仮想空間のなかだけでもモフモフと戯れたかった

夏男

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居間を掃除する前に資料に目を通したけど確か棚を触ると毒針が飛んでくる罠とかある床板を踏むと火柱が上がって踏んだ人を丸こげにする罠のことは書いてあったけどこんな落とし穴があるなんて書いて無かった筈だ。ひょっとしたらこの館の新しい罠を発見したのかもしれない。


全く嬉しくはないけど


急勾配の穴の中を猛スピードで滑り降りている私は一瞬このまま底まで落ちていくのかと不安にかられたが穴は緩やかに平らになっていき、最終的に私は硬い地面にお尻から投げ出された。


「いったー…くない?」


床は硬い石だたみでできており本来ならお尻が割れるばかりの痛みに襲われそうなところだけど不思議と痛みは無かった。やはりゲームの中だからだろうか?


それにしてもここは一体どこだろう?身体に付いた煤や埃を払いながら私は当たりを見回すが暗すぎて何も見えない。


もしかして閉じ込められた?
そういえばあるゲームでは壁があるのにすり抜けてゲームの裏世界に入っちゃうって事件があったような。

確かゲームの販売元がそのプレイヤーをゲーム内で見つけるまで3日かかりその間真っ暗で何もない空間をただただ落ち続けたとか…


と、とりあえず今自分の持ち物とできることは何かを確認してそのあと行動に移そう。


メニューは…開けるね。ログアウトも問題なくできるようだ。最悪ゲームの中の身体を捨てて現実に戻ることはできるようだ。しかもゲーム内の回線も繋がっているから万が一の時は知り合い、まあアドレスを知っているのがフッカだけだからフッカにしか連絡できないんだけど。


もしもこんな状況をフッカに見られたら絶対に笑われて黒歴史になる事間違い無いわね…。


うん、知り合いフッカに連絡するのは最終手段にしよう。



さてと、暗い空間に一人ぼっちという状況は変わらないけど本当に最悪な状況では無さそうだ。

よし、今度は今持っているものをチェックする前に明かりを確保しよう。確か地下室を掃除するために渡されたマッチと蝋燭をポーチの中に入れていたはず。

私は手探りでポーチの中を探るとすぐにマッチ箱と蝋燭を見つけることができた。マッチを擦りパパッと蝋燭に火を移すと僅かながら明かりを確保することができた。


うん、明かりがあるだけで落ち着く。
他に持っているものは…、いつもラージットをテイムする時に使っている初心者ナイフとさっき脱いだペストマスク、後は暖炉から落ちていた時に持っていた小さい箒と塵取りだけかぁ。


箒は燃やせば松明の代わりになるかもしれないけど一体これでどうしろと?


まあ、明かりのお陰で多少なりともこの部屋を見ることができるしちょっと調べてみますか…って



「え、なにこれは…。」


思わず口に出てしまった。
それもそのはず、蝋燭の明かりで僅かにだが見ることのできたそれは黒い大きな棺だったからだ。
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