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第39話 魔王様が大好き
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◆ フェルティ歴346年、2月22日 ◆
「魔王城は、ワンニャン城に改名します」
ニャンニャが民全てに向けて――声明する。
領内の民を全て城下に集めた日、ニャンニャがずっと考えていた代替案――それが可決する日でもあった。
「そして、今日この日から――魔王という名も捨てます。領外にでることが可能となり他国との繋がりができた今、人々が恐れる対象となる歴史を改革しようと考えました」
ワンワが両手を大きく広げながら、
「賛成の人は――皆手を上げてねっ!」
歓声と共に、両手が掲げられる。
反対するものなど――いなかった。勇者の呪いも完全に解け、魔王城は新しい時代を築き始める。
恐れるべき対象などではない、共存の道に進んだのだ。
僕は間もなく、クリア条件を満たしたことになり――もとの世界に戻るだろう。お世話になった皆に、別れの挨拶は済んでいる。
だけど、一人だけ――どうしても、伝えたいことが残っていた。
「ニャンニャ様」
「天音さん」
同時だった。
なんだか、空気を読まれたように――先ほどまで側にいたリューナやワンワ、コットンやダーレンさんまでもが姿を消している。
いつの間にか、二人きり――だった。
「ニャンニャ」
「なんでしょうか、晴人くん」
「僕はもうすぐ――もとの世界に帰還する」
「わかっています」
「僕の世界の制度的に、君に会えるのが――いつになるかはわからない。だからこそ、後悔が残らないように言葉にしておきたいんだ」
困難な道だろう。
だけど、乗り越えた先にきっと――ニャンニャは僕にこう言ってくれるはずだ。優しく微笑みながら必ず答えてくれるはずだ。
「もし、またここに帰ることができたら――とびっきりのご褒美が欲しい。今度はキスやハグなんかじゃない、もっと別の形のものを約束してくれるかな」
「ニャンニャの名にかけて約束は守りましょう」
「なんでもいいの?」
「ふふふ。やる気がでましたか?」
「バリバリだよ」
「冗談ではありません。私は――本気です」
「約束は破らないもんね」
「はい。ニャンニャの名にかけて」
僕たちは――出会った当初を思い出して笑い合う。
――――――――――――――――――――――――――――
【クリア条件】
フェルティフェアリから魔王という存在を消失させること
――――――――――――――――――――――――――――
「クリアを確認しました。もとの世界に帰還します」
僕にとっては二度目のアナウンス、一度目とは全く異なり――響く言葉は僕の胸に深く染み渡るのであった。
「魔王城は、ワンニャン城に改名します」
ニャンニャが民全てに向けて――声明する。
領内の民を全て城下に集めた日、ニャンニャがずっと考えていた代替案――それが可決する日でもあった。
「そして、今日この日から――魔王という名も捨てます。領外にでることが可能となり他国との繋がりができた今、人々が恐れる対象となる歴史を改革しようと考えました」
ワンワが両手を大きく広げながら、
「賛成の人は――皆手を上げてねっ!」
歓声と共に、両手が掲げられる。
反対するものなど――いなかった。勇者の呪いも完全に解け、魔王城は新しい時代を築き始める。
恐れるべき対象などではない、共存の道に進んだのだ。
僕は間もなく、クリア条件を満たしたことになり――もとの世界に戻るだろう。お世話になった皆に、別れの挨拶は済んでいる。
だけど、一人だけ――どうしても、伝えたいことが残っていた。
「ニャンニャ様」
「天音さん」
同時だった。
なんだか、空気を読まれたように――先ほどまで側にいたリューナやワンワ、コットンやダーレンさんまでもが姿を消している。
いつの間にか、二人きり――だった。
「ニャンニャ」
「なんでしょうか、晴人くん」
「僕はもうすぐ――もとの世界に帰還する」
「わかっています」
「僕の世界の制度的に、君に会えるのが――いつになるかはわからない。だからこそ、後悔が残らないように言葉にしておきたいんだ」
困難な道だろう。
だけど、乗り越えた先にきっと――ニャンニャは僕にこう言ってくれるはずだ。優しく微笑みながら必ず答えてくれるはずだ。
「もし、またここに帰ることができたら――とびっきりのご褒美が欲しい。今度はキスやハグなんかじゃない、もっと別の形のものを約束してくれるかな」
「ニャンニャの名にかけて約束は守りましょう」
「なんでもいいの?」
「ふふふ。やる気がでましたか?」
「バリバリだよ」
「冗談ではありません。私は――本気です」
「約束は破らないもんね」
「はい。ニャンニャの名にかけて」
僕たちは――出会った当初を思い出して笑い合う。
――――――――――――――――――――――――――――
【クリア条件】
フェルティフェアリから魔王という存在を消失させること
――――――――――――――――――――――――――――
「クリアを確認しました。もとの世界に帰還します」
僕にとっては二度目のアナウンス、一度目とは全く異なり――響く言葉は僕の胸に深く染み渡るのであった。
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