転生したら倉庫キャラ♀でした。

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氷迷宮の迷い子編

31話 シークレットバトル 後編

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 要塞型ゴーレムが間近に迫る。
 僕はナコのもとに駆け走り、声を大にして叫んだ。

「ナコ、そのままで聞いてくれ!」
「クーラ? クーラっ?!」
「少しの間、要塞型ゴーレムの注意を引き付けておいてほしい! 危険だけど――任せてもいいかな?」
「……はいっ!」

 涙ぐんだ声が返って来る。
 僕は無事だよ、とナコの頭をなでてあげたいところだが、今はこの状況を打破することが先決だ。

 ナコが命懸けで稼いでくれている時間を無駄にはできない。

 僕は要塞型ゴーレムの足もとに滑り込み、手持ちの魔核を隙間に埋め込んでいく。
 右足左足、均等に5個ずつ――バランスよく配置した。

「ナコっ! 緊急だから許してねっ!」

 にょどろろん。
 触手でナコを絡め取り――即座に戦線離脱する。
 後目に、例の大砲が僕たちに照準を合わせているのがわかった。先ほどと同じく、砲身が徐々に赤みを帯びていく。
 その発射の瞬間を――僕はギリギリまで見極める。

「リーナさんの言っていた、触手と魔法少女になりましたね」
「ナコさん余裕ありますね」
「……あるように、見えますか?」

 ナコがポツリと呟く。
 僕は触手から――ナコを腕の中へと移動させる。お姫様抱っこをし、視界に入る位置に置いた。
 ナコの顔が――見たかったのだ。
 
「あの時クーラが死んだと思って、今はクーラが無事だとわかって、たくさんの感情がごちゃ混ぜで不安定になっています」

 震える声、赤くなった瞳。
 ナコが僕の首に手を回しながら、ポロポロと大粒の涙を零す。

「……ナコ」
「よかった。本当に、生きていてよかった」
「ごめん、さっきのは失言だったね」
「いえ。クーラを感じることができて――嬉しいです」

 背後に熱を感じる。
 間もなく、先ほど受けた攻撃――大砲が僕たちに向かって発射されるだろう。
 僕は可能な限り距離を取り、ある瞬間に備える。

「ナコ、まだまだ深刻な状況は変わっていない。必ずやつを倒してみせる――僕に付いて来てくれるかな?」
「もちろんです。私はクーラと共に行きます」

 その言葉を胸に、僕はリーナに合図を送る。

「リーナ、今だぁあああああああっ! 全力で両足にパイロキネシスを放ってくれぇええええええええっ!!」
「合点承知! 爆裂しろ――"炎輪"っ!!」

 待ってましたとばかりに、リーナがスキルを発動する。
 輪っか型の炎が出現、要塞型ゴーレムの両足にまとわりつく。
 そのパイロキネシスの熱に反応して、配置した魔核が大爆発する。巨大なゴーレムから入手した魔核だけあって威力は計り知れないものだった。

 要塞型ゴーレムの両足が崩れ、自然と両手を地に付くことになる。

 そこに大砲が発射され――要塞型ゴーレムは自爆、両手足は一瞬にして崩壊し見るも無惨な姿形へと変貌する。
 原型を保っているのは、魔核が埋め込まれた中心のみとなった。

 ――しかしながら、一刻の猶予もない。

 再生機能が備わっているため、今この無防備となった瞬間に全てを込めるしかないのだ。
 異常なまでの再生速度を上回るには一点突破が必須となるだろう。
 僕は崖の側面に飛び付き、足もとに触手を展開――螺旋状に形作る。

「ナコ、二人で――いや、皆の力であの魔核を貫くよ」
「はい! 私たちの力なら絶対にできます!」

 手持ちのバフはあと二つ、出し惜しみはしない。


《 スピード超アップを発動! 効果――10秒間全ての速度を上昇させる 》


 触手をスプリング状に跳ねさせ、僕とナコは――爆速、空間を駆け走った。
 ナコは大剣ハッピーを、僕は触手を右手前方に展開移動、双方目標に向かって武器を構える。


《 スキルの超強化を発動! 効果――次に使用するスキルを一度のみ強化 》


 さらに、バフを追加で発動する。
 触手の先端はランスのよう鋭く変化し、硬度すら上昇したのか黒の濃度が増す。これで捕食により獲得したバフは全て使い切った。
 この一度切りのチャンスを逃せば僕たちは全滅するだろう。

 一撃で仕留める、仕留めてみせる!

 狙うものは狙われるものに。
 僕とナコという二発の弾丸が着弾、想像を絶したその威力は要塞型ゴーレムの外装、最後の砦を木端微塵に吹き飛ばす。
 とまるな――行けっ! 僕とナコは目標物に向かってさらに突き進んだ。


 ――「「はぁあああああああああっっっ!!」」


 二人の渾身の叫びがこだまする。
 1センチ、2センチ、、3センチ、、、もっと深く――深く! 
 ガラスが割れるような音と共に、僕とナコは要塞型ゴーレムの中心を一直線に貫いた。



 その切っ先に――赤い魔核を突き刺して。
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