28 / 33
27.
しおりを挟む
「ブゴオオォ‼」
やばい‼
「また来た‼二人ともお願い‼」
次の瞬間小山のような大猪が突進してきた。
その体毛は長い年月を生きたためなのか白く、触り心地はとても堅そうでラージットとはまた違った感触を楽しめそうだが、今はそんなことやっている場合ではない。
「ゔぁ…!」
「…ゔぅ!」
尖った牙を一本ずつアンとウンが抑え込むが、大猪の勢いを完全に抑えることはできず後ろに押されてしまう。
「はあ、はあ、『拘束の呪い』‼」
少々の体力を犠牲にして呪いを発動する。
ナイフの先から飛び出した縄は大猪を拘束した。
「ブゴ!?」
大猪は驚いたような声を上げる。しかし絡みついた縄は今にも千切れてしまいそうだ。
「ゔぁ‼」
「ゔぉ‼」
縄がまだ大猪を縛っているうちに双子は一撃ずつ大猪の胴体に攻撃を与える。
「ブゴォ‼」
大猪が縄を引きちぎるのと同時に双子は下がる。
そしてまた大猪が突っ込んでくるので同じ行動を繰り返す。
《チャレンジ難易度:★★★★☆》 怒れる大猪
先程拘束したウリ坊が引き金になってこの大猪が現れたのは確実だろう。そのウリ坊も既に自力で縄から脱出し何処かへ行ってしまったようだ。
…できることなら一撫でさせて欲しかった。
私たちが大猪と対峙して10分ほど経った。大猪の攻撃は今のところ突進とその場で暴れるという2パターンだけだったが、分厚い毛皮によってこちらからの攻撃が弾かれてしまうためあまり有効打を与えられない。そして近づすぎると暴れ、遠ざかると問答無用で突進してくるために手を出しにくい。
私たちに出来ることといえば一瞬大猪の動きを止めて攻撃をすることぐらいである。
だが、そのために必要な『拘束の呪い』には私の体力を使うので何度でもポイポイ放てるものではない。それに大猪も私の呪いに耐性が付き始めているのか、最初に呪いをかけたときと比べて拘束から逃れる時間が明らかに短くなっている。
要するにジリ貧なのである。
しかしこのまま大猪から背を向けて逃げ出しても追撃されて吹き飛ばされてしまうのは目に見えている。
しかも、問題はそれだけではない。
「ゔぁ…。」
「…ゔぉ。」
双子の声はいつもラージットを相手にしている時と違い、少し弱弱しい。
どうやら、アンとウンの体力も大猪の突進を受け止めるときに減らされてしまっているようだ。
通常、プレイヤーやテイムしたモンスターの体力は回復ポーションなどの体力を回復させるアイテムを使うか、「○○ヒール」などの体力を回復させる魔法を使って回復する。しかし、今現在私の使うことが出来る呪いは敵を拘束させるものと使いどころがいまいち分からないものの二つだけで、体力を回復させる呪いは今のところ使えない。
そのためこのまま大猪の体力を削ろうと思っても大猪よりも先に私の体力か双子の体力がなくなってしまうことは明らかだ。
一体どうすれば…、
デンワ‼ デンワ‼ デンワ‼
煩わしい音ともにウィンドウが開く。
ええい、やかま「ゔぉ‼」
ウンが声を上げるが遅かった。
視界が真っ白になったかと思うと私の身体は後方に吹き飛ばされた。一瞬のスキをついて大猪が私に突っ込んできたのだ。
「カハっ…」
痛みは制限しているのでそれほどでもないが腹の中にあった空気が口から一気に吐き出される。
「うぅ、生きてる。」
が、右足が動かない。痛みがないから分かりにくいがどうやら折れているようだ。
「ゔぁ、ゔぁ‼」
アンに抱えられて大猪の追撃を避ける。
しかしもうこれ以上さっきまでと同じことを繰り返しすことは不可能だ。
私は大猪の突進を許した原因のウィンドウを見る。
電話の主はフッカのようだ。もしかしたら湖の近くまでついたのかもしれない。
…そうだ、
「二人とも、湖まで戻るよ‼
アンは私をこのまま持って行って‼ウンは大猪の攻撃を受け流して‼」
ダメもとである。
私たちは来た道を戻る。
大猪との退却戦が始まった。
やばい‼
「また来た‼二人ともお願い‼」
次の瞬間小山のような大猪が突進してきた。
その体毛は長い年月を生きたためなのか白く、触り心地はとても堅そうでラージットとはまた違った感触を楽しめそうだが、今はそんなことやっている場合ではない。
「ゔぁ…!」
「…ゔぅ!」
尖った牙を一本ずつアンとウンが抑え込むが、大猪の勢いを完全に抑えることはできず後ろに押されてしまう。
「はあ、はあ、『拘束の呪い』‼」
少々の体力を犠牲にして呪いを発動する。
ナイフの先から飛び出した縄は大猪を拘束した。
「ブゴ!?」
大猪は驚いたような声を上げる。しかし絡みついた縄は今にも千切れてしまいそうだ。
「ゔぁ‼」
「ゔぉ‼」
縄がまだ大猪を縛っているうちに双子は一撃ずつ大猪の胴体に攻撃を与える。
「ブゴォ‼」
大猪が縄を引きちぎるのと同時に双子は下がる。
そしてまた大猪が突っ込んでくるので同じ行動を繰り返す。
《チャレンジ難易度:★★★★☆》 怒れる大猪
先程拘束したウリ坊が引き金になってこの大猪が現れたのは確実だろう。そのウリ坊も既に自力で縄から脱出し何処かへ行ってしまったようだ。
…できることなら一撫でさせて欲しかった。
私たちが大猪と対峙して10分ほど経った。大猪の攻撃は今のところ突進とその場で暴れるという2パターンだけだったが、分厚い毛皮によってこちらからの攻撃が弾かれてしまうためあまり有効打を与えられない。そして近づすぎると暴れ、遠ざかると問答無用で突進してくるために手を出しにくい。
私たちに出来ることといえば一瞬大猪の動きを止めて攻撃をすることぐらいである。
だが、そのために必要な『拘束の呪い』には私の体力を使うので何度でもポイポイ放てるものではない。それに大猪も私の呪いに耐性が付き始めているのか、最初に呪いをかけたときと比べて拘束から逃れる時間が明らかに短くなっている。
要するにジリ貧なのである。
しかしこのまま大猪から背を向けて逃げ出しても追撃されて吹き飛ばされてしまうのは目に見えている。
しかも、問題はそれだけではない。
「ゔぁ…。」
「…ゔぉ。」
双子の声はいつもラージットを相手にしている時と違い、少し弱弱しい。
どうやら、アンとウンの体力も大猪の突進を受け止めるときに減らされてしまっているようだ。
通常、プレイヤーやテイムしたモンスターの体力は回復ポーションなどの体力を回復させるアイテムを使うか、「○○ヒール」などの体力を回復させる魔法を使って回復する。しかし、今現在私の使うことが出来る呪いは敵を拘束させるものと使いどころがいまいち分からないものの二つだけで、体力を回復させる呪いは今のところ使えない。
そのためこのまま大猪の体力を削ろうと思っても大猪よりも先に私の体力か双子の体力がなくなってしまうことは明らかだ。
一体どうすれば…、
デンワ‼ デンワ‼ デンワ‼
煩わしい音ともにウィンドウが開く。
ええい、やかま「ゔぉ‼」
ウンが声を上げるが遅かった。
視界が真っ白になったかと思うと私の身体は後方に吹き飛ばされた。一瞬のスキをついて大猪が私に突っ込んできたのだ。
「カハっ…」
痛みは制限しているのでそれほどでもないが腹の中にあった空気が口から一気に吐き出される。
「うぅ、生きてる。」
が、右足が動かない。痛みがないから分かりにくいがどうやら折れているようだ。
「ゔぁ、ゔぁ‼」
アンに抱えられて大猪の追撃を避ける。
しかしもうこれ以上さっきまでと同じことを繰り返しすことは不可能だ。
私は大猪の突進を許した原因のウィンドウを見る。
電話の主はフッカのようだ。もしかしたら湖の近くまでついたのかもしれない。
…そうだ、
「二人とも、湖まで戻るよ‼
アンは私をこのまま持って行って‼ウンは大猪の攻撃を受け流して‼」
ダメもとである。
私たちは来た道を戻る。
大猪との退却戦が始まった。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷
くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。
怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。
最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。
その要因は手に持つ箱。
ゲーム、Anotherfantasia
体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。
「このゲームがなんぼのもんよ!!!」
怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。
「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」
ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。
それは、翠の想像を上回った。
「これが………ゲーム………?」
現実離れした世界観。
でも、確かに感じるのは現実だった。
初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。
楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。
【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】
翠は、柔らかく笑うのだった。

Free Emblem On-line
ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。
VRMMO『Free Emblem Online』
通称『F.E.O』
自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。
ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。
そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。
なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。
ゾンビだらけの世界で俺はゾンビのふりをし続ける
気ままに
ホラー
家で寝て起きたらまさかの世界がゾンビパンデミックとなってしまっていた!
しかもセーラー服の可愛い女子高生のゾンビに噛まれてしまう!
もう終わりかと思ったら俺はゾンビになる事はなかった。しかもゾンビに狙われない体質へとなってしまう……これは映画で見た展開と同じじゃないか!
てことで俺は人間に利用されるのは御免被るのでゾンビのフリをして人間の安息の地が完成するまでのんびりと生活させて頂きます。
ネタバレ注意!↓↓
黒藤冬夜は自分を噛んだ知性ある女子高生のゾンビ、特殊体を探すためまず総合病院に向かう。
そこでゾンビとは思えない程の、異常なまでの力を持つ別の特殊体に出会う。
そこの総合病院の地下ではある研究が行われていた……
"P-tB"
人を救う研究のはずがそれは大きな厄災をもたらす事になる……
何故ゾンビが生まれたか……
何故知性あるゾンビが居るのか……
そして何故自分はゾンビにならず、ゾンビに狙われない孤独な存在となってしまったのか……
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!
あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~
深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公
じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい
…この世界でも生きていける術は用意している
責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう
という訳で異世界暮らし始めちゃいます?
※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです
※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています
VRゲームでも身体は動かしたくない。
姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。
古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。
身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。
しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。
当作品は小説家になろう様で連載しております。
章が完結次第、一日一話投稿致します。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる