14 / 33
13.
しおりを挟むアリサさんはまだ業務中ということ(私が掃除してた時は確実にサボっていたけどね)なので屋敷の前で別れることにした。
「後日でいいので斡旋所でアンちゃんとウンちゃんの『使役獣登録』をお願いしますね。
その時は私の名前を出していただければすぐに登録してあげますので絶対に私の名前を出して下さいね?」
ゲームの世界にも面倒臭そうな登録作業があるとは...。
アリサさんを見送りながらそんなことを考えているとフッカが私に声をかけてきた。
「そういえばお姉ちゃんって獣系の魔物とモフモフしたいから『TWO』を始めたんだよね?
これからどうするの?」
その声は少し心配そうな声で、まるで私がこのゲームをやめるのを危惧しているかのようだ。
「ん~、まずは『使役系』の才能を取り直さないといけないからアリサさんの言っていたドウって街に行ってみようかなぁ。
でもドウへの行き方なんて分からないから、まずは情報収集かな?」
ん?ていうか
「フッカはドウの街について何か知らないの?
ベータでは有名人だったんでしょ?」
「いや、有名人だったから何でも知っているとは限らないからね?
まあでも、ここからドウへ向かうルートとかは知ってるけど。」
ただ、と言ってフッカは私に向かって指を指す。
「この世界では情報っていうのはそれだけで価値なの。
『モノからドウへの行き方』っていう情報を知りたいならそれ相応のお金だったり情報と交換じゃないと。」
ええ、それってつまり?
「お姉ちゃんの『死霊術』の才能と双子の屍人について調べさせて。」
これはなんとも面倒くさそうなものを要求されてしまった。
_________________________________________________________
「よし、次はあの子達にしよう。」
ちょうど数10メートル先で2羽のラージットが草を食んでいるのを見つけたフッカは私、いや双子に指示を出した。
「「ゔぉー、.....ゔぁ。」」
指示されたアンとウンは1羽づつラージットにゾンビのイメージとはかけ離れたスピードで接近していった。
私と双子はフッカの『調査』という名目で泣く泣くラージット達を狩っていた。
『死霊術』に才能が変化したとしてもモフモフと仲良くなることを目的にこのゲームを始めた私にとってモフモフをモフリ倒すならばまだしも暴力的な行動をするなど本当は嫌だ。そこでフッカにスライムではどうか(見た目がモフモフじゃないから倒せる)と提言してみたところ
「雑魚だから実力を測れないし、金にならないから」
という理由で却下された。
まあ、ラージット達も今は仲間にすることも出来ないし、他のプレイヤーのように多少暴力的な行動をしても多めに見てくれるだろう(と祈る)
閑話休題
「....ゔぁ!!」
バキョッ!!
アンのシュートキックで白に黒のブチ模様をしたラージットは近くにあった岩まで吹き飛び動かなくなるとアイテムに変化した
「ゔぉー!!」
コキンッ!!
一方ウンが掴んでいた黒と白のブチ模様のラージットは小気味いい音とともに首がありえない角度にねじ曲がりこれもまたアイテムに変化した。
アンとウンであるが、凄く強い。
私がラージットと戦う時は初心者用ナイフを使って何度も攻撃をしてやっと倒せる(偶に自分が殺される)のに対してアンとウンは大体一発でラージットを屠ってしまう。
あの友達になれなかったラージット達との死闘は一体何だったのだろうか......。
私は2人が倒したラージットから出たアイテムを回収しながらしみじみと思った
「で、知りたいことは分かったの?」
「ゔぁ...?」
「ゔぉー?」
いや、君たちに聞いてないしそんな可愛らしく首を傾けられても...。
「ん~、私がベータのダンジョンで見た屍人ってもっと相手を貪り食うような感じで攻撃してくるんだけど随分違うよね。
それに二人ともラージットを倒すやり方が違うからステータスが少し違うのかも?」
双子の戦闘の様子を撮影したビデオを眺めながらフッカは考えるように言った。
ああ、確かに。言われてみれば、ステータス?性格が二人とも違うかも?
私とフッカは原っぱにポツンと一本生えている木の下で休憩しながら双子の様子をそっと観察した。
「.....ゔぁ」
アンは飛んでいる蝶々を追いかけて木の近くをグルグルと回り続けている事から好奇心旺盛なんだと思う。ただ、ゾンビに好奇心というか感情があるのか定かではない。
「ゔぉー」
一方ウンは私から少し離れた所に座り込んでボーっと木の枝を見つめているがたまに私の方をチラッと見てくる。もしかしたら少し人見知りでまだ出会ったばかりの私を警戒しているのかもしれない。
ただ、ゾンビに人見知りという(以下略)
他にもラージットとの闘い方もアンは力に任せた渾身の一振りでラージットを屠るのに対し、ウンの方はラージットの首を捻り骨を折って倒すのがお気に入りっぽい。
フッカの言っているステータスとかはよく分からないが、ラージットを倒す時は2人ともほぼ同じやり方だったからなんとなく双子でも細かい所に違いがあるようだ。
「まあ、とにかくこの子たちがとっても珍しいモンスターってことは確かね。
後は『死霊術』の才能についてもっと教えてくれれば満足ね。」
満足って、そもそもネットで調べたり他の『死霊術』の才能を持っているプレイヤーに聞いてみればいいんじゃない?と私はフッカに尋ねた(ていうか、ドウへの行き方もフッカではなくネットで調べればいいんじゃ?)
するとフッカは首を横に振った
「実はね、『死霊術』っていう才能は私でも初めて見る才能だし
多分このゲームのプレイヤーの中でお姉ちゃんが初めて手に入れた才能だと思う。」
はい?
「だってさ、この近くに屍人みたいな不死系のモンスターは出てこないし、『使役系』の才能を取った人って基本的にここらへんでラージットかスライムをテイムして『テイマー』に才能が成長しちゃうからモノの街では『死霊術』はどうしたって取れないんだよ。」
え、でも私は現に...あ、私テイムした|双子《アンとウン》は『れあ』とか言っていたな
「だから誰もお姉ちゃんの才能について知らない。お姉ちゃんもまだ分からないと思う。
だけどこれから色々やっていくうちに段々分かっていくと思うからそしたら教えてね?」
じゃあ、ドウへの行き方を教えるね。
そう言うとフッカはドウへの詳しい行き方を教えてくれた。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷
くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。
怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。
最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。
その要因は手に持つ箱。
ゲーム、Anotherfantasia
体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。
「このゲームがなんぼのもんよ!!!」
怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。
「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」
ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。
それは、翠の想像を上回った。
「これが………ゲーム………?」
現実離れした世界観。
でも、確かに感じるのは現実だった。
初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。
楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。
【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】
翠は、柔らかく笑うのだった。

Free Emblem On-line
ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。
VRMMO『Free Emblem Online』
通称『F.E.O』
自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。
ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。
そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。
なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。
ゾンビだらけの世界で俺はゾンビのふりをし続ける
気ままに
ホラー
家で寝て起きたらまさかの世界がゾンビパンデミックとなってしまっていた!
しかもセーラー服の可愛い女子高生のゾンビに噛まれてしまう!
もう終わりかと思ったら俺はゾンビになる事はなかった。しかもゾンビに狙われない体質へとなってしまう……これは映画で見た展開と同じじゃないか!
てことで俺は人間に利用されるのは御免被るのでゾンビのフリをして人間の安息の地が完成するまでのんびりと生活させて頂きます。
ネタバレ注意!↓↓
黒藤冬夜は自分を噛んだ知性ある女子高生のゾンビ、特殊体を探すためまず総合病院に向かう。
そこでゾンビとは思えない程の、異常なまでの力を持つ別の特殊体に出会う。
そこの総合病院の地下ではある研究が行われていた……
"P-tB"
人を救う研究のはずがそれは大きな厄災をもたらす事になる……
何故ゾンビが生まれたか……
何故知性あるゾンビが居るのか……
そして何故自分はゾンビにならず、ゾンビに狙われない孤独な存在となってしまったのか……
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!
あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~
深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公
じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい
…この世界でも生きていける術は用意している
責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう
という訳で異世界暮らし始めちゃいます?
※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです
※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています
VRゲームでも身体は動かしたくない。
姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。
古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。
身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。
しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。
当作品は小説家になろう様で連載しております。
章が完結次第、一日一話投稿致します。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる