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魔王降臨オンステージ④
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⦅クレア! 大丈夫?⦆
念話で問いかけてみるも応答がない。
応答できるほど余裕がないのだろうか。
またどこかに飛ばされ助けに行くのが面倒なのでここは一旦時を止めて対応することにした。
まずタイムを空間収納から呼び出す。
わざわざタイムを呼ぶのは、時系統のスキルや魔法は使用している間の集中力が少しでも乱れると解除されることがあるので確実性を上げるなら分業した方がいい。
「お久しぶりです、ケーナ様」
「早速だけど数分時間止めてくれる?」
「今は1分が限界でございます」
「それでいいよ」
「マスタークロックを発動いたします」
静止した時の中で自由に動けるのは私とタイムだけ。
割れた魔法陣に残る魔力をアブソーブで吸い上げる。これで魔法陣の効果はなくなる。
「もう大丈夫かな。続き撮らないと!」
タイムを戻して時が流れはじめると魔法陣は薄くなって消えていき空間の亀裂も閉じるように消えてなくなった。
「そんなぁぁ、ギビじぃ!!」
ギビ・クラウドだけが空間の亀裂に取り込まれ、クレアは残ったままになった。
「シエル止めないでね! 死んでも殺るから!!!」
最後のポーションを一気飲みするサニー。
「止めるなんてことはしませんけど、1人では逝かせません。ご一緒させてもらいます」
シエルもポーションを一気飲みする。
「……ありがと」
「なにいってますの? こちらこそやのに」
シエルの優しい言葉に込み上げる涙を堪えて前を向くサニーの表情がなんとも言えない。
「ずーーーっと目指してた六大魔導士になって、それでも浮かれてたつもりはないんだけどな。あれ呼ぶことになるまで追い詰められちゃった……」
「勇者様を何人も葬ってきた魔王ですもの、簡単にはやれるとはおもってません」
「兵士のみんなを巻き込みたくないから使いたくなかったけど、ここでやらなきゃもっと殺されちゃう」
「戦場にいる以上納得してもらいましょ」
シエルがそっとサニーの手をとる。
2人が息を整えると詠唱が始まった。
「「二つの口は陽を喰らい、隠を喰らうも満たされぬ欲を果てなく追い求め。四つの目は暗く、深くしずむ見えぬ先を読み。強靭な一本の尾は毒を放つ強弓と化する。我が魔力を贄とし、相対する敵に永久の苦しみと最悪の終焉を届けたまえ」」
2人の足元にあった魔法陣の周りがブクブクと煮えたぎるような毒沼のように変化した。
立ちこめる瘴気でサニーもシエルも全身が毒に侵され始め、膝をつき今にも倒れこみそうだ。
ギギギギギギ
大きな鉄が軋むような鳴き声が響き渡り、巨大な双頭の蛇が毒沼から現れる。
そしてなんとか立ちあがろうとするサニーの横を掠るように這いずる。
「ねぇ、シエル? ちゃんと呼べたかなぁ……毒のせいでもう何も見えないや……」
サニーが繋いだはずのシエルの手は、手だけになっていた。
そこにまた戻ってくる。
「そっか、呼べたね。シエ——」
ギギギッ!
贄をそれぞれの口で食べても満足いかなかったのだろうか。次の獲物を探すようにあたりをゆっくり見わたし、クレアを見つけたようだった。
「命を粗末にしてこんなバケモノを置いていくなんて、人族の考えはまったくわからんでありんす」
クレアは飛んで距離を取る。
対して強くないとは思ったが念のため鑑定眼でステータスを覗いてみた。
Lv544 アラン・エスカトール 男 異界幻士
異様にレベルが高い。
ただ、モンスターの見た目なのに雄ではなく男なのがおかしい。
それに異界幻士という特殊な職業をガイドブックで見た覚えがあった。
⦅クレア! この蛇、勇者だ⦆
⦅なにをいってるかや。デカいヘビのバケモノでありんすよ。ケーナには勇者に見えるでありすか?⦆
⦅幻術とかの類いじゃなくて、元々勇者だったのかも⦆
⦅だったとしても、話せばわかるような様子ではなさそうでありんすな⦆
⦅どう? 1人で勝てそう?⦆
⦅ただの蛇ならともかく、こやつは異様すぎてわからんでありんす⦆
人族では到底倒せないであろうレベル。
そもそも、従えた召喚獣というより自らを餌に呼び寄せたバケモノだ。
さっさとお引き取り願いたいところだけど、クレアをジッと見ているので帰りたくはないのだろう。
「そんなに睨んで、状態異常かや? わっちには効かぬでありんすよ」
クレアに噛みつこうにも、空中のクレアには届かない。
グギギギ……
低い唸り声を上げると尾の先から毒を出してクレアめがけて飛ばす。
それも憤怒の炎が盾となり、当たりはしない。
これならクレアの方が有利かとも思ったが、憤怒の結晶に触れても双頭の蛇に変化がない。
耐性なのか、そもそも理性を失っているので効果がないだけなのかはわからない。
クレアも魔法使い攻略を探ってはみたようだが、憤怒の炎でも双頭の蛇の鱗を焼くことができずテンションが下がっていた。
⦅ケーナやっぱり助けてくりゃれ。こやつと相性が悪いでありんす⦆
⦅他に何か攻撃魔法とかないの?⦆
⦅あるにはあるが憤怒の炎以上の威力は出せんでありんす⦆
⦅すごい魔剣とかないわけ?⦆
⦅あの空間に閉じ込められた時、アレコレ試して武器やら魔道具やらは全部消失してしまったでありんすから……⦆
一応出番を欲しがっていたフランを出してみる。
⦅ほら、フラン。クレアのピンチだよ。助けてあげて⦆
⦅なんじゃあれは。気持ちの悪いバケモノじゃの。余は相手しとうない⦆
⦅クレアを助けないの⦆
⦅クレアなら負けることはないであろうし大丈夫じゃ。余はアレに近寄りたくないのじゃ⦆
⦅なんで?⦆
⦅気色悪いのじゃ、魂が囚われておる。1つや2つではないぞ、たくさんじゃ⦆
⦅強いのもそのせい?⦆
⦅ほぼ不死と言っていいじゃろ、死に至る前に再生しだすじゃろうな。他人の魂を喰って糧とするなど蛇風情が傲慢じゃ⦆
⦅……わかったよ。私が相手するしかないじゃん⦆
⦅さすがケーナじゃ! 頼りになるの!⦆
⦅害虫駆除担当みたいでやだなぁ⦆
レンズを空間収納へしまう。
ここからは完全非公開の劇場へと変わった。
念話で問いかけてみるも応答がない。
応答できるほど余裕がないのだろうか。
またどこかに飛ばされ助けに行くのが面倒なのでここは一旦時を止めて対応することにした。
まずタイムを空間収納から呼び出す。
わざわざタイムを呼ぶのは、時系統のスキルや魔法は使用している間の集中力が少しでも乱れると解除されることがあるので確実性を上げるなら分業した方がいい。
「お久しぶりです、ケーナ様」
「早速だけど数分時間止めてくれる?」
「今は1分が限界でございます」
「それでいいよ」
「マスタークロックを発動いたします」
静止した時の中で自由に動けるのは私とタイムだけ。
割れた魔法陣に残る魔力をアブソーブで吸い上げる。これで魔法陣の効果はなくなる。
「もう大丈夫かな。続き撮らないと!」
タイムを戻して時が流れはじめると魔法陣は薄くなって消えていき空間の亀裂も閉じるように消えてなくなった。
「そんなぁぁ、ギビじぃ!!」
ギビ・クラウドだけが空間の亀裂に取り込まれ、クレアは残ったままになった。
「シエル止めないでね! 死んでも殺るから!!!」
最後のポーションを一気飲みするサニー。
「止めるなんてことはしませんけど、1人では逝かせません。ご一緒させてもらいます」
シエルもポーションを一気飲みする。
「……ありがと」
「なにいってますの? こちらこそやのに」
シエルの優しい言葉に込み上げる涙を堪えて前を向くサニーの表情がなんとも言えない。
「ずーーーっと目指してた六大魔導士になって、それでも浮かれてたつもりはないんだけどな。あれ呼ぶことになるまで追い詰められちゃった……」
「勇者様を何人も葬ってきた魔王ですもの、簡単にはやれるとはおもってません」
「兵士のみんなを巻き込みたくないから使いたくなかったけど、ここでやらなきゃもっと殺されちゃう」
「戦場にいる以上納得してもらいましょ」
シエルがそっとサニーの手をとる。
2人が息を整えると詠唱が始まった。
「「二つの口は陽を喰らい、隠を喰らうも満たされぬ欲を果てなく追い求め。四つの目は暗く、深くしずむ見えぬ先を読み。強靭な一本の尾は毒を放つ強弓と化する。我が魔力を贄とし、相対する敵に永久の苦しみと最悪の終焉を届けたまえ」」
2人の足元にあった魔法陣の周りがブクブクと煮えたぎるような毒沼のように変化した。
立ちこめる瘴気でサニーもシエルも全身が毒に侵され始め、膝をつき今にも倒れこみそうだ。
ギギギギギギ
大きな鉄が軋むような鳴き声が響き渡り、巨大な双頭の蛇が毒沼から現れる。
そしてなんとか立ちあがろうとするサニーの横を掠るように這いずる。
「ねぇ、シエル? ちゃんと呼べたかなぁ……毒のせいでもう何も見えないや……」
サニーが繋いだはずのシエルの手は、手だけになっていた。
そこにまた戻ってくる。
「そっか、呼べたね。シエ——」
ギギギッ!
贄をそれぞれの口で食べても満足いかなかったのだろうか。次の獲物を探すようにあたりをゆっくり見わたし、クレアを見つけたようだった。
「命を粗末にしてこんなバケモノを置いていくなんて、人族の考えはまったくわからんでありんす」
クレアは飛んで距離を取る。
対して強くないとは思ったが念のため鑑定眼でステータスを覗いてみた。
Lv544 アラン・エスカトール 男 異界幻士
異様にレベルが高い。
ただ、モンスターの見た目なのに雄ではなく男なのがおかしい。
それに異界幻士という特殊な職業をガイドブックで見た覚えがあった。
⦅クレア! この蛇、勇者だ⦆
⦅なにをいってるかや。デカいヘビのバケモノでありんすよ。ケーナには勇者に見えるでありすか?⦆
⦅幻術とかの類いじゃなくて、元々勇者だったのかも⦆
⦅だったとしても、話せばわかるような様子ではなさそうでありんすな⦆
⦅どう? 1人で勝てそう?⦆
⦅ただの蛇ならともかく、こやつは異様すぎてわからんでありんす⦆
人族では到底倒せないであろうレベル。
そもそも、従えた召喚獣というより自らを餌に呼び寄せたバケモノだ。
さっさとお引き取り願いたいところだけど、クレアをジッと見ているので帰りたくはないのだろう。
「そんなに睨んで、状態異常かや? わっちには効かぬでありんすよ」
クレアに噛みつこうにも、空中のクレアには届かない。
グギギギ……
低い唸り声を上げると尾の先から毒を出してクレアめがけて飛ばす。
それも憤怒の炎が盾となり、当たりはしない。
これならクレアの方が有利かとも思ったが、憤怒の結晶に触れても双頭の蛇に変化がない。
耐性なのか、そもそも理性を失っているので効果がないだけなのかはわからない。
クレアも魔法使い攻略を探ってはみたようだが、憤怒の炎でも双頭の蛇の鱗を焼くことができずテンションが下がっていた。
⦅ケーナやっぱり助けてくりゃれ。こやつと相性が悪いでありんす⦆
⦅他に何か攻撃魔法とかないの?⦆
⦅あるにはあるが憤怒の炎以上の威力は出せんでありんす⦆
⦅すごい魔剣とかないわけ?⦆
⦅あの空間に閉じ込められた時、アレコレ試して武器やら魔道具やらは全部消失してしまったでありんすから……⦆
一応出番を欲しがっていたフランを出してみる。
⦅ほら、フラン。クレアのピンチだよ。助けてあげて⦆
⦅なんじゃあれは。気持ちの悪いバケモノじゃの。余は相手しとうない⦆
⦅クレアを助けないの⦆
⦅クレアなら負けることはないであろうし大丈夫じゃ。余はアレに近寄りたくないのじゃ⦆
⦅なんで?⦆
⦅気色悪いのじゃ、魂が囚われておる。1つや2つではないぞ、たくさんじゃ⦆
⦅強いのもそのせい?⦆
⦅ほぼ不死と言っていいじゃろ、死に至る前に再生しだすじゃろうな。他人の魂を喰って糧とするなど蛇風情が傲慢じゃ⦆
⦅……わかったよ。私が相手するしかないじゃん⦆
⦅さすがケーナじゃ! 頼りになるの!⦆
⦅害虫駆除担当みたいでやだなぁ⦆
レンズを空間収納へしまう。
ここからは完全非公開の劇場へと変わった。
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