ヒメゴト

四季凪 牡丹

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アラーム

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″明日からモニコして″

″えっ、モニコとは…なんぞや?″

中学校3年の秋から付き合っている彼氏との
休日デートの帰り道に言われた言葉。

″試合前だから朝練頑張りたくてモニコして
欲しいんだ。モーニングコール6時半頃に″

″私も早起き得意じゃないんだけどなぁー。″

別れ際にぎゅーをしながら言われてしまうと
断りたい反面、簡単に受け入れてしまう自分に
自己嫌悪。
寝る前にアラームをセットする。
6時。6時5分。6時10分。6時15分。
小刻みに時間を刻む。
だって、学校は別々だから少しでも可愛い声で
電話したい。
寝起きの声なんてブサイク丸出しだから。

″おはよう。6時半だよ。
おーきーてー!おきて朝練がんばって!″

″ゔぅ…おはよぉー、、、。″

″こら!寝るなー。起きろー!″

″後5分、、。″

″モニコの意味ないじゃん!?
あー、もう5分後にまたかけるからね!!?″

″改めておはよう?
起きた??″

″ん、起きた。ありがとう。がんばる。″


寝起き特有の貴方の舌足らずな口調。
嫌いじゃなかった。
けど、今はモーニングコールすることはない。
高校2年の夏休み前に会ったのが最後のデート
貴方は私を抱きしめながら言ったんだ。

″ごめん。今でも好きだけど学校で好きな子が
出来たから別れて欲しい。大事だけどその子を
1番に大事にしたいんだ。″

一瞬、何を言っているんだと思った。
私はいつも通り可愛いと言ってほしくて精一杯のおしゃれをしていたけど、あれ今日言われてない?そういえば彼は今日ずっと言いかけて飲み込んだ言葉がいくつあった?どうしたの?って私が聞いても″なんでもない。″って不器用に笑っていたのはこれが理由なの?嫌だ。
抱き締めるならいつも通り優しくぎゅーしてほしい。強く、これが本当に最後みたいに抱きしめないで。

″一途で居たいから。別れてほしい。″

″それは、私も同じだよ。
一途で居たいから。好きだから、まだ付き合ってないんでしょ?キープでもいいよ??″

何を言っているんだろう。
キープなんて2番手なんて嫌だ。1番に愛されたい。けど、どうやったら彼を繋ぎ止めることが出来るのか私にはわからないんだもん。

″ごめん。俺は俺に正直でいたい。″

″人の顔を見ずに言うなんて卑怯者じゃん。
馬鹿。クズ。最低。″

私のこどもみたいな罵倒に彼はうん。と小さく
相槌を打つだけだった。

″わかった。もう知らない。
こんなこと言うのも思うのもはじめてだよ。
多分、2度と言わないから。
【学校が別々で良かった。】″


顔を上げて言った。言ってやった。
なんでだよ。なんで貴方の方がつらそうな顔をするの?したいのは私の方だよ。
瞳を揺らす貴方を見ながら抱きしめられている腕から抜け出して軽くとん。と押した。

″じゃあね。今までありがとう!″

そう言って全力で走った。
笑ったけど笑えてたかな?泣いてたかも。
けど、知らない。後ろで何かを叫んでる声が
聞こえたけど知らない。何も知らない。
一方的に言われたのなら一方的に返してやる。

そんな公衆の面前で派手にやらかしてから
1年経ったけど私は相変わらず6時半に起きている。7時にアラームセットしているにも関わらず毎日決まった時間に起きてしまうのだ。
もう、モーニングコールなんて必要ないのに

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