108 / 200
手を取り合う相手
しおりを挟む
誕生会を終えたカスケード家では、領主のベンドラとカスケード家を影で支え続けている執事長のバキアが今後のカスケード家の方針を考えていた。
「どうだ、絞り込めそうか?」
「はい旦那様。これまたしっかり予想通りと言いましょうか。名簿をご覧ください」
今回の誕生会で参加表明の手紙が返ってきた順の一覧だった。
ずらっと書かれた貴族たちの名前と線引きがされてある。
「ふむ、わかりやすいな」
「名簿上部はいつもの方々と言えばよろしいでしょうか。懇意にしている方ばかりです。そして線を引いた所より下部の方々は過去に何かしら厄介ごとがあった者たちです。そして、その線は」
「ケーナ宛の招待状をギルドに預けた時期になるのだな」
「ご明察でございます。今回は次期魔王を招待することをギルド経由にしたことで、情報が早く広がったのが良かったかもしれません」
「次期魔王という餌は強力だったな。取りあえず上部の者のみ話を進めていこう。下部に関しては今後は浅い付き合いでよい」
「はっ。最近カスケードで起きていることを踏まえ、今後手を取る相手を早めに選ぶことを考えるなら致し方ないとも思います」
領地の安定した統治を継続するには、カスケード家だけではなく他の貴族や大商人などの協力が必要になる。
不安な事が続いてる今、手を取る相手を間違うと立て直しが出来なくなる恐れがあるので、義理か利益か相手の腹の探り合いの1つにケーナも利用された。
「あの次期魔王ケーナの顔の噂は本当だったな。しかもあの声、娘が近くにいなかったら本人かどうかわからんぞ」
「そうでございましたね。最初はお嬢様本人かと疑いを持ったぐらいです」
「そういえば椅子の方はどうだ。この日のためにインテルシアから取り寄せた、椅子型の人物鑑定魔道具は成果があったか?」
「残念ながら。一応ステータスを読み取ることはできましたが、名前がケーナ、種族が人族、 レベルが10ということだけでした」
「まぁ、このステータスは嘘であろうな。ジフの樹海を焼いた話はまだ裏が取れていないが真実だと思っている。普通の人族にあの樹海は焼けぬからな」
「あれほどの魔道具を用意しても計れないのであれば、どこの輩でも一緒でしょう。真の姿は人族ですらないかもしれませぬ」
「エーナに似てあれだけ可愛らしいのにも関わらずか。見分けがつかぬうちは騙されてしまうかもしれないな。ははは」
「冗談でもおやめください。実の娘と見誤るなど」
「わかっておるわ。だがバキアよ。おぬしとて未だユーナとリーナの見分けが出来てないのではないのか?」
「それは……」
「やはり、そこはお互い精進せねばな」
一笑いしているところへ庭師のロットがドアをノックする。
「入れ」
「失礼いたします。お待たせしました」
「そろったところで早速本題と行こうか。今後あの次期魔王ケーナを支持するか否かだ。カスケードを拠点としていた冒険者であることは事前に知っていたが、カスケードのとある孤児院出身であることは娘が聞き出していたが、これは初耳だ。そうするとカスケードから魔王を出すことになる」
バキアが先に口を開く
「教会がどう見るかが重要になるかと思いますが、教会が次期魔王に敵対したとしても勇者と軍は動きづらくなると思われます。今次期魔王の後ろ盾がアヤフローラ軍少将のオリミラ・アルバトロスという話になっていますので」
「敵対したとしても教会直属の聖騎士のみで争わなければならないという事か。次期魔王の前に狂戦士のオリミラを相手にしなければならないと考えると、その戦力では足りてないかもしれぬな」
「教会側が魔王に対して友好を示すことはないですが、敵対するには分が悪すぎます。静観するのが妥当でしょう」
「ロットはあの次期魔王どの程度と見る」
「まず見た感じですが、冒険者という割には経験が少ないように思います。警戒心があまりなく、興味だけで冒険者になったという感じでしょうか。駆け出しに似た雰囲気を感じました」
「確かに、顔はもちろん傷や怪我の痕は1つも無かったように思えるな」
「ですが私と目と目が合い、気づきました」
「ロットはどこにおったのだ?」
「外でございます」
「窓からのぞいておったのか?」
「いいえ、遠くの木の影からスコープを使い室内を監視していました。距離にして約200m」
「さすがに、外を見た時に視線が向いただけで、気のせいではないのか?」
「それでしたら目をそらす動作はいたしません。目と目が合ったことを隠そうとしたのです。この場合、実力を悟られたくなかったのでしょう」
「それを踏まえた上で次期魔王をどう見る?」
「巧妙に実力を隠そうとしているが、まだ経験が浅いせいでボロがでている状態。しかしながら、感知や探索に関しては一流なのは確実です。戦闘になった場合付き人の白い女が障害となるでしょう。こちらは隙が無く常に主を守りつつ反撃を想定した位置取りをしておりました」
「あの真っ白女がそこまでの者か」
「見た目の若さと動きの硬さからして自ら覚えたというより、護衛の仕方を叩きこまれたと考えます。師がいるのかもしれません」
「次期魔王は実力を隠し未だ未知数、後ろ盾もあり勇者や軍も手を出しづらい。2人の話を聞くとますます次期魔王を支持する側に回るしかなくなってくるな。敵を増やしたくないが、そこらの貴族は金でどうにでもなる者ばかりだ。比べるまでもない」
バキアもロットも異議はないようだ
「一番は娘と同じ顔を持つ者を敵視したくないのでな。可能なら養子にしたいぐらいだ」
それには同感と言った感じでロットもバキアもうなづいていた。
次期魔王ケーナをベンドラ・カスケードが支持することは、翌日に名簿の上部の者達に通達が届き、数日後には多くの貴族た大商人などの連名で支持が公に発表されたのだった。
「どうだ、絞り込めそうか?」
「はい旦那様。これまたしっかり予想通りと言いましょうか。名簿をご覧ください」
今回の誕生会で参加表明の手紙が返ってきた順の一覧だった。
ずらっと書かれた貴族たちの名前と線引きがされてある。
「ふむ、わかりやすいな」
「名簿上部はいつもの方々と言えばよろしいでしょうか。懇意にしている方ばかりです。そして線を引いた所より下部の方々は過去に何かしら厄介ごとがあった者たちです。そして、その線は」
「ケーナ宛の招待状をギルドに預けた時期になるのだな」
「ご明察でございます。今回は次期魔王を招待することをギルド経由にしたことで、情報が早く広がったのが良かったかもしれません」
「次期魔王という餌は強力だったな。取りあえず上部の者のみ話を進めていこう。下部に関しては今後は浅い付き合いでよい」
「はっ。最近カスケードで起きていることを踏まえ、今後手を取る相手を早めに選ぶことを考えるなら致し方ないとも思います」
領地の安定した統治を継続するには、カスケード家だけではなく他の貴族や大商人などの協力が必要になる。
不安な事が続いてる今、手を取る相手を間違うと立て直しが出来なくなる恐れがあるので、義理か利益か相手の腹の探り合いの1つにケーナも利用された。
「あの次期魔王ケーナの顔の噂は本当だったな。しかもあの声、娘が近くにいなかったら本人かどうかわからんぞ」
「そうでございましたね。最初はお嬢様本人かと疑いを持ったぐらいです」
「そういえば椅子の方はどうだ。この日のためにインテルシアから取り寄せた、椅子型の人物鑑定魔道具は成果があったか?」
「残念ながら。一応ステータスを読み取ることはできましたが、名前がケーナ、種族が人族、 レベルが10ということだけでした」
「まぁ、このステータスは嘘であろうな。ジフの樹海を焼いた話はまだ裏が取れていないが真実だと思っている。普通の人族にあの樹海は焼けぬからな」
「あれほどの魔道具を用意しても計れないのであれば、どこの輩でも一緒でしょう。真の姿は人族ですらないかもしれませぬ」
「エーナに似てあれだけ可愛らしいのにも関わらずか。見分けがつかぬうちは騙されてしまうかもしれないな。ははは」
「冗談でもおやめください。実の娘と見誤るなど」
「わかっておるわ。だがバキアよ。おぬしとて未だユーナとリーナの見分けが出来てないのではないのか?」
「それは……」
「やはり、そこはお互い精進せねばな」
一笑いしているところへ庭師のロットがドアをノックする。
「入れ」
「失礼いたします。お待たせしました」
「そろったところで早速本題と行こうか。今後あの次期魔王ケーナを支持するか否かだ。カスケードを拠点としていた冒険者であることは事前に知っていたが、カスケードのとある孤児院出身であることは娘が聞き出していたが、これは初耳だ。そうするとカスケードから魔王を出すことになる」
バキアが先に口を開く
「教会がどう見るかが重要になるかと思いますが、教会が次期魔王に敵対したとしても勇者と軍は動きづらくなると思われます。今次期魔王の後ろ盾がアヤフローラ軍少将のオリミラ・アルバトロスという話になっていますので」
「敵対したとしても教会直属の聖騎士のみで争わなければならないという事か。次期魔王の前に狂戦士のオリミラを相手にしなければならないと考えると、その戦力では足りてないかもしれぬな」
「教会側が魔王に対して友好を示すことはないですが、敵対するには分が悪すぎます。静観するのが妥当でしょう」
「ロットはあの次期魔王どの程度と見る」
「まず見た感じですが、冒険者という割には経験が少ないように思います。警戒心があまりなく、興味だけで冒険者になったという感じでしょうか。駆け出しに似た雰囲気を感じました」
「確かに、顔はもちろん傷や怪我の痕は1つも無かったように思えるな」
「ですが私と目と目が合い、気づきました」
「ロットはどこにおったのだ?」
「外でございます」
「窓からのぞいておったのか?」
「いいえ、遠くの木の影からスコープを使い室内を監視していました。距離にして約200m」
「さすがに、外を見た時に視線が向いただけで、気のせいではないのか?」
「それでしたら目をそらす動作はいたしません。目と目が合ったことを隠そうとしたのです。この場合、実力を悟られたくなかったのでしょう」
「それを踏まえた上で次期魔王をどう見る?」
「巧妙に実力を隠そうとしているが、まだ経験が浅いせいでボロがでている状態。しかしながら、感知や探索に関しては一流なのは確実です。戦闘になった場合付き人の白い女が障害となるでしょう。こちらは隙が無く常に主を守りつつ反撃を想定した位置取りをしておりました」
「あの真っ白女がそこまでの者か」
「見た目の若さと動きの硬さからして自ら覚えたというより、護衛の仕方を叩きこまれたと考えます。師がいるのかもしれません」
「次期魔王は実力を隠し未だ未知数、後ろ盾もあり勇者や軍も手を出しづらい。2人の話を聞くとますます次期魔王を支持する側に回るしかなくなってくるな。敵を増やしたくないが、そこらの貴族は金でどうにでもなる者ばかりだ。比べるまでもない」
バキアもロットも異議はないようだ
「一番は娘と同じ顔を持つ者を敵視したくないのでな。可能なら養子にしたいぐらいだ」
それには同感と言った感じでロットもバキアもうなづいていた。
次期魔王ケーナをベンドラ・カスケードが支持することは、翌日に名簿の上部の者達に通達が届き、数日後には多くの貴族た大商人などの連名で支持が公に発表されたのだった。
0
お気に入りに追加
889
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。
飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。
隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。
だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。
そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。
ハイエルフの幼女に転生しました。
レイ♪♪
ファンタジー
ネグレクトで、死んでしまったレイカは
神様に転生させてもらって新しい世界で
たくさんの人や植物や精霊や獣に愛されていく
死んで、ハイエルフに転生した幼女の話し。
ゆっくり書いて行きます。
感想も待っています。
はげみになります。
せっかく転生したのに得たスキルは「料理」と「空間厨房」。どちらも外れだそうですが、私は今も生きています。
リーゼロッタ
ファンタジー
享年、30歳。どこにでもいるしがないOLのミライは、学校の成績も平凡、社内成績も平凡。
そんな彼女は、予告なしに突っ込んできた車によって死亡。
そして予告なしに転生。
ついた先は、料理レベルが低すぎるルネイモンド大陸にある「光の森」。
そしてやって来た謎の獣人によってわけの分からん事を言われ、、、
赤い鳥を仲間にし、、、
冒険系ゲームの世界につきもののスキルは外れだった!?
スキルが何でも料理に没頭します!
超・謎の世界観とイタリア語由来の名前・品名が特徴です。
合成語多いかも
話の単位は「食」
3月18日 投稿(一食目、二食目)
3月19日 え?なんかこっちのほうが24h.ポイントが多い、、、まあ嬉しいです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる