遺された日記【完】

静月 

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61〜63ページ目

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61ページ目∶
 どんな視力も奪う暗黒の世界も慣れると少しずつ目が見えるようになってくる
 だけど、それにも限界がある。月が雲に隠れてしまってただでさえ暗い世界がより黒く染まっていってしまった
 一度キャンプに戻って懐中電灯を持ってこようか
 3人と合流するにも、明かりを確保するにも、とりあえず1度この病院から出よう
 そうして立ち上がろうとした時、右足を置こうとした所に右足の姿が見えず、魔法使いはやっと思い出した

 「そうだ、右足はなくなったんだった」

 痛すぎて一周回って脳も危険信号を出すの諦めたのかな
 今では触れなければ何も痛みは感じなくなってしまっている
 でも、そんなに簡単に危険信号を出すのをやめるものかな?
 もしそうじゃないなら、貧血で痛覚が弱くなってるのかも
 どうしよう、こんな所に鉄分なんて無いし。これじゃ歩けない

「そうだ……確か狩人がしてた方法があったっ…」

 打開策という希望を見つけて、私は無意識に声が出てしまった
 周りに声が響き渡って、もう一度自分の耳の中に戻ってくる
 そんな声に自分の考えてることの
の代償が頭をよぎりためらいを覚えてしまう
 現実ならもうその程度では怖くもないけど、何故か夢の中だときっと常人と同じように恐怖を感じる
 意識が未来の私でも、あくまで心は過去の私ということなのかな
 ちなみに打開策というのは、狩人が戦士とはぐれた時に足に角を刺して簡易的な義足として使うということ
 実際にその場にいたわけではないけど、日記に書いてあったからなんとなくどうな感じなのかは想像できる
 ここには洞窟と違って形や長さはしっかり選べそう
 だけど、狩人があれを出来たのはきっと発狂していて、自我がほとんど残っていなかったから出来たこと
 今回の私の場合は自我がはっきりしていて、痛覚もまだ残ってるのに、そんなことしてこの心は耐えられるか
 やっぱり、やるしかないの…?
 でも、やらないと、幼馴染みたちが戻ってきてくれなければ私は餓死するしかない

「こんな肝試しで死にたくないでしょ…!覚悟を決めて!……」

 何度自分の体を説得しても、いつまでも体は震えて地面に根を張り続ける
 …そうだ、良いこと思いついた
 首を絞めて意識を鈍らして、一時的な半気絶状態にすればいける
 これも十分怖いけど、今よりはきっとマシなはず
 これなら、まだ覚悟は、、、決めれる……!!

「…、クッ…ウグ゙アゥッア゛.. ア…」

    このくらい    苦しい 
 あ…頭 動く ない      イケル
        足 刺さないと
    あれ 良い
              …キメロ!

「うっ…ア゛ゥガッ゙ゥ゙匕ィ゙アァ゙アアアァ゙ァ゙アア」

 刺…せた、、あっあはっ…頭動かないや
 首絞めの方法はうまく行ったかな、?
 このクラクラは…多分…貧血、
 そうして、未来の私の意識もなくなり、過去の私の体はもぬけの殻になってしまった

◇◇ ◇◇

62ページ目∶
 身体中の悪寒が絶えない
 過去の体での意識がなくなった後、体の異様な寒さとともに未来のリナーシタで目を覚ました
 背中に違和感を感じて手を回すと、冷や汗とは思えないほどの汗がへばりついているようでとても気持ちが悪い
 はじめは自分がどっちにいるのかわからなかったけど、右足を見るとわかることに気がついた
 右足が有ると現実、右足が柱だと過去という感じで、これからは迷うことが無くなりそう
 悪いことしか無い柱だけど、こういうところでは役に立つかもしれない
 許されるわけ無いのは、わかってるけど
 見るとここで光っていた玉はいつの間にか消えていた
 多分、病院でのチェックポイントを通過して、光る玉の場所が変わってしまったのでしょう 
 また探さないといけない、と思ったけど今回は、なぜか知っている。次に行くべき場所を
 確か、瓦礫の山を越えた先にある診察室のベッドで目覚めるはず
 そこへ行けば続きが見れるということだと思う
 なぜ記憶があるのかはわからない、やっぱり過去のことだからでしょうか
 いや、なにかに記憶を操作されているような、とても君の悪い感覚がする
 何も、起こらなければよいのだけれど
 そういえば、この日記は、一体誰が書いたのでしょう
 間取り図を見つけたところまでは、しっかり私が書いていた記憶がある
 だけど、なぜかその先のことは書いた記憶がない
 前のページに書いてある以上、書いてないわけはないと思うけど、無意識に書いたのでしょうか 
 でもその可能性は低いかもしれない、私が目覚めた時にはもう日記に追記されていたと思う、確か
 私の夢で見ていないところの描写も書いてあるし、私のことを客観視して書いてある所もある
 やっぱり不気味、この体がなにか得体のしれない物に操られている可能性が高くなってきてしまっている
 私が過去の体を操っているのと同じことが起きてるのかもしれない
 だとしたら、今の私の中にも誰か知らない人が眠っている可能性があるということでしょうか
 恐ろしい、私の自覚していない私が私を勝手に動かしているということ
 私が過去を変えようとしているのと同じように私の中の私も未来の私で、過去を変えに来たということ?
 だけど、私とは違ってまだ私は自分の中の私と会話を交わしたことはない、今のうちは何もかけることはないということでしょうか
 さっきから私が渋滞していて頭が壊れてしまいそう、1度この話は止めにしよう
 とりあえず続きを見るため診察室を探さないと

◇◇ ◇◇

63ページ目∶
 私の記憶どおり次の光る玉診察室のベッドの上に置かれていた
 私は自分が見つけられなくなってから、本当に何も感じなくなってしまったと思う
 光る玉を見つけた時、始めの頃に感じていたダンジョンの攻略に近づいて喜ぶことも、絶え間ない痛みと狂気の再来に恐ろしさを感じることもできなくなった

 急かもしれないけれど、もしこれを読んでる人がいるのなら、あなたは人が自らの生死を決める時の判断基準は何だと思う?
 私の場合
 人が生きようとするのは、自分の好きなことをしたいから
 人が生きようとするのは、自分がすきだから
 人が生きようとするのは、周りの人を助けたいから
 逆に、人が死のうとするのは
 自分が『生きたい』と思えなくなったから
 人が死のうとするのは、自分が嫌いになったから
 人が死のうとするのは、周りを嫌いになったから
 今の私は、そのどれにも当てはまることができない
 つまり、生きたいとも、死にたいとも思えないということ
 なんでこんな話を急にしたかって?
 それは私にもわからない
 だけど、1つ言えることは、こうなってしまった人間は、ただの人面犬
 人、あるいは概念、それらの言いなりにしかなれずに、眼の前しか見れないただの人の皮を被った犬
 それが、今の私
 意識できない所に潜んでいる人生を変えようとする自分勝手な私に、いとも簡単に操られている
 『私』

 あなたもも、しかしたらそうなのかもね
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