29 / 33
28.
しおりを挟む
アンに抱えられた私を狙って大猪が突っ込んでくる。犬っぽいモンスターと同様に、大猪は私だけを狙ってきていた。やはりウリ坊を縛りつけたのが私だからかそれとも…、いや今はこの大猪に集中しよう。
「ゔぉ…‼」
そこへウンが大猪の真横から攻撃をして突進の軌道をずらす。
軌道のずれた大猪は私のすぐ横をすり抜けて近くにあった木をなぎ倒す。
…一回食らったが私はあんなの受けたのか、もう二度と食らいたくないな。
大猪に足をやられた私は今現在アンに抱えられて湖まで退却中だ。
今のところ私に向かって突進してくる大猪をウンが何とか対処してくれているので問題はないけどここから先は…、
「「「「グルルルル…、」」」」
「ですよねー。」
覚悟はしていたが先程双子が蹴散らしていた犬っぽいモンスターと出くわしてしまった。しかも運の悪いことに見える範囲内で10匹はいる。ウンは大猪で手一杯で犬まで相手に出来ない。私の呪いもあと何発か放つことはできるが一度に来られると対処できない。
「バウ‼」
と、群れの内4匹が同時に襲い掛かってくる。
「ゔぁ‼」
私を抱えたままアンが4匹を相手する。私のせいで腕が塞がっているので3匹を蹴り倒し、そして最後の1匹は…。
「ブゴォ‼」
「キャイン!?」
運の悪いことに突進してきた大猪の進路上に飛び出してしまい、私たちに襲い掛かる前に吹き飛ばされてしまった。
「バウ‼バウ‼」
それを見ていた他の犬っぽいモンスターたちが一斉に大猪の方を向いて吠えたてる。どうやらターゲットが私たちからより強力な大猪に移り変わったようである。
ラッキー‼
大猪も流石に群れに囲まれれば足止めになるだろう。私たちは湖に急ぐのだった。
その後、何度かモンスターの攻撃を回避しながら獣道を抜けなんとか湖までたどり着くことが出来た。
しかしホッとするのも束の間、複数の塊が森から飛んでくる。
それは、大猪に吹き飛ばされた犬っぽいモンスター達だった。
「ブゴォ‼」
次の瞬間私たちが通ってきた獣道を無理やり広げ、木をなぎ倒しながら大猪が私たちに突進してきた。
ウンが果敢にも大猪を止めようと踏ん張るがそのまま吹き飛ばされた。
ええい、休む時間も与えてはくれないか。
「アン‼そしたら私を湖に向かって思いっきり投げて‼」
彼女の程の力があれば私を湖の底が深い場所まで投げ飛ばせるだろう。
「ゔぁ!?」
「いいから、やるの‼」
大猪のターゲットは私だけなのである。そして今までの行動から、大猪は例えそこに邪魔な障害物があろうともこの私を追いかけまわしてくるだろう。
そういうことならば、それをうまく利用する。
「ゔぅ…、ゔぁ‼」
どうなっても知らないぞ‼とでも言うようにアンは私のことを思いっきり湖へ投げ、同時に大猪が私めがけて突進してきていた。
「アン!?」
大猪の突進を食らってポリゴン化して砕け散るアンを視界に捕らえて私は空中で思わず叫ぶがすでに手遅れだった。次の瞬間、私は湖の丁度真ん中付近に着水し口から水をたらふく飲んでしまった。だが、そのおかげでアンがやられて真っ白になっていた頭を正気に戻すことが出来た。
大猪の方は湖にいる私を確認するとすごい勢いで水中に入っていった。
大分前ではあるがイノシシが泳いで渡ったというニュースを見たことがあった。だから例え私が水中にいようが追いかけてくる可能性があるのは分かっていた。
しかし、今私を追いかけている大猪はニュースで紹介されていた個体よりも遥かに大きく、重い。いくら湖とは言え脚を必死に動かして前に進むのがやっとのようである。
これを待っていた。
「『拘束の呪い』‼」
私も必死に片足をばたつかせながらナイフを構え、呪いを発動させる。
ナイフの先から飛び出した縄は先程と同じように大猪を拘束する。
ただし水中で、
「ブゴ!?ガボボ!?」
突然動きを制限された大猪は湖に沈んでいく、水中だから勝手が違うのか拘束を外そうとするもそれもうまくいかないようである。
あれよあれよという間に胴体が、頭が、最後に鼻が水中に沈んでいき、この後再び大猪が浮かんでくることはなかった。
『チャレンジ:怒れる大猪を達成しました。メニュー画面より報酬を確認してください。』
頭の中でそんな声が聞こえるがこちらも体力の限界である。
私も大猪同様に湖に沈み始める。
…来世はもっとモフモフを愛し、愛される存在になりたいな。
湖の底へ沈みながら、薄れゆく意識の中でそんなことを思っていると不意に私の右腕が引っ張られた。
「一体何考えてんのよお姉ちゃん!?」
私を水面に引っ張り出すために全身ずぶぬれになったフッカが叫んだ。
運のいいことにどうやら私は生き残ることが出来たらしい。
「ゔぉ…‼」
そこへウンが大猪の真横から攻撃をして突進の軌道をずらす。
軌道のずれた大猪は私のすぐ横をすり抜けて近くにあった木をなぎ倒す。
…一回食らったが私はあんなの受けたのか、もう二度と食らいたくないな。
大猪に足をやられた私は今現在アンに抱えられて湖まで退却中だ。
今のところ私に向かって突進してくる大猪をウンが何とか対処してくれているので問題はないけどここから先は…、
「「「「グルルルル…、」」」」
「ですよねー。」
覚悟はしていたが先程双子が蹴散らしていた犬っぽいモンスターと出くわしてしまった。しかも運の悪いことに見える範囲内で10匹はいる。ウンは大猪で手一杯で犬まで相手に出来ない。私の呪いもあと何発か放つことはできるが一度に来られると対処できない。
「バウ‼」
と、群れの内4匹が同時に襲い掛かってくる。
「ゔぁ‼」
私を抱えたままアンが4匹を相手する。私のせいで腕が塞がっているので3匹を蹴り倒し、そして最後の1匹は…。
「ブゴォ‼」
「キャイン!?」
運の悪いことに突進してきた大猪の進路上に飛び出してしまい、私たちに襲い掛かる前に吹き飛ばされてしまった。
「バウ‼バウ‼」
それを見ていた他の犬っぽいモンスターたちが一斉に大猪の方を向いて吠えたてる。どうやらターゲットが私たちからより強力な大猪に移り変わったようである。
ラッキー‼
大猪も流石に群れに囲まれれば足止めになるだろう。私たちは湖に急ぐのだった。
その後、何度かモンスターの攻撃を回避しながら獣道を抜けなんとか湖までたどり着くことが出来た。
しかしホッとするのも束の間、複数の塊が森から飛んでくる。
それは、大猪に吹き飛ばされた犬っぽいモンスター達だった。
「ブゴォ‼」
次の瞬間私たちが通ってきた獣道を無理やり広げ、木をなぎ倒しながら大猪が私たちに突進してきた。
ウンが果敢にも大猪を止めようと踏ん張るがそのまま吹き飛ばされた。
ええい、休む時間も与えてはくれないか。
「アン‼そしたら私を湖に向かって思いっきり投げて‼」
彼女の程の力があれば私を湖の底が深い場所まで投げ飛ばせるだろう。
「ゔぁ!?」
「いいから、やるの‼」
大猪のターゲットは私だけなのである。そして今までの行動から、大猪は例えそこに邪魔な障害物があろうともこの私を追いかけまわしてくるだろう。
そういうことならば、それをうまく利用する。
「ゔぅ…、ゔぁ‼」
どうなっても知らないぞ‼とでも言うようにアンは私のことを思いっきり湖へ投げ、同時に大猪が私めがけて突進してきていた。
「アン!?」
大猪の突進を食らってポリゴン化して砕け散るアンを視界に捕らえて私は空中で思わず叫ぶがすでに手遅れだった。次の瞬間、私は湖の丁度真ん中付近に着水し口から水をたらふく飲んでしまった。だが、そのおかげでアンがやられて真っ白になっていた頭を正気に戻すことが出来た。
大猪の方は湖にいる私を確認するとすごい勢いで水中に入っていった。
大分前ではあるがイノシシが泳いで渡ったというニュースを見たことがあった。だから例え私が水中にいようが追いかけてくる可能性があるのは分かっていた。
しかし、今私を追いかけている大猪はニュースで紹介されていた個体よりも遥かに大きく、重い。いくら湖とは言え脚を必死に動かして前に進むのがやっとのようである。
これを待っていた。
「『拘束の呪い』‼」
私も必死に片足をばたつかせながらナイフを構え、呪いを発動させる。
ナイフの先から飛び出した縄は先程と同じように大猪を拘束する。
ただし水中で、
「ブゴ!?ガボボ!?」
突然動きを制限された大猪は湖に沈んでいく、水中だから勝手が違うのか拘束を外そうとするもそれもうまくいかないようである。
あれよあれよという間に胴体が、頭が、最後に鼻が水中に沈んでいき、この後再び大猪が浮かんでくることはなかった。
『チャレンジ:怒れる大猪を達成しました。メニュー画面より報酬を確認してください。』
頭の中でそんな声が聞こえるがこちらも体力の限界である。
私も大猪同様に湖に沈み始める。
…来世はもっとモフモフを愛し、愛される存在になりたいな。
湖の底へ沈みながら、薄れゆく意識の中でそんなことを思っていると不意に私の右腕が引っ張られた。
「一体何考えてんのよお姉ちゃん!?」
私を水面に引っ張り出すために全身ずぶぬれになったフッカが叫んだ。
運のいいことにどうやら私は生き残ることが出来たらしい。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷
くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。
怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。
最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。
その要因は手に持つ箱。
ゲーム、Anotherfantasia
体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。
「このゲームがなんぼのもんよ!!!」
怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。
「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」
ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。
それは、翠の想像を上回った。
「これが………ゲーム………?」
現実離れした世界観。
でも、確かに感じるのは現実だった。
初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。
楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。
【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】
翠は、柔らかく笑うのだった。

Free Emblem On-line
ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。
VRMMO『Free Emblem Online』
通称『F.E.O』
自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。
ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。
そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。
なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。
ゾンビだらけの世界で俺はゾンビのふりをし続ける
気ままに
ホラー
家で寝て起きたらまさかの世界がゾンビパンデミックとなってしまっていた!
しかもセーラー服の可愛い女子高生のゾンビに噛まれてしまう!
もう終わりかと思ったら俺はゾンビになる事はなかった。しかもゾンビに狙われない体質へとなってしまう……これは映画で見た展開と同じじゃないか!
てことで俺は人間に利用されるのは御免被るのでゾンビのフリをして人間の安息の地が完成するまでのんびりと生活させて頂きます。
ネタバレ注意!↓↓
黒藤冬夜は自分を噛んだ知性ある女子高生のゾンビ、特殊体を探すためまず総合病院に向かう。
そこでゾンビとは思えない程の、異常なまでの力を持つ別の特殊体に出会う。
そこの総合病院の地下ではある研究が行われていた……
"P-tB"
人を救う研究のはずがそれは大きな厄災をもたらす事になる……
何故ゾンビが生まれたか……
何故知性あるゾンビが居るのか……
そして何故自分はゾンビにならず、ゾンビに狙われない孤独な存在となってしまったのか……
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!
あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~
深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公
じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい
…この世界でも生きていける術は用意している
責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう
という訳で異世界暮らし始めちゃいます?
※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです
※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています
VRゲームでも身体は動かしたくない。
姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。
古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。
身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。
しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。
当作品は小説家になろう様で連載しております。
章が完結次第、一日一話投稿致します。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる