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魔女と呼ばれる者②

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 まず向かうはアヤフローラ教国の首都リットララバン。女神の瞳という意味を持つ場所だけあってアヤフローラ教徒にとっては神聖な地でもある場所。そのため敬虔けいけんな教徒も多いところでもある。


 首都は大きな壁で外周を囲まれており、数百年に渡って町を守っている。そこにある検問所はとても厳しく。特に国外の者には時間がかかることで有名でもあった。

「この列進んでない。見てきて……ホマギ」

「ノマギでございます。確かに止まってしまっているようです。確認してまいります」

 数分後戻ってくるが報告が歯切れ悪い様子であった。

「少々トラブルがあったようで……」

「何?」

「ちょっと、ちょっとではないみたいでしたが、そこまで大きい事でもなくて……」

「どうしたっていうのよ、教えて」

「教えても構わないのですが、教えるとトラブルにトラブルが混ざってしまうというか何というか……」

 ノマギはここに来るまでに学習したのだった。
 ミスト・キャティは魔法に関しては大魔導士と呼ばれるに相応しい方であったが、それ以外ではただの世間知らずの娘であること。現在13歳であるが大人しさなどは微塵もなく、好奇心と興味あるものに手あたり次第飛びつく子供だった。

 それ故トラブルを起こすのも巻き込まれるのも魔法に引けを取らない才能ぶりを発揮していた。

「教えてくれないなら見てくるわ」

「お待ちくださいミスト様、ほらあちらに蝶々がお飛び遊ばれていますよ」

「荷物見てて」

「あ、あ……」

 スタスタと歩き出すミストを制止することなどできるはずもなく、検問所でトラブルが起きないことをただただ祈るしかなかった。

 検問所ではこの長蛇の列の原因となっている者が衛兵と言い争いをしていた。

「いい加減、通してよ。急いでるのー!」

「身元が分からん奴を通すわけなかろう。次がつかえておるのだ。諦めて帰れ」

「だから、六大魔導士のレ・イ・ンって言ってるでしょー!」

「身分証が無い者は通せん」

「なんでダメなのよ。そこに並んでる人に聞いてみてよ。絶対私の事知ってるわよ」

「そうのような問題ではない。顔を知っていても知っていなくても身分証が無いとダメなんだ」

「分かった……分かったわ。もう、この押し問答も終わりにする。見せてあげるわ、私が私である証明!」

「最初から素直に――」

の城壁って頑丈なんでしょ?そこに魔法で大きな風穴あけてあげる。それが身分証ってことで」

「何を言っているのか分かっているのか!そんなことをしたら極刑だぞ」

「私を極刑? 法で私を殺せるの? 面白い冗談ね。いいから黙って見てなさい!」

 突然駆け出し詠唱を始めるレイン。止めようと後を追う衛兵達、そこに丁度向かってきたミスト。

「あらぁ!誰かと思えばミストじゃない。何してるのこんなところで」

「お仕事してるの。レインは何してるの?」

「私は私事。でもここの検問所通してくれなくて困ってたから城壁に穴あけようと思って」

「ミストもずっと待たされて嫌だった。穴をあければ通してくれるってこと?」

「そうね、一緒にあけちゃいましょう。ミストも水魔法得意でしょ?」

「得意よ」

「合わせるわよ!」

 詠唱に詠唱を重ね魔法の威力を上げるミストとレイン。1人でさえ異常な魔力を操る大魔導士が2人もいるせいで、周囲の魔力が渦巻き誰も近づけずにいた。

 止めに入りろうとした衛兵もその場で堪えるのがやっとの状態。

「「――我らの眼前に天を貫く水柱よ来たれ。デェリュージュ!」」

 発動した魔法は禁忌とされる古代魔法。大きな水柱が現れ、神々しくさえ見えるが近くにいた人たちはそれどころではない。少しでも遠くに逃げようと必死である。

 天めがけた水柱が大きくうねり城壁に勢いよくぶつかろうとする。

 大洪水
 大惨事

 誰もがその後の参事が脳裏をよぎったとき。1人の男が城壁を背に立ちはだかった。

 水柱は城壁に届くことなく、周りに広がるわけでもなく、その男の前で消えてゆく。

 ついには全ての水が消えてしまった。

「ミスト頑張った。凄く頑張ったわ。けれどもレイン、あなたもしかして詠唱間違えた?」

「ちょっと変な事言わないでよ。私も頑張ったわ」

「じゃなんで消えたの、あそこにいる奴が消したの?」

「そうよね、私達の魔法を打ち消したっていうの? そんなことあっていいわけないじゃない」

 2人が驚きを隠せないのも無理はない。
 六大魔導士が二人がかりで詠唱し発動させた魔法が簡単に消されては国の尊厳や軍事力に関わる話になってくる。

「ちょっとそこの嬢ちゃんたち」

 まるで知り合いかのように近づいてきた中年の男。

「原因はこいつか、ミスト頑張ったのに」

「そうね。あれを消すなんてただものじゃなさそうね」

「そんなの認めない」

「俺はスノウっていうんだ。嬢ちょうたち、ちょっと話を……」

 2人が無視しているようだったので覗き込むように聞いてきた。

「あぁ、私はレイン、でこっちはミスト」

「嬢ちゃんたち、ドアをノックするにはちと派手過ぎなんじゃないか?」

「スノウ?」

「どこかで聞いた名のような……」

「俺がたまたまいて、大惨事にならなかったから良かったものの」

 衛兵達が逃がすまいと詰め寄ってきて来ている。

「ほぉら、捕まっちゃうぞ」

「なんだ私らを逃がしてくれるのか?」

 反対側からは古代魔法に気づいてノマギが慌ててやってきた。

「ミスト様、ミスト様!おやりになってくれましたね。事が大きくなる前に一旦お逃げ致しますよ!」

 と、ミストの手を取りグイっと引っ張るがスノウに気づいたノマギの足が止まる。

「よっノマギじゃねーか」

「はい……ノマギでございます」

「積もる話もあるかもしれねーが、とりあえずこっちの嬢ちゃんも一緒に連れてってやってくれ」

「はい、かしこまりました」

「衛兵はこっちで何とかしく!」

「感謝いたします」

 ノマギはもう片方の手でレインの手を取り、グイグイ引っ張って行った。

「ねぇノギギ、あのおじさん知ってるの?」

「ノマギでございます。あの方はスノウ・ブロッケン様、元六大魔導士で過去に付き人を担当したことがあります」

「あーどおりでなんか聞いたことある名前だったのか」

「あなたはレイン大魔導士様ですね、おしゃべりは後にしましょう。一旦ここを離れますので空間転移を発動させます。しっかりお掴まりになってください」

 ノマギは転移魔法使いその場を離れる。着いた先は初めての来る場所だった。

「森だ」

「森ね」

「ミスト様、レイン大魔導士様、申し訳ございません。急いだのが原因で転移に失敗致しました」

「はぁ? 何やってんだよ。使えねーな」

「そうね、使えないわね」

 モンスターが一匹も出てこない静まり返った不思議な森。むしろその方が今はありがたい。モンスターと遭遇することもなく、道に出ることができた。

 その道の真ん中をルンルンで歩くきぐるみの後ろ姿を発見する。

「猫がいるわ。大きい猫だわ」

「きぐるみでしょうか。近くに町があるかもしれません」

「追うわ」

「え、何。疲れたから走りたくないんですけどー」

「レイン大魔導士様、諦めください。こうなったミスト様を止めることは困難でございます」

 ミストの好奇心が爆発して追いかけることになったのた。
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