転生したら倉庫キャラ♀でした。

ともQ

文字の大きさ
上 下
25 / 384
氷迷宮の迷い子編

25話 触手と魔法少女

しおりを挟む
「お手伝いってなにか方法があるの?」
「ふふふーん。リーナにはとっておきの秘策があるんだなー」

 リーナがアイテムボックスから赤い塊を取り出し頭上に投げる。

「ゴーレムの、魔核?」
「これをねー、こうするんだよ」

 リーナがパチっと指を鳴らすと、魔核が燃え上がり爆発した。
 小さな花火くらいの火力であったが、リーナの言わんとしていることが――なんとなくではあるが想像できた。

「本体からはずれた魔核はね、高い熱に反応して爆発するんだ。この魔核は小さいからこんな威力だけど、大きな魔核だったらどうなるか予想はできるよねー? つまり、巨大なゴーレムの魔核を」

 今の爆発で目が覚めたのだろう。
 リーナの説明を半ば強制的に遮るよう、ナコがリーナの首もとに剣の切っ先を向けながら、

「クーラ、敵ですか?」

 しかも、完全に悪い方向に勘違いしている。

「ちょわぇっ?! なにこの黒猫ちゃん、とっても怖いー。目が本気すぎてリーナ泣きそうなんだけど、クーちゃん助けてくれる?」
「クー、ちゃん? 馴れ馴れしいですね。ハッピー、状況を分析して」


《 クーラ様との会話を聞いていましタガ、敵意のない可能性が大かと思われマス 》


「了解、ありがとう」
「えぇーっ! なにを了解して剣をさらに近付けたの? あと数ミリ進んだらもう危ない予感、どこか琴線に触れちゃったー?」

 本気で殺りそうな気がするので、僕は慌ててナコを後ろから抱きとめる。

「ナコ、落ち着いて。彼女は――リーナは僕たちに協力してくれるって言ってるんだ。ハッピーの言う通り敵なんかじゃない」
「クーラがそういうなら我慢します」
「ニュアンスおかしいよね? 我慢することでもないよね? クーちゃん、飼い主さんならリーナに噛み付かないようちゃんと見張っててよー」

 リーナが怯え混じりに涙目で言う。

「あ、それで話の続きなんだけどさー、巨大なゴーレムを倒して魔核を集めちゃおうって話ね」
「切り替えが早い! 理屈は理解できたけど、今の着火ってどうやったの?」
「リーナのスキル"パイロキネシス"だよ、視界に入るものを燃やすことができるの。リーナのジョブは『超能力者エスパー』だからねー。微妙で絶妙な効果を持つスキルが多いんだ。指パッチンは演出的に格好良いからやっただけー」

 超能力者。
 指パッチンの件はスルーするとして、まさかのジョブに驚きを隠せなかった。
 ここまで遭遇率が高いと類は友を呼ぶとでもいうべきか、同じユニーク職である。

 ……出会ったばかりの僕たちに、自分のジョブを打ち明けたリーナ。

 信じてみようと思った。
 正直なところ、リーナの提案以外に現状選択肢はない。
 どんな障害があろうと引き返すことは不可能、僕たちは前に進むしかないのだ。
 リーナは僕とナコを交互に見やりながら、

「きひひ。それに同じユニーク職だから親近感バリバリ湧くやつー」
「参ったな。そこまで把握していたのか」
「リーナのスキル"透視"だよ、色々なものが透けて見えるの。触手に魔法少女の組み合わせとか妄想掻き立てられるよねー」
「触手に魔法少女で妄想、ですか?」

 不思議そうに首を傾げるナコ、リーナは悪戯気にニヤニヤと笑い、

「ウブな黒猫ちゃんに教えてあげる。魔法少女はねー、触手に縛られてイタズラされるのがデフォなんだ。身体の隅から隅までまさぐられて、悔しい! でも気持ちいい! ってなっちゃうの。クーちゃんも常日頃から妄想全開にしてるはずだよー」
「クーラが、私にイタズラっ?!」
「僕も男だからそっちの分野は多少心得あるけど、ナコでそういった妄想をしたことはない。デフォなんて偏った知識与えないで。リーナ、ナコは小学生だよ?」
「うわぉ、ロリっとした属性まで加わっちゃったねー」
「クーラが、私の身体を触手でっ?!」
「属性って、リーナ結構詳しいのかな?」

 僕はなんとなく聞き返す。リーナは数秒沈黙した後、

「BLも好きですし同人誌も好きですし、一人称リーナでアラサーですけど問題とかあります? あ、この世界に来る前はブラック会社で毎日汗水流して働いていました。癒やしは家でマッスル勇太くん人形と妄想念話することです」
「急に口調変えないでよっ! 年齢まで聞いてないでしょ?!」
「独り身のOL舐めるなよゴラァっ!」
「……クーラだったら、気持ちいいってなるのかな」
「リーナさん、ナコさん。一回だけ深呼吸してもらってもいいですか?」

 会話の情報が混雑しすぎである。
 僕とリーナの話の合間合間に、ナコはなにを考えていたのか。顔を上気させながら棒立ちしている。
 リーナは紅茶を一啜り、どうやら落ち着いたようで、

「ふふぅぃー。今の話の中で気になったことが一つあるんだけどさー、クーちゃんが男ってどういうことなの?」
「ああ、言葉の通りだよ。僕の中身は男なんだ」

 物の弾みのカミングアウトとなったが、隠すことでもない。
 僕はナコに話した時と同様、リーナに経緯を説明する。
 僕の話を聞き終わるや否や、リーナが腹を抱えて笑い出した。

「く、きひ、くふふ。そ、ぶふっ、そんなパターンあるの? この場合ってある意味新種のふたなりになるのかなー?」
「リーナ、これ以上ナコにその手の話はやめておこう」
「ふたなりってなんですか?」
「ほら、興味持っちゃったじゃんっ!」
「ウブな黒猫ちゃんに教えてあげる。ふたなりっていうのはね」

 賑やかに、夜が更けていく。
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

断罪済み悪役令嬢に憑依したけど、ネトゲの自キャラ能力が使えたので逃げ出しました

八華
ファンタジー
断罪済みの牢の中で悪役令嬢と意識が融合してしまった主人公。 乙女ゲームストーリー上、待っているのは破滅のみ。 でも、なぜか地球でやっていたオンラインゲームキャラの能力が使えるみたいで……。 ゲームキャラチートを利用して、あっさり脱獄成功。 王都の街で色んな人と出会いながら、現実世界への帰還を目指します!

ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜

むらくも航
ファンタジー
ド田舎の村で育った『エアル』は、この日旅立つ。 幼少の頃、おじいちゃんから聞いた話に憧れ、大都会で立派な『探索者』になりたいと思ったからだ。 そんなエアルがこれまでにしてきたことは、たった一つ。 故郷にあるダンジョンで体を動かしてきたことだ。 自然と共に生き、魔物たちとも触れ合ってきた。 だが、エアルは知らない。 ただの“遊び場”と化していたダンジョンは、攻略不可能のSSSランクであることを。 遊び相手たちは、全て最低でもAランクオーバーの凶暴な魔物たちであることを。 これは、故郷のダンジョンで力をつけすぎた少年エアルが、大都会で無自覚に無双し、羽ばたいていく物語──。

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

処理中です...