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薬草売りの少女⑦
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私には空気の抜ける音しか聞こえない。
念のため鑑定してみる。
ーーーーーーーーーーーー
ドラゴンを呼ぶ笛
ドラゴンにのみ聞こえるとされる音を発することのできる笛
その音を聞いたドラゴンは寄ってくる
使用時に使用者の魔力を使うことで広範囲に響かせることができるとされる。
複数のドラゴンのいる場所で使うと取り囲まれるので注意すること
ーーーーーーーーーーーー
「へっ、逃げるなら今のうちだぜ。あらかじめこの町に来る前に3体のドラゴンを近場まで呼んでおいたんだ。こんな結界破ってそいつらが来るぞ」
「3体のドラゴン……だと……?」
最近捕獲したドラゴンたちも、比較的町から近かったような気がしなくもない。
「さすがに魔王とやらでも3体のドラゴン相手は苦しいのか。ハッタリだと思っているなら大間違いだぜ」
疑っているつもりはなかったが、そう見えてしまったのだろうか。
ドラゴンを呼ぶ笛の効果はてきめんだったようで、バタバタと駆け寄ってくる3人の子供たち。人化した3体のドラゴンだ。
「あそこよ! あの人族よ!」
「前も呼んでた鳴き声と一緒」
「僕も聞いた」
「こら! そっちは今主が、強者だと思い込むを弱者を優しく諭しているところなのですから邪魔してはいけません」
エンドの注意を無視して、私のところまで来ると3人ともヤマダを心配そうに見つめている。そしてチラチラとこちらに視線を向けるのは何か許可でも待っているのか。
「いいよ、行って」
理由は分からないが許可を出しておいた。さすがに喰ったりはしないと思うのだけど。
「「「はい!」」」
元気な返事と共に勢いよくヤマダに飛びついた。
「な、なんなんだこのチビ共は、は、離れろ、くそぉ。なんで、は、なれ、な、ぐわっ」
子供たちに押し倒され抱き着かれすりすりされている。
人化し子供の状態とはいえ、力などはドラゴンのステータスのままだ。同じぐらいのレベルでも種族差によって数値は大きく変わってくる。力負けしてしまうのは当然だ。
「申し訳ない主よ。あの子たちを止められなかった」
謝罪をしてくるエンド。その理由をたずねると
「たぶんあの者が使った魔道具のせいだろう。生後まもないドラゴンの赤ん坊が、寂しくて母親や仲間を呼ぶ鳴き声にそっくりだ」
「ごめん私には分からないや」
「ドラゴンにだけ聞こえる特有の音だからであろう。あの音が本物か偽物か分からないようでは先が思いやられる」
「教育してあげてね」
「もちろんですとも」
ヤマダから魔道具の笛を奪うと、エンドに渡す。教育のために使ってもらうのだ。
「ほらほら、子ドラゴンちゃんたち、もうその人族は大丈夫だって、寂しくないってよ」
子ドラゴンたちをエンドが回収し、足早に離れていく。まだまだ教育は大変そうだ。
ヤマダの方は魔力が切れ、そして体力も切れ、これ以上動けなくなり大の字になった。
いつの間にか横で見ていたタイムが心配して「お水でもお持ちしましょうか?」と気を使ってくれる。
「もう、満足した? いい加減分かったでしょ? ヤマダの攻撃は私に届きません」
「……いったい、なんなんだよ。あの笛は偽物か?」
「安心して、あれは本物だからか」
「なんで、分かるんだよ。……マジで魔王なのか?」
「だから魔王だって」
「……マジかよ。笛もダメ、攻撃もダメ。オレのレベルは98だぞ。くそっ……」
Lvが100以上あることを知らないのだろう。
だとすればヤマダは自分がこの世界トップクラスの強さを持っているとでも思っていたのだろうか。その勘違いのせいで私に挑めたのかもしれない。本当の強者は挑むことすらしないから。
これで1つ勉強になっただろう。
「で、その魔王がオレに何の用?」
「やっと、お話できそうだね」
「なんでも聞きゃいいさ」
諦めたのか観念したのか、大きな溜息をついている。
「ホワイトディアの角の粉末、持ってるでしょ?」
「ああ、持ってる」
「それ薬師に売ってる?」
「売ってる」
「それ、もう売らないで」
「はっ、そりゃ無理だ」
「なんで? あれがどういう物か知ってるでしょう。ヤマダは錬金術師なんだから」
「知ってるさ、錬金術師だからな。オレが作ったアイテムの効果ぐらいわかるさ。だがな、話を持ちかけてきた薬師の方だぞ」
「そうなの?」
「そうさ、あいつらの方がそれを欲しがってわざわざオレに作ってくれと頼み込んできたんだ。今じゃ薬師の間で噂になって他の薬師もオレに頼みに来てる」
薬師に売りつけたと言うより、薬師から請け負ったというわけらしい。
作らされていただけと言われると、それはそれで強く問いただせない。
「でも、あの粉末は危険だから……」
「そうだな危険だ。作って売る方も、買って使う方も危険だ。だがなオレみたいのがこの世界で生きるには、危険を冒さなきゃいけねぇんだよ。オレもその薬師もお互いに金が必要だったんだ、しかたねぇだろ!」
この世界で生きるのであれば、確かに危険が伴うことが多い。転生者でも転移者でも危険は常に隣に有ると思うぐらいの用心深さでちょうどいい。でもわざわざ自ら足踏み込むことをする必要はない。
「だったら、私が稼ぎ方教えてあげる」
「なに言ってんだ?」
「まぁ任せて、こう見えても結構お金稼いでるんだからね」
「お前、いくつだよ……」
念のため鑑定してみる。
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ドラゴンを呼ぶ笛
ドラゴンにのみ聞こえるとされる音を発することのできる笛
その音を聞いたドラゴンは寄ってくる
使用時に使用者の魔力を使うことで広範囲に響かせることができるとされる。
複数のドラゴンのいる場所で使うと取り囲まれるので注意すること
ーーーーーーーーーーーー
「へっ、逃げるなら今のうちだぜ。あらかじめこの町に来る前に3体のドラゴンを近場まで呼んでおいたんだ。こんな結界破ってそいつらが来るぞ」
「3体のドラゴン……だと……?」
最近捕獲したドラゴンたちも、比較的町から近かったような気がしなくもない。
「さすがに魔王とやらでも3体のドラゴン相手は苦しいのか。ハッタリだと思っているなら大間違いだぜ」
疑っているつもりはなかったが、そう見えてしまったのだろうか。
ドラゴンを呼ぶ笛の効果はてきめんだったようで、バタバタと駆け寄ってくる3人の子供たち。人化した3体のドラゴンだ。
「あそこよ! あの人族よ!」
「前も呼んでた鳴き声と一緒」
「僕も聞いた」
「こら! そっちは今主が、強者だと思い込むを弱者を優しく諭しているところなのですから邪魔してはいけません」
エンドの注意を無視して、私のところまで来ると3人ともヤマダを心配そうに見つめている。そしてチラチラとこちらに視線を向けるのは何か許可でも待っているのか。
「いいよ、行って」
理由は分からないが許可を出しておいた。さすがに喰ったりはしないと思うのだけど。
「「「はい!」」」
元気な返事と共に勢いよくヤマダに飛びついた。
「な、なんなんだこのチビ共は、は、離れろ、くそぉ。なんで、は、なれ、な、ぐわっ」
子供たちに押し倒され抱き着かれすりすりされている。
人化し子供の状態とはいえ、力などはドラゴンのステータスのままだ。同じぐらいのレベルでも種族差によって数値は大きく変わってくる。力負けしてしまうのは当然だ。
「申し訳ない主よ。あの子たちを止められなかった」
謝罪をしてくるエンド。その理由をたずねると
「たぶんあの者が使った魔道具のせいだろう。生後まもないドラゴンの赤ん坊が、寂しくて母親や仲間を呼ぶ鳴き声にそっくりだ」
「ごめん私には分からないや」
「ドラゴンにだけ聞こえる特有の音だからであろう。あの音が本物か偽物か分からないようでは先が思いやられる」
「教育してあげてね」
「もちろんですとも」
ヤマダから魔道具の笛を奪うと、エンドに渡す。教育のために使ってもらうのだ。
「ほらほら、子ドラゴンちゃんたち、もうその人族は大丈夫だって、寂しくないってよ」
子ドラゴンたちをエンドが回収し、足早に離れていく。まだまだ教育は大変そうだ。
ヤマダの方は魔力が切れ、そして体力も切れ、これ以上動けなくなり大の字になった。
いつの間にか横で見ていたタイムが心配して「お水でもお持ちしましょうか?」と気を使ってくれる。
「もう、満足した? いい加減分かったでしょ? ヤマダの攻撃は私に届きません」
「……いったい、なんなんだよ。あの笛は偽物か?」
「安心して、あれは本物だからか」
「なんで、分かるんだよ。……マジで魔王なのか?」
「だから魔王だって」
「……マジかよ。笛もダメ、攻撃もダメ。オレのレベルは98だぞ。くそっ……」
Lvが100以上あることを知らないのだろう。
だとすればヤマダは自分がこの世界トップクラスの強さを持っているとでも思っていたのだろうか。その勘違いのせいで私に挑めたのかもしれない。本当の強者は挑むことすらしないから。
これで1つ勉強になっただろう。
「で、その魔王がオレに何の用?」
「やっと、お話できそうだね」
「なんでも聞きゃいいさ」
諦めたのか観念したのか、大きな溜息をついている。
「ホワイトディアの角の粉末、持ってるでしょ?」
「ああ、持ってる」
「それ薬師に売ってる?」
「売ってる」
「それ、もう売らないで」
「はっ、そりゃ無理だ」
「なんで? あれがどういう物か知ってるでしょう。ヤマダは錬金術師なんだから」
「知ってるさ、錬金術師だからな。オレが作ったアイテムの効果ぐらいわかるさ。だがな、話を持ちかけてきた薬師の方だぞ」
「そうなの?」
「そうさ、あいつらの方がそれを欲しがってわざわざオレに作ってくれと頼み込んできたんだ。今じゃ薬師の間で噂になって他の薬師もオレに頼みに来てる」
薬師に売りつけたと言うより、薬師から請け負ったというわけらしい。
作らされていただけと言われると、それはそれで強く問いただせない。
「でも、あの粉末は危険だから……」
「そうだな危険だ。作って売る方も、買って使う方も危険だ。だがなオレみたいのがこの世界で生きるには、危険を冒さなきゃいけねぇんだよ。オレもその薬師もお互いに金が必要だったんだ、しかたねぇだろ!」
この世界で生きるのであれば、確かに危険が伴うことが多い。転生者でも転移者でも危険は常に隣に有ると思うぐらいの用心深さでちょうどいい。でもわざわざ自ら足踏み込むことをする必要はない。
「だったら、私が稼ぎ方教えてあげる」
「なに言ってんだ?」
「まぁ任せて、こう見えても結構お金稼いでるんだからね」
「お前、いくつだよ……」
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