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お手伝いします①

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 次の日の朝はいつもより早起きして支度を始める。

「お母さん、お弁当用意して欲しいな!」

「どうしたの?」

「今日はやりたいことたくさんあるの!」

「1人で大丈夫なの?」

「大丈夫だよ、友達と一緒だから」

「あら、友達? リーンに友達ねぇ。いいお友達になれるといいわね」

「うん」

 いつも1人で遊んでいるのを知っていた母が少し安心したような顔していた。
 お弁当片手に、家を飛び出し近道を使ってジグの家まで走って向かった。
 友達とジグのことだけど、友達なのはだから嘘はついていない。

 お店はまだ開店していないので、裏手に周りドアをノックする。
 たぶん寝てるので音は強めにした。

 のそのそと足音が近づき、ゆっくり扉開く。

「おはよう! ジグ」

「おはようって、朝からどおした?」

「いつでもこいと言ってたから、来たの」

「はぁー、確かに言ったな。でも俺はまだ眠いぞ」

「寝てていいよ。遊びに来たんじゃないよ。手伝いに来たの」

「もしかして腕のこと心配してくれてるのか? 気持ちだけ受け取っておくからリーンは遊びに行ってこい」

「ヤダ! 子供扱いしないで。私だってちょっとぐらい出来ることあるもん」

「まいったな。どうしたもんか、なら棚にあるポーションでも拭いてくれるか? 綺麗な布はこっちにあるから使ってくれ」

「いいよ!」

「片手だと瓶を拭くのは難しくてな」

「そうなんだ」

 ちょっとは役に立てそうでよかった。

 ジグのお店はポーション屋。その名の通り、お店の中はポーションしか売っていない。

 少しはハイポーションもあるみたいだけど高いから全然うれてないのだろう、かなり埃を被ってしまっている状態だった。

 商売は上手くいってないのかな、なんて思っていたら。
 店にジグが出てきた。

「まだ寝てて良かったのに」

「リーンが手伝ってくれてるのに俺だけ寝てるわけにはいかないだろ」

「いいよ。私気にしないから」

「俺が気にするの」

 7歳の少女に見栄を張っていたいのかもしれないので、そうしてもらうことにした。

「ねぇ、なんでポーションばっかりなの?」

「あー、ポーションなら片腕でも何とか作れるからだな」

「簡単なんだ。私でも作れるかな」

「魔力がないと無理だぞ。魔力持ってるのか?」

「わかんない。お父さんもお母さんも魔力持ってないから私もないかも」

「調べるとなると、ギルドか教会とかになるかな。金もかかるし、どちらにせよリーンにはポーション作りはまだ早いからな」

「えー作ってみたい」

「なら少しだけ手伝ってくれよ」

「やったー!」

 私ができることは、薬草の葉をすり潰したり、出来上がったポーションを瓶に注いだりすることだった。

 新しく出来上がった瓶を棚に並べていく。

「早く売れないかな~」

 いつも暇だから、とは言っていたが1人ぐらいは来るだろうと思っていた。

 実際はまさにその言葉通りで、常に暇だった。生活が成り立っているのが不思議なぐらいだ。

 お母さんが作ってくれたお弁当を食べながら

「だーれも来ないねー」

「あーこないなー」

「町中に売り出しに行ったりしないの?」

「それじゃ、町にある薬屋の邪魔になっちまうからダメだ」

「ちょっと安売りして呼び込もうか」

「それもダメだ。安いポーションには信用がないと見なされるから、逆に買われなくなる」

「ふーん」

「ま、あんま心配すんな。これでも常連客はいるんだから」

「へー」

「俺は裏庭の畑仕事してるから、店番頼む」

「私も手伝う!」

「こっちは力仕事しかないからリーンはお店にいてくれ」

「はーい」

 また暇になってしまった。

 結局夕方まで来店客は0人。徐々に日が暮れ、家に帰らなきゃならない時間になる。

「私そろそろ帰らないと、もうお店は閉めるの?」

「いや、まだ開けとく」

「そっか、じゃ、また明日も来ていい」

「いいけど、昼ぐらいに来てくれ。早起きは苦手でな」

「えーつまんない」

「じゃ、昼前ぐらいだ」

「分かった。明日もポーション作ろうね」

「そうだな」

 ジグは私が見えなくなるまで手を振って見送ってくれていた。

 帰りが遅くなってしまい母が心配していたが、友達と明日も遊ぶ約束をしたことを言うと今度家に連れてきてねと言われてしまった。
 元気よく返事はしたものの紹介出来るかどうかは不安だった。

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