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129ページ目∶
「ここ…は、、寺院?」
私はゆっくりと起きて周りを見渡す
私を囲んでいる青く美しい光苔が寝起きの体を癒やしてくれる
この青い光苔もいつぶりでしょう
実際には数日しか経っていないんでしょうけど、最後の一夜が長すぎて夏休み明けの学園のような気分
そんな事を考えながら部屋中に溢れる淡い光を浴びていると、少し経ってから小さな足元と一緒にが狩人が顔をのぞかせる
「魔法使い…?」
私に気が付いた瞬間、狩人の目からゆっくりと細い雫が滴る
狩人は私のところへ走り寄って跳びながら抱きつく
今まで私に迷惑をかけないように遠慮気味に探索していた狩人がここまで感情を表に出しているのだ
どれだけ私の寝ていた時間が長く感じていたかは言うまでもない
「その…ごめ―」
少しして、狩人は泣き止むと抱きついた姿勢を変えずに口を開いた
「狩人は謝らないでいい、悪いのは全部主なんだから」
私は言葉に覆いかぶさるようにニッカリと笑ってみせた
過去の私が坊に言われた笑顔よりは、少しは笑えているつもり
狩人は私を攻撃したことについて謝りたがっているようだけど、私はもっとひどいことをたくさんしているんだから、謝罪を受け取る権利はないの
リナーシタでさえ、最後の砦も死なせてしまったんだから
でも、繋いでくれた
この繋ぎこそは、絶対に切りたくない
「…じゃあ、行こう。主の元へ」
「…うん…!」
◇◇ ◇◇
130ページ目∶
きっと、主の支配は秘境に入った瞬間から始まっていたんでしょうね
緑色の綺麗な苔に蝕まれている、かつての冒険者達の屍を眺めながら私はそんな事を考える
秘境に入ってから出なかったのは、出たくなかったんじゃなくて、でられなかったんでしょ
これも強力は結界の類だったのかしらね
「苔が生えなくなっている、この道の先に主がいるはず」
私たちは北道を戻りある分かれ道に辿り着いた
寺院に続け道に行く前、秘境の景色が続く道と続かない道の分かれ道
あのときは続いている方になにかがあると思っていたけど、本当は逆だったんだね
結局どっちも行くなら関係なかったのかもしれないけど
「魔法使い、本当に心配したんだからね…何回ももう死んじゃったんじゃないかって諦めそうになったけど、信じていてよかった…もう、どこにも行かないでね」
今歩いている道の壁には緑の苔は唯一つも生えていない
そんな道が久しぶりに続くと重い雰囲気の無言に絶えられなくなった狩人が私に縋り付く
「大丈夫、もうどこにも行かないよ」
抱きつきながらも歩き続ける狩人の頭を私は優しく撫でる
「多分、この先に主の本体が居る」
「主って本じゃないの?」
「きっと、本も洗脳用のに過ぎないんだと思う、失敗したのか効果は中途半端だったからまだましだったけど」
「…で、でも、呪いは解いたから…ここからはもう後ろは振り向かない…!」
「そうね、行きましょう」
このダンジョンも主が何らして現世に復活したリナーシタの成れの果てだと思う
だから、主が死ねば、ここもなくなる
過去の私たちの思いを、絶対に無下にはしない
そして、狩人には悪いけど、これは僧侶たちに償う最後のチャンスなんだと思う
これが私の精神の最後の砦
私は、最後まで抗い続ける!
◇◇ ◇◇
131ページ目∶
私たちが道を進んでいくと、途中から明らかに雰囲気が重くなっていった
周りの見た目が変わったわけではなく、しっかりこの先も洞窟の道が続いている
ただ、背中を向けると死ぬ
そう感じたの
だから、私たち足を止めずに進み続けた、元から戻る気はなかったけどね
そうして見つけたのが、壁肌が少しなめらかになった大部屋だった
「アァ゙憎いニクイニクイィヨクモ…ヨ゙グモヨクゥ…」
「あれが…主の本体…」
私たちが部屋を覗き込むと、全身に薄暗い闇を纏う青年が頭を抱えてしゃがみ込んでいた
黒い髪と光を吸い込む純黒の瞳はリナーシタ…いや、オスマントの人たちを彷彿とさせる
地上で髪と瞳の色が黒いのは珍しいから、もしかしたら主もオスマントの人だったのかもしれない
部屋の床には、床を敷き詰める勢いで展開されている巨大な魔法陣が目立つ
「ぁ゙ッオマエ!ヨクも…良くもボクの計画を潰してくれたな!!死んで詫びろ!」
私達に気が付いた主が怒りに満ちた顔で片足を前に出す
その瞬間、主を囲む闇が動き出したと思ったら2頭のドラゴンの顔のように変形して左右から襲いかかってきた
狩人はとっさに後ろへ飛び退いて闇を避けたが、私は反応が遅れてお腹の表面を掠ってしまった
少し当たっただけで刃物で切られたような切れ味で、まともに食らったら簡単にしてるほどの威力
一瞬でも気を抜いたら負けるとわかった私たちは主の攻撃に負けじと遠距離から反撃をした
しかし、主の周りの闇が鱗のような物に変わった瞬間私たちの攻撃はいとも簡単に弾かれしまった
それを見て少し怯むとその隙にまた頭が私たちを攻撃してくる
「まるで本物のドラゴンじゃない…!こんなの私たちじゃ勝てるわけ…」
ドラゴンは強靭な鱗を全身に纏って、その巨大な体を浮かせる翼は1度の羽ばたきで突風を巻き起こせるほどのスピードと威力を持つ
それに加えてブレスが強力で、知能も高いから、ドラゴンは大体5つ以上のパーティが共闘してやっと倒せる相手と言われている
そんなドラゴンと同じスピードと強靭さを持っているなんて、私たち2人では到底勝てるはずがない
一体どうすれば
「諦めちゃ駄目!あとは勝つだけなんだから!」
その瞬間、弱気になって力が抜けかけている体に狩人の声が響いた
「ここ…は、、寺院?」
私はゆっくりと起きて周りを見渡す
私を囲んでいる青く美しい光苔が寝起きの体を癒やしてくれる
この青い光苔もいつぶりでしょう
実際には数日しか経っていないんでしょうけど、最後の一夜が長すぎて夏休み明けの学園のような気分
そんな事を考えながら部屋中に溢れる淡い光を浴びていると、少し経ってから小さな足元と一緒にが狩人が顔をのぞかせる
「魔法使い…?」
私に気が付いた瞬間、狩人の目からゆっくりと細い雫が滴る
狩人は私のところへ走り寄って跳びながら抱きつく
今まで私に迷惑をかけないように遠慮気味に探索していた狩人がここまで感情を表に出しているのだ
どれだけ私の寝ていた時間が長く感じていたかは言うまでもない
「その…ごめ―」
少しして、狩人は泣き止むと抱きついた姿勢を変えずに口を開いた
「狩人は謝らないでいい、悪いのは全部主なんだから」
私は言葉に覆いかぶさるようにニッカリと笑ってみせた
過去の私が坊に言われた笑顔よりは、少しは笑えているつもり
狩人は私を攻撃したことについて謝りたがっているようだけど、私はもっとひどいことをたくさんしているんだから、謝罪を受け取る権利はないの
リナーシタでさえ、最後の砦も死なせてしまったんだから
でも、繋いでくれた
この繋ぎこそは、絶対に切りたくない
「…じゃあ、行こう。主の元へ」
「…うん…!」
◇◇ ◇◇
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きっと、主の支配は秘境に入った瞬間から始まっていたんでしょうね
緑色の綺麗な苔に蝕まれている、かつての冒険者達の屍を眺めながら私はそんな事を考える
秘境に入ってから出なかったのは、出たくなかったんじゃなくて、でられなかったんでしょ
これも強力は結界の類だったのかしらね
「苔が生えなくなっている、この道の先に主がいるはず」
私たちは北道を戻りある分かれ道に辿り着いた
寺院に続け道に行く前、秘境の景色が続く道と続かない道の分かれ道
あのときは続いている方になにかがあると思っていたけど、本当は逆だったんだね
結局どっちも行くなら関係なかったのかもしれないけど
「魔法使い、本当に心配したんだからね…何回ももう死んじゃったんじゃないかって諦めそうになったけど、信じていてよかった…もう、どこにも行かないでね」
今歩いている道の壁には緑の苔は唯一つも生えていない
そんな道が久しぶりに続くと重い雰囲気の無言に絶えられなくなった狩人が私に縋り付く
「大丈夫、もうどこにも行かないよ」
抱きつきながらも歩き続ける狩人の頭を私は優しく撫でる
「多分、この先に主の本体が居る」
「主って本じゃないの?」
「きっと、本も洗脳用のに過ぎないんだと思う、失敗したのか効果は中途半端だったからまだましだったけど」
「…で、でも、呪いは解いたから…ここからはもう後ろは振り向かない…!」
「そうね、行きましょう」
このダンジョンも主が何らして現世に復活したリナーシタの成れの果てだと思う
だから、主が死ねば、ここもなくなる
過去の私たちの思いを、絶対に無下にはしない
そして、狩人には悪いけど、これは僧侶たちに償う最後のチャンスなんだと思う
これが私の精神の最後の砦
私は、最後まで抗い続ける!
◇◇ ◇◇
131ページ目∶
私たちが道を進んでいくと、途中から明らかに雰囲気が重くなっていった
周りの見た目が変わったわけではなく、しっかりこの先も洞窟の道が続いている
ただ、背中を向けると死ぬ
そう感じたの
だから、私たち足を止めずに進み続けた、元から戻る気はなかったけどね
そうして見つけたのが、壁肌が少しなめらかになった大部屋だった
「アァ゙憎いニクイニクイィヨクモ…ヨ゙グモヨクゥ…」
「あれが…主の本体…」
私たちが部屋を覗き込むと、全身に薄暗い闇を纏う青年が頭を抱えてしゃがみ込んでいた
黒い髪と光を吸い込む純黒の瞳はリナーシタ…いや、オスマントの人たちを彷彿とさせる
地上で髪と瞳の色が黒いのは珍しいから、もしかしたら主もオスマントの人だったのかもしれない
部屋の床には、床を敷き詰める勢いで展開されている巨大な魔法陣が目立つ
「ぁ゙ッオマエ!ヨクも…良くもボクの計画を潰してくれたな!!死んで詫びろ!」
私達に気が付いた主が怒りに満ちた顔で片足を前に出す
その瞬間、主を囲む闇が動き出したと思ったら2頭のドラゴンの顔のように変形して左右から襲いかかってきた
狩人はとっさに後ろへ飛び退いて闇を避けたが、私は反応が遅れてお腹の表面を掠ってしまった
少し当たっただけで刃物で切られたような切れ味で、まともに食らったら簡単にしてるほどの威力
一瞬でも気を抜いたら負けるとわかった私たちは主の攻撃に負けじと遠距離から反撃をした
しかし、主の周りの闇が鱗のような物に変わった瞬間私たちの攻撃はいとも簡単に弾かれしまった
それを見て少し怯むとその隙にまた頭が私たちを攻撃してくる
「まるで本物のドラゴンじゃない…!こんなの私たちじゃ勝てるわけ…」
ドラゴンは強靭な鱗を全身に纏って、その巨大な体を浮かせる翼は1度の羽ばたきで突風を巻き起こせるほどのスピードと威力を持つ
それに加えてブレスが強力で、知能も高いから、ドラゴンは大体5つ以上のパーティが共闘してやっと倒せる相手と言われている
そんなドラゴンと同じスピードと強靭さを持っているなんて、私たち2人では到底勝てるはずがない
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「諦めちゃ駄目!あとは勝つだけなんだから!」
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