上 下
6 / 14

きっかけ

しおりを挟む
時が過ぎるのも早く立花センセイが来てから早1週間が経とうとしていた。
「はーい。みなさん、もう私が言ったことなどお忘れでしょうが!進路希望を書いてもらうよ!」

高らかに流花ちゃん先生が可愛らしく時として残酷に告げた。やばい、まともに考えてない。焦る私に奏も頭を抱えていた。
「やだよぉー。まだ、進路とか考えたくないよ!」

わかる。すっごくわかる。進路とかボイコットしたい。みんなが嘆いているとひと声
「もう!みんな遅かれ早かれ通る道なんだから。プリント配るから後ろに回してねー。後、このクラスは2段階に分けて進路希望の面談をするよ!私と立花センセイの二人でお得だぞー。現役の大学生活も聞けちゃうんだから。」

その言葉に沈みかけていた私の気持ちが
驚きと戸惑いで複雑なまま反応した。
「前もって考えているハズだから立花センセイの期間も考慮して2日後で面談します。」
言い切った。意外に早い。流花ちゃんの鬼
それにしてもどうしようかな。
特にやりたい事もないけど、就職とか想像できない。

‥‥

色々な感情がありつつもとうとう面談の日になった。がらっと戸を開けると予告通り
立花センセイが座っていた。
「じゃあ、香坂さん進路相談しようか。
別に緊張しなくてもいいからね。ただの
世間話するようなかんじだから」

あまりにも自然に笑う立花センセイに
ついこちらもふにゃと笑ってしまった。
表情筋、今だけ死んでくれ。ふと、千鶴先生に言われた恋煩いという言葉を思い出し
急に頰をつねた私に立花センセイはきょとんとしていた。
「えっと、俺も変顔した方がよかったりする?」
違うんです。変顔じゃないんです。
己との戦いです。自分でもよくわからず
早口で告げた。

「うん。じゃあ、気を取り直して始めるね
香坂さんまず、事前に集めた希望だけど
白紙のままなのはなんで?」
冷静さを少し取り戻した私は質問に対して
「だって、まだ進路とかわからないですし
今以外の自分が全然想像できなくって…。
どちらかというと大学には行きたいですけど、妥協ってどうなのかな。とか色々です。」
自分でも情けないくらい弱気になっていた
「うーん。その気持ちはわかるよ。
俺も実は大学に進もうとかそんな事は考えていなかった。逆に就職も視野に入れてなかったから、香坂さんがどう思っているかはわからないけど結構テキトーだった。
けど、俺には好きなことがあったから他に
何かを選ぶとしたらその道が大学だったんだ。」

「立花さんの何かってなんですか」

「俺にとっての何かは誰かに何かを伝えて一緒に最後まで理解していくこと。独特な言い回し方になっちゃってるけど、簡潔に言うと人に教える事が好きでその好きなことを仕事にできたら。って思ったんだ。読書は好きだし短期で家庭教師をやった事が最大のきっかけだね。自分が教えていた子が点数が上がった!って喜んでくれてた時は俺も嬉しかったからね。意外と本当に些細な事が大きなきっかけになったりするから。香坂さんは?何かあるかな。」

立花さんの実体験を聞いて私はそれなら
大学生になってから進路を決めるのは逃げになってしまうのでは。と思ってしまった
こんなにも夢に向かって現実的な立花さんと比べると惨めにもなってきた。
黙っている私に立花さんは続けて言ってきた。
「香坂さんは考えすぎな部分があるのかもね。あれから天音凌の本は読んでる?」
急に話題を変えられて明らかに気を使わせてしまったと思いながらも私は口を開いた
「読んでます。いつもよりはゆっくりですけど、それでも大好きな作家なので大切に読んでいます。」

「そっか。俺もまだ読み途中だけど今度
感想を言い合えたらいいね。」

立花さんが、笑うとこっちまでつい笑みが溢れてしまう。この時の私にはまだ名前の知らないくすぐったい感情だった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

人違いラブレターに慣れていたので今回の手紙もスルーしたら、片思いしていた男の子に告白されました。この手紙が、間違いじゃないって本当ですか?

石河 翠
恋愛
クラス内に「ワタナベ」がふたりいるため、「可愛いほうのワタナベさん」宛のラブレターをしょっちゅう受け取ってしまう「そうじゃないほうのワタナベさん」こと主人公の「わたし」。 ある日「わたし」は下駄箱で、万年筆で丁寧に宛名を書いたラブレターを見つける。またかとがっかりした「わたし」は、その手紙をもうひとりの「ワタナベ」の下駄箱へ入れる。 ところが、その話を聞いた隣のクラスのサイトウくんは、「わたし」が驚くほど動揺してしまう。 実はその手紙は本当に彼女宛だったことが判明する。そしてその手紙を書いた「地味なほうのサイトウくん」にも大きな秘密があって……。 「真面目」以外にとりえがないと思っている「わたし」と、そんな彼女を見守るサイトウくんの少女マンガのような恋のおはなし。 小説家になろう及びエブリスタにも投稿しています。 扉絵は汐の音さまに描いていただきました。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる

Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。 でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。 彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

Leaving Strawberry

相沢 朋美
恋愛
女子大に通いながら同年代の女性が多い職場でアルバイトしている女子大生・侑。あまりにも出会いがなく一生独身になることも覚悟していた彼女だが、常連客の壮介と出会い世界は変わってゆく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

処理中です...