22 / 33
21.
しおりを挟む
骨が砕けたのではない。文字通り左腕の肘から先が陶器を床に落としたときのように砕けてしまったのだ。
「お姉ちゃん、大丈夫?」
「ゔぉー…?」
フッカがカプセルから出てきた盾の前面を布で注意深く覆いながら私の安否を確かめた。
ウンも心配そうに私の様子を伺ってくる。
アンは…。
「ゔぁー♪ゔぁー♪」
あ、だめだ。
レバーの先についた宝石に興味深々で私の腕が砕け散ったのに気づいていない。
「………うん、大丈夫。」
能天気なアンのおかげで少し冷静になれた。
幸いなことに戦闘中以外は痛覚を遮断していたために砕ける瞬間にも痛みはなかった。
もしも遮断していなかったら痛みのショックで強制ログアウトされていただろう。
私はなくなった左腕の断面を恐る恐るのぞいてみる。
断面はてっきり規制がはいるほどのグロ画像かと思ったがそうではなかった。
石だ。
私の腕は砕けた石造のように固くなんとも無機物的な表面をしていた。
「大丈夫なら良かったよ…。私のSSユニーク装備の最初の犠牲者がお姉ちゃんなんて嫌だしね。
それにしてもうわー、これが『石化』かぁ。初めて見た。
あ、腕の方は教会で治してもらえると思うから安心してね。」
前面を布で完全に覆われた盾を持ちながらフッカは感心したようにウンは恐る恐るといった感じで私の腕をのぞき込んだ。
君(ウン)はラージットの首を併記で捻じ曲げるんだからビビるなよ。
しかし、治るのか。
良かった。このまま腕なしでゲームはつらすぎる。
「その盾はいったい何なの?
『目』を合わせるとずーっと見てしまうし、おまけに『石化』?して腕がなくなったんだけど。」
「どうやらこの盾は『アイギスの盾』っていう名前で
盾を注視したものに『石化』の状態異常をかけるんだってさ、でも盾かぁ…。」
フッカはウィンドウを開いて盾の効果を確認しながら残念そうにつぶやいた。
「あら?人の腕が簡単に砕けるのに何かご不満でも?」
「いや、だって。今起きた事故を見る限り敵味方関係なく『石化』させちゃうから
パーティー行動に支障をきたすかもしれないじゃん?
それに、」
フッカは腰の両方に付けた剣を抜いた。
「私は二刀流の剣士、盾は持たないの。
あー、でも攻撃手兼盾職にもあこがれるしなー。
いい機会だし私も盾の才能をとろうかなぁ。」
でも器用貧乏になっちゃわないかなぁ、とフッカはぶつぶつと一人の世界に入ってしまった。
…それじゃあ私も引いてみようかな。
私は昨日洞窟で手に入れた石を取りだした。
おぉっと、片腕だと重い。
若干バランスを失いよろけてしまったが何とか台座に石を置くと、先程と同様にエメラルドグリーンに光りだす。
そしたらレバーをっと、
「やってみたいの?
いいよ。手前に引いてごらん。」
「ゔぁー♪」
アンが興味深そうに私の行動を見ていたのでレバー引かせてみることにした。
ウンは…、
「…ゔぉ。」
どうやらガチャガチャなぞ興味がないらしい。
早くここから出たくて少し不機嫌そうだ。
「ゔぁ!!
ゔぁーーー、ゔぁっ!!」
アンが思いっきりレバーを手前に引くとドラムロールとファンファーレが鳴り響いた。
ガチャガチャの方は金色だったのが急に銅色、銀色と変色して最終的に赤一色に染まった。
「お、ユニーク以上確定じゃん。
ラッキーだねお姉ちゃん。」
いつの間にか自分の世界から戻ってきたフッカが呟いた。
フッカの時と同様にガチャガチャの正面が開いて中から真っ赤なカプセルがコロンと転がると輝きだした。
光が収まるとカプセルのあった場所には古そうなナイフが一本置かれていた。
古そう、といっても昭和初期のもの~とかではない。
紀元前何年前と出てきそうな黒い石でできたナイフだ。
柄や鞘の類もないからそれは自分で用意する必要がありそうなのが金欠には痛いが…。
ウィンドウを開いてナイフの説明を読んでみる。
『古代のナイフ』
はるか以前に滅んだ文明で使われていたとされるナイフ。
呪術(まじない)や一部の奇跡の成功確率が大きく上昇する
いや、なにこれ。
「お姉ちゃん、大丈夫?」
「ゔぉー…?」
フッカがカプセルから出てきた盾の前面を布で注意深く覆いながら私の安否を確かめた。
ウンも心配そうに私の様子を伺ってくる。
アンは…。
「ゔぁー♪ゔぁー♪」
あ、だめだ。
レバーの先についた宝石に興味深々で私の腕が砕け散ったのに気づいていない。
「………うん、大丈夫。」
能天気なアンのおかげで少し冷静になれた。
幸いなことに戦闘中以外は痛覚を遮断していたために砕ける瞬間にも痛みはなかった。
もしも遮断していなかったら痛みのショックで強制ログアウトされていただろう。
私はなくなった左腕の断面を恐る恐るのぞいてみる。
断面はてっきり規制がはいるほどのグロ画像かと思ったがそうではなかった。
石だ。
私の腕は砕けた石造のように固くなんとも無機物的な表面をしていた。
「大丈夫なら良かったよ…。私のSSユニーク装備の最初の犠牲者がお姉ちゃんなんて嫌だしね。
それにしてもうわー、これが『石化』かぁ。初めて見た。
あ、腕の方は教会で治してもらえると思うから安心してね。」
前面を布で完全に覆われた盾を持ちながらフッカは感心したようにウンは恐る恐るといった感じで私の腕をのぞき込んだ。
君(ウン)はラージットの首を併記で捻じ曲げるんだからビビるなよ。
しかし、治るのか。
良かった。このまま腕なしでゲームはつらすぎる。
「その盾はいったい何なの?
『目』を合わせるとずーっと見てしまうし、おまけに『石化』?して腕がなくなったんだけど。」
「どうやらこの盾は『アイギスの盾』っていう名前で
盾を注視したものに『石化』の状態異常をかけるんだってさ、でも盾かぁ…。」
フッカはウィンドウを開いて盾の効果を確認しながら残念そうにつぶやいた。
「あら?人の腕が簡単に砕けるのに何かご不満でも?」
「いや、だって。今起きた事故を見る限り敵味方関係なく『石化』させちゃうから
パーティー行動に支障をきたすかもしれないじゃん?
それに、」
フッカは腰の両方に付けた剣を抜いた。
「私は二刀流の剣士、盾は持たないの。
あー、でも攻撃手兼盾職にもあこがれるしなー。
いい機会だし私も盾の才能をとろうかなぁ。」
でも器用貧乏になっちゃわないかなぁ、とフッカはぶつぶつと一人の世界に入ってしまった。
…それじゃあ私も引いてみようかな。
私は昨日洞窟で手に入れた石を取りだした。
おぉっと、片腕だと重い。
若干バランスを失いよろけてしまったが何とか台座に石を置くと、先程と同様にエメラルドグリーンに光りだす。
そしたらレバーをっと、
「やってみたいの?
いいよ。手前に引いてごらん。」
「ゔぁー♪」
アンが興味深そうに私の行動を見ていたのでレバー引かせてみることにした。
ウンは…、
「…ゔぉ。」
どうやらガチャガチャなぞ興味がないらしい。
早くここから出たくて少し不機嫌そうだ。
「ゔぁ!!
ゔぁーーー、ゔぁっ!!」
アンが思いっきりレバーを手前に引くとドラムロールとファンファーレが鳴り響いた。
ガチャガチャの方は金色だったのが急に銅色、銀色と変色して最終的に赤一色に染まった。
「お、ユニーク以上確定じゃん。
ラッキーだねお姉ちゃん。」
いつの間にか自分の世界から戻ってきたフッカが呟いた。
フッカの時と同様にガチャガチャの正面が開いて中から真っ赤なカプセルがコロンと転がると輝きだした。
光が収まるとカプセルのあった場所には古そうなナイフが一本置かれていた。
古そう、といっても昭和初期のもの~とかではない。
紀元前何年前と出てきそうな黒い石でできたナイフだ。
柄や鞘の類もないからそれは自分で用意する必要がありそうなのが金欠には痛いが…。
ウィンドウを開いてナイフの説明を読んでみる。
『古代のナイフ』
はるか以前に滅んだ文明で使われていたとされるナイフ。
呪術(まじない)や一部の奇跡の成功確率が大きく上昇する
いや、なにこれ。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷
くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。
怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。
最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。
その要因は手に持つ箱。
ゲーム、Anotherfantasia
体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。
「このゲームがなんぼのもんよ!!!」
怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。
「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」
ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。
それは、翠の想像を上回った。
「これが………ゲーム………?」
現実離れした世界観。
でも、確かに感じるのは現実だった。
初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。
楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。
【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】
翠は、柔らかく笑うのだった。

Free Emblem On-line
ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。
VRMMO『Free Emblem Online』
通称『F.E.O』
自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。
ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。
そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。
なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?
ゾンビだらけの世界で俺はゾンビのふりをし続ける
気ままに
ホラー
家で寝て起きたらまさかの世界がゾンビパンデミックとなってしまっていた!
しかもセーラー服の可愛い女子高生のゾンビに噛まれてしまう!
もう終わりかと思ったら俺はゾンビになる事はなかった。しかもゾンビに狙われない体質へとなってしまう……これは映画で見た展開と同じじゃないか!
てことで俺は人間に利用されるのは御免被るのでゾンビのフリをして人間の安息の地が完成するまでのんびりと生活させて頂きます。
ネタバレ注意!↓↓
黒藤冬夜は自分を噛んだ知性ある女子高生のゾンビ、特殊体を探すためまず総合病院に向かう。
そこでゾンビとは思えない程の、異常なまでの力を持つ別の特殊体に出会う。
そこの総合病院の地下ではある研究が行われていた……
"P-tB"
人を救う研究のはずがそれは大きな厄災をもたらす事になる……
何故ゾンビが生まれたか……
何故知性あるゾンビが居るのか……
そして何故自分はゾンビにならず、ゾンビに狙われない孤独な存在となってしまったのか……
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!
あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~
深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公
じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい
…この世界でも生きていける術は用意している
責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう
という訳で異世界暮らし始めちゃいます?
※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです
※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる