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「さあ、ここがダンジョンの最奥だよ。」
なんでダンジョンのゴールがもうすぐなのに休憩の必要があるのか分からなかったが、道のりがえげつないほどキツからだコレ。
今までは最低でも大型バスが二台余裕で通行できるような空間を歩いてきた。
しかし、休憩後は這いつくばらなければ通り抜けられないような隙間や岩肌に体を押し付けてやっと通れる場所、果てには先に進むには一度頭まで潜らないといけない水だまりを通ってきた。
幸い、ムカデと出会うことはなかったけど自分でもなんでここまで来れたのか不思議なくらいキツかった。だが、百歩譲ってここまでの道のりについてはまだ許そう。しかし、
「ダンジョンのくせになんで宝箱が一つもないのよ…。」
ここまでの道中、換金できるものと言えばムカデが落とす素材ばかりで他に何かお金になりそうなものを見つけることができなかった。
「え?洞窟に宝箱があるわけないじゃん。」
フッカがさも当たり前と言った風にこちらを見た。
それならこの洞窟にある消えない松明も、結構な頻度で襲ってくるムカデもあるわけな…いや、やめよう。別にフッカが悪いわけじゃない。こんなダンジョンを作ったゲーム製作者側の問題だ。
レビューで最低評価をつけてやろうかな
「お姉ちゃんが何を考えているのか分からないけど、ここのダンジョンは現実と違って洞窟に入るのにガイドも特別な許可もいらないから本格的な洞窟探検をしたいって人達に人気なんだよ?
…まあ、ほとんどが途中でムカデに殺されちゃったり遭難してリタイアするらしいけど。」
ほぉ、そんな物好き
…いや、楽しみ方もあるんだ。
「ま、まあ。あとは取るもん取って脱出するだけだから。
それに…、楽しかったでしょ?」
フッカは私の顔を覗き込んだ。その目は少し不安げである。
あ~、なるほど。フッカはフッカなりに私にこのゲームはモフモフ意外にも楽しいことがいっぱいあるってことを教えたかったのだろう。
確かに、こんな洞窟の中を探検するようなことはこれまでの人生の中で一度も無かったし、テレビ番組の特番みたいな体験が簡単にできるっていうのはかなり魅力的なことなのかもしれない。
ただ、
「そうね…。ムカデが私ばっかり狙ってくるのは気に入らないけど楽しかったよ。ありがとう」
楽しくなかった、と言うと嘘になる。
「プッ、何それ?
でも、楽しかったんなら良かった。」
ホッと安心したのかフッカは安堵の笑みを浮かべた。
「そういえばここには一体何があるの?
隠し扉とか洞窟には無いだろうし、」
「そこの壁、色が他の場所と少しだけ明るい色の所があるでしょ?
あそこに斡旋所が欲しがってる鉱物が埋まってて、それを掘り起こしたら入り口まで転送されるポータルが現れるの。」
フッカが指をさした壁をみると、なるほど。たしかにほかの岩肌と比べて色が少しだけ明るい。
でもこんなの言われないと気付かないと思うんだけど。
「因みに掲示板とか見てるとここまで来て埋まってる場所がわからなくて自力で入り口まで戻ったっていうプレイヤーが結構数いるらしいんだよね...。」
うわ、かわいそう。でも私なら帰りもあの道を行くならこのまま教会の棺桶に転送された方が良いのでは無いかと思うが。
「フッカちゃん、お義母さんもどうしたんですか~?
はやいところガチャ石を取って帰りましょうよ~。」
マーレが私とフッカを呼んだ…、
ん、ガチャ?
「そういえば言ってなかったけどこのダンジョンの報酬は色んなものが当たるガチャガチャを無料で引けるガチャ券なんだ。それと引き換えになる石だからガチャ石って呼ばれてるんだよね。」
ガチャ?もらえるのは……、アイテム?
「あ、ただのアイテムじゃ無いよ?
そりゃもちろんガチャガチャだからティッシュみたいな残念なものも出るけど、中には世界でただ一つみたいな珍しい武器やらアイテムも出るんだから。
ドウへ行きたいお姉ちゃんには運が良ければ戦力を増やすことができるチャンスなんじゃ無いかな?」
う、うーん。フッカも私のことを考えてここにしてくれたのかな?
いや、そうに違いない。実の妹だ、まさかガチャを引きたいがために私にここまでこさせた訳ではなかろう…。
「いやー、でも一回のガチャで10万クレジットとかあり得ないよねー、課金でクレジットと交換出来ないし。だから無料券を取れるこのダンジョンはありがたいんだけどパーティー限定だから誰かと一緒じゃ無いといけないんだよね。でも道がキツいからって友達も一緒に行ってくれないし…。」
…これは、やっぱりガチャを引きたかっただけなのでは無いか?
妹に対する疑心を持ちながら私は石を採取すると近くの地面が光り出した。おそらくアレが帰還用のポータルなんだろう。
「いや~、何が出るか楽しみだね。
こう言うガチャはやればやるほどレアアイテムが出たりするからやめられないね‼︎またガチャ石取りに行こっか‼︎」
フッカの誘いを丁重に断りながら私たち一行はポータルを通り帰路に着いた。
なんでダンジョンのゴールがもうすぐなのに休憩の必要があるのか分からなかったが、道のりがえげつないほどキツからだコレ。
今までは最低でも大型バスが二台余裕で通行できるような空間を歩いてきた。
しかし、休憩後は這いつくばらなければ通り抜けられないような隙間や岩肌に体を押し付けてやっと通れる場所、果てには先に進むには一度頭まで潜らないといけない水だまりを通ってきた。
幸い、ムカデと出会うことはなかったけど自分でもなんでここまで来れたのか不思議なくらいキツかった。だが、百歩譲ってここまでの道のりについてはまだ許そう。しかし、
「ダンジョンのくせになんで宝箱が一つもないのよ…。」
ここまでの道中、換金できるものと言えばムカデが落とす素材ばかりで他に何かお金になりそうなものを見つけることができなかった。
「え?洞窟に宝箱があるわけないじゃん。」
フッカがさも当たり前と言った風にこちらを見た。
それならこの洞窟にある消えない松明も、結構な頻度で襲ってくるムカデもあるわけな…いや、やめよう。別にフッカが悪いわけじゃない。こんなダンジョンを作ったゲーム製作者側の問題だ。
レビューで最低評価をつけてやろうかな
「お姉ちゃんが何を考えているのか分からないけど、ここのダンジョンは現実と違って洞窟に入るのにガイドも特別な許可もいらないから本格的な洞窟探検をしたいって人達に人気なんだよ?
…まあ、ほとんどが途中でムカデに殺されちゃったり遭難してリタイアするらしいけど。」
ほぉ、そんな物好き
…いや、楽しみ方もあるんだ。
「ま、まあ。あとは取るもん取って脱出するだけだから。
それに…、楽しかったでしょ?」
フッカは私の顔を覗き込んだ。その目は少し不安げである。
あ~、なるほど。フッカはフッカなりに私にこのゲームはモフモフ意外にも楽しいことがいっぱいあるってことを教えたかったのだろう。
確かに、こんな洞窟の中を探検するようなことはこれまでの人生の中で一度も無かったし、テレビ番組の特番みたいな体験が簡単にできるっていうのはかなり魅力的なことなのかもしれない。
ただ、
「そうね…。ムカデが私ばっかり狙ってくるのは気に入らないけど楽しかったよ。ありがとう」
楽しくなかった、と言うと嘘になる。
「プッ、何それ?
でも、楽しかったんなら良かった。」
ホッと安心したのかフッカは安堵の笑みを浮かべた。
「そういえばここには一体何があるの?
隠し扉とか洞窟には無いだろうし、」
「そこの壁、色が他の場所と少しだけ明るい色の所があるでしょ?
あそこに斡旋所が欲しがってる鉱物が埋まってて、それを掘り起こしたら入り口まで転送されるポータルが現れるの。」
フッカが指をさした壁をみると、なるほど。たしかにほかの岩肌と比べて色が少しだけ明るい。
でもこんなの言われないと気付かないと思うんだけど。
「因みに掲示板とか見てるとここまで来て埋まってる場所がわからなくて自力で入り口まで戻ったっていうプレイヤーが結構数いるらしいんだよね...。」
うわ、かわいそう。でも私なら帰りもあの道を行くならこのまま教会の棺桶に転送された方が良いのでは無いかと思うが。
「フッカちゃん、お義母さんもどうしたんですか~?
はやいところガチャ石を取って帰りましょうよ~。」
マーレが私とフッカを呼んだ…、
ん、ガチャ?
「そういえば言ってなかったけどこのダンジョンの報酬は色んなものが当たるガチャガチャを無料で引けるガチャ券なんだ。それと引き換えになる石だからガチャ石って呼ばれてるんだよね。」
ガチャ?もらえるのは……、アイテム?
「あ、ただのアイテムじゃ無いよ?
そりゃもちろんガチャガチャだからティッシュみたいな残念なものも出るけど、中には世界でただ一つみたいな珍しい武器やらアイテムも出るんだから。
ドウへ行きたいお姉ちゃんには運が良ければ戦力を増やすことができるチャンスなんじゃ無いかな?」
う、うーん。フッカも私のことを考えてここにしてくれたのかな?
いや、そうに違いない。実の妹だ、まさかガチャを引きたいがために私にここまでこさせた訳ではなかろう…。
「いやー、でも一回のガチャで10万クレジットとかあり得ないよねー、課金でクレジットと交換出来ないし。だから無料券を取れるこのダンジョンはありがたいんだけどパーティー限定だから誰かと一緒じゃ無いといけないんだよね。でも道がキツいからって友達も一緒に行ってくれないし…。」
…これは、やっぱりガチャを引きたかっただけなのでは無いか?
妹に対する疑心を持ちながら私は石を採取すると近くの地面が光り出した。おそらくアレが帰還用のポータルなんだろう。
「いや~、何が出るか楽しみだね。
こう言うガチャはやればやるほどレアアイテムが出たりするからやめられないね‼︎またガチャ石取りに行こっか‼︎」
フッカの誘いを丁重に断りながら私たち一行はポータルを通り帰路に着いた。
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