問をする。
「リーナ、この世界に蘇生魔法はあるのかな?」
「リーナ、過去に死ぬことを考えていた人の一言とは思えないよ」
「クーちゃんの意地悪、そこツッコまないでよー。いやぁ、ここまで生を実感したのは初めてだって」
キャンプ地に戻り、僕たちは戦闘後の休息を取っていた。
魔核を用いてダンジョンを通過する話はさて置き、メインはもちろん要塞型ゴーレムの話であった。
ボス戦ならぬ強敵を倒したあとはそれを話のタネにする。ここら辺はゲームの時と変わらないなと苦笑した。
ナコは疲れ切ったのだろう、今は僕の肩に頭を乗せて熟睡している。
「まあ、無事に皆で生きて帰ることができて嬉しいよ」
「えぇー、クーちゃんがその締めの言葉言っちゃうー?! 開幕早々完全に逝っちゃったのクーちゃんだと思ったからね」
リーナが呆れた顔で言い返す。
「アイテムボックスの反応から察するに、要塞型ゴーレムの起動条件は魔核をいくつか集めることだったんだろうね」
「……ごめんね。リーナがあんな場所を案内したせいで」
リーナが弱々しく顔を俯かせる。
「リーナはなにも悪くない、色々な偶然が重なった結果だよ」
「やっぱりそう思う? そうだよねー、リーナもそう思ってた」
切り替えがとってもスピーディ。
「あーでもさ、魔核全部使っちゃったから集め直さないといけないよねー」
「問題ないよ。代わりにこれが手に入ったからね」
僕はアイテムボックスから、大きい魔核を取り出す。
要塞型ゴーレムの魔核を貫いた時、代用できると考えて入手しておいたのだ。衝撃によっていくつかに分離されてしまったが、その内の一つでもバスケットボールほどの大きさがあるので集めていた魔核の総量くらいにはなるだろう。
リーナは両手で魔核を持ち上げ、マジマジと見つめながら、
「なんか赤みが通常より濃いねー。保有してる魔力量が段違いなのかな」
「間違えても今パイロキネシスしないでね」
「なんかそう言われると、しなきゃいけない使命感がモリモリ溢れ出しちゃう」
「ナコだけ抱えて全力で離脱するよ」
「リーナは置き去り確定なんだーっ?!」
「とりあえず、魔核については心配しなくていいよ。繋がれていた鎖の一部も持って来たけど――リーナいる?」
「んんー、気持ちだけ受け取っておこうかな。今はリーナがアイテム持っていても仕方ないし、二人の報酬にしといてー」
この鎖も『シークレット』のドロップ品みたいなものだ。
気になって拾ってはきたものの、こういった謎アイテムは鑑定しないとわからない。ウィンディア・ウィンドについたら鑑定士に依頼してみるか――レア素材とかだったら嬉しいなぁ。
「じゃあ、明日は予定通り決行日だね。クーちゃんたちは、ウィンディア・ウィンドに到着したあとはどうするのー?」
「王都に行くつもりだよ」
「リーナも転生してからはまだ直接行ったことないけど、訪れる価値は絶対にあると思うー。情報の最先端は間違いなく王都に集まるだろうからね。でもでも、王都までの道のりには“必須事項”があるけど大丈夫ー?」
「もちろん。その上で王都には必ず行く、大事な仲間がいるんだ」
「プレイヤーサーチしたのー?」
「サーチしたら二人だけ見つかったよ」
「そっか、それはクーちゃんのためにオンにしてるのかもね。すごく仲間思いの人たちじゃないー」
「僕のためにオンにしてる?」
「クーちゃん、まだそこら辺も知らない感じかー。仕方ないなぁ、転生者の大先輩としてリーナが手取り足取り優しく教えてあげる」
リーナが一つのウィンドウを表示させる。
「プライバシー管理は知ってるでしょ?」
「自身のプレイ状況を細かく設定するところだよね」
プライバシー管理。
オンライン状態を隠匿したり、サーチ検索禁止など細かい設定が可能となる欄だ。ひっそりソロ活動したい時など、オフにして楽しむこともできた。
そこら辺に関してはスルーしていたな。
リーナがウィンドウをポチポチとタップしながら、
「その設定はね、この世界にも適用できるんだ。プレイヤーサーチに引っかからないよう、基本的には自身の居場所はオフにしておいたほうがいい。余程の理由がない限りデメリットでしかないからねー。そこでさっきの話に繋がるわけ、クーちゃんの仲間は故意にオンにしているはずだよ。そうそう、そこをそうしてこうして、あとで黒猫ちゃんにも教えてあげてねー」
オンオフを切り替えられる。
だとすると、ニャニャンやゴザルさんがこの世界に来ている可能性も――あるのか?
僕はリーナに倣って、プライバシー管理をオススメ設定にしていく。
「名前のスペルを知られていなかったら問題ないんだけど、黒猫ちゃんやクーちゃんはそのまま読む感じだからわかっちゃうよねー。あとはフレンドリスト、今後はこっちをメインに心から信頼できる人だけ集める方がいいよ。フレンドリストは個別に細かく設定できるんだー」
出会った相手がリーナだからこその――優しさの詰まった情報である。
出会う順番が違っていたら、僕のこれからは大きく変動したことだろう。
僕は素直な気持ちをリーナに伝える。
「リーナ、君に出会えてよかった」
「きゅ、急にどうしたのさ? そんな面と向かって言われると、さすがのリーナも照れちゃうよ? ほらほら続き、クーちゃん知らないこと多いんだから、今日は徹夜になっちゃうかなー?」
徹夜でも問題ない。
命を賭した激戦後は興奮冷めやらぬ、まだまだ睡魔の来る気配はなかった。
少しずつ、夜が更けていく。
話も終わりに近付いた頃合い、僕はリーナに最後の質問をする。
「リーナ、この世界に蘇生魔法はあるのかな?」
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