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氷迷宮の迷い子編

27話 二人の絆

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「クーちゃんたちさ、ここに来るまでに何人殺してきたの?」 


 数秒の沈黙が流れる。
 それは一種の肯定に近いだろう、いつまでも黙っていたところで意味はない。
 先に口火を切ったのは、

「三人殺したよ」「三人殺しました」

 同時、だった。
 自然と僕たちは互いを見やり――頷き合う。ナコと同種の想いを抱えていたことに絆の深まりを感じる。
 改めて、僕は強く形にして――言い直した。

「ナコの言葉は僕の言葉でもあるし、僕の言葉はナコの言葉でもある。僕たちは三人殺したんだ」
「きひひ、タイミングバッチリすぎて驚いちゃった。クーちゃんと黒猫ちゃんはお互いを想い合っているんだね」

 僕たちの言葉に対し、リーナは言及したりもしない。
 ゴーレムを狩っていた時から微かに感じていた。スキルの使い方、動き方、リーナはこの世界に――少なくとも僕たち以上に遥かに精通している。

「リーナはね、何人殺したかも覚えていない」

 リーナがこの世界に来たのは、三ヶ月ほど前だという。
 運良く所属ギルドに同じ境遇の人たちが何人もいたので、その人たちとしばらく一緒に過ごしていたそうだ。
 この世界に来る前の記憶は皆一致していたそうで、転生なのではないかという意見が大半だったという。
 ギルドのメンバーと情報を集め、日々生きるため狩りをして、最初は慣れない世界ながらも奮闘していたそうだ。
 だが、そんなある日――事件が起きた。

「クーちゃん、アイテムボックスが他者にも見れることは知ってるよねー?」
「ああ、ナコのアイテムボックスが見れたから」
「リーナが所属していたギルドはね、レアアイテムを巡って壮絶な争いが起こったんだ。そりゃあもうここが現実なわけだし、レアアイテムの重要さはゲーム時の比じゃないのはわかるけどさ」

 リーナは次いで、

「全員と殺し合いになって、生き残ったのがリーナ」

 言葉を失った。
 ギルドだからこそ起きた争い、仲間との殺し合い――安住の地が地獄と変わる、それはどれほど残酷なことだったろう。

「リーナはギルドのアイテム管理担当だったから狙われたんだろうね。命を助ける代わりにアイテムボックスを開けってさ。別にそんな回りくどいことしなくても素直にアイテムくらいだしたのにね」

 麻痺毒を食事に盛られ、ギルドメンバー全員に囲まれた。
 リーナは素直に指示に従い、アイテムを全てだした。だが、待っていたのは約束と違う事態だったという。

 ギルドにも様々な種類がある。

 ネームドを狩ることを主としたギルド、攻略難易度の高いダンジョンをクリアすることを主としたギルド。
 アイテム管理を任されていたのであれば、組織的な意味合いが強いギルドだったのだろう。こういった活動をメインとしたギルドはアイテムに対して執着の強い人種が多い。

「最初にね、リーナに向かって剣を振り下ろそうとした一人を念じて――殺した。とにかく死にたくない一心だったよ、どうにかしないとってもう無我夢中でね。相手の動きを確実にとめるため必死になって、気付けば心臓を握り潰していたんだ」

 呆気なく、紙切れのよう地面に横たわった。
 その一人を境目に――自身に降りかかる火の粉を全て振り払った。その時、ユニーク職の強さに気付いたという。

 生物、特に対人に関して恐るべき力を発揮する。

 ゲームでは雑魚スキル、ネタスキルとされていたものが、ここでは最強に近い殺傷能力になるという。

「テレキネシスと透視のスキルを組み合わせて、心臓や脳の血管を破裂させることができるんだ。あれだけネタジョブおつって言われてた超能力者なのに――最早、チート能力に近いよね」

 即死攻撃。
 人間の急所をあっさりと掌握できてしまうのだ。これがどれほど最強か――言うまでもないだろう。
 言いながら、リーナがステータス画面を開く。


《ネーム》   Lina
《ジョブ》   超能力者(レベル99)
《種族》    竜龍族
《保有スキル》 テレキネシス パイロキネシス 透視 念視 テレパシー  


「超能力者レベル99って――リーナ、ユニーク職で『超越者ちょうえつしゃ』一歩手前だったのか」
「きひひ。条件がわからなくて、長い間このラインでとまってるけどねー」

 シンプルに驚く。
 僕自身、長いことオンリー・テイルをプレイしていたが――ユニーク職でここまでレベルが高い人は初見だった。
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