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ずっと見てる者。ずっと見てた者。
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「最終連絡からどれくらいたっている」
「既に1時間が過ぎています」
「奇襲部隊からの連絡は?」
「同じくありません」
「この状況をどう見る?敵の罠か。まさか、こちらの情報が漏れていた?」
「支援部隊がそろそろ到着の予定時刻です。異常があれば転移魔法で書簡が届きます」
「万が一に備えこちらからも伝令を走らせろ!」
襲撃の指揮を執ったナジョト国の司令部では、連絡が途絶えた連合部隊と奇襲部隊の捜索で侵略どころではなくなってしまった。
「なにやら慌ただしくなってきましたね?」
「そ、それよりカスケード軍の様子はどうなんじゃ? ノーザン殿」
「こちらは何事もなく。長時間睨みあいしてるみたいですよ。ただ部隊の一部が町の方に向かったとの報告も受けています」
「大した数じゃなかろう」
「そうですね、大した数ではありません。ましてやこの作戦に支障が出るような数ではないはずです」
「ああ、そうじゃろうな……」
指令部の者達が走り回り、怒号が飛び交う。
それは綿密に練られた作戦が崩れていくさまを表しているようだった。
「……今回の襲撃は失敗ですかな?」
「ん、んーまだ待っとくれ、何かのトラブルかもしれん。作戦が失敗したと決めるのは次の報告が来てからでも遅くはない」
「そうですね、まぁどちらでも構わないのですが、こちらは予定通り時間になったらこちらの兵を全て引き揚げさせていただきなす。よろしいですね」
「わかっとる」
「それとそれと中将さん。約束の物もお忘れなくお願い致しますね」
「念を押さんでもちゃんと用意しとるから、帰りにもってけ」
「はい、ありがうございます」
(くっそ、この狐男め。何もしとらんのに報酬だけは一丁前に高額だ。金で動くが金が掛かり過ぎるのも問題じゃ)
暫くして指令室に書簡が送られてくる。内容は予想通り作戦の失敗、そして。全部隊の行方不明ということだった。
町に被害を起こすことはできたが想定より遥かに小規模でこちらの代償が大きくなってしまった。
静まり返った指令室に1人の将官の呟きが響く。
「やはり辺境といえど、女神のおひざ元であったか……」
『アヤフローラ教国と戦争でもしようものなら天罰がくだる』
おとぎ話の一文でもあるが、アヤフローラ国民はこれに疑いを持ったとこはない。
他国の者がそんな世迷言に耳を傾けるわけもないのたが過去にも幾度となく侵略を阻止しされ、今回もよくわからないまま失敗に終わったことを考えるとそんな言葉が出てしまっても誰も何も言えないのだろう。
この一件で得をしたのはノーザンと言う男だけ。アヤフローラ教国カスケード軍の戦力を把握。ナジョト国に手を貸したことで報酬を受け取り、そしてカスケード軍とは別に部隊を消失させるほどの何かがあることを確認できた。
自らは代償も危険もなく大きな報酬と情報を得る事ができたのだ。
「それでは私はこれで帰りますね中将さん」
「ああ、気を付けて帰るがいい。ここで見送りとさせていただく」
「また、何かありましたらお呼びくださいね」
「……」
ノーザンが外に待たせてある竜車に乗り込むと、そこには既にもう一人乗っている。
「速かったですね、ドラン。いやはやこちらの人達はダメダメでしたね」
「知ってた」
「私も最初から当てにしていなかったのですよ。で、そちらの様子はどうでしたか?」
「化け物が1人いた」
「ん? 化け物と言いますとモンスターでしょうか?」
「違う、良く見えなかったが人族だと思う。尋常じゃない力を使っていた」
「噂の勇者様でもいたと」
「アレは勇者ではない。あの国の最強と呼ばれている勇者は一度見たことがあるから分かる」
「そもそもあなたの龍眼でも良く見えないなんてことがあるのですか?」
「今回の場合は例外。環境的なこと、距離的なこと、能力的なこと、いくつか原因が重なった」
「運が悪かったのでしょうか……、ドランはその化け物に勝てそうですか?」
「単独では無理。力の上限が見えない。それだけで脅威」
「あなたがそこまで弱気な事を言うのを初めてみました」
「別に相手を過大評価しているわけじゃない。正直に話している」
「わかっていますよ。ただ、珍しいと思っただけです。ですが問題ありません。負けると分かっているならば戦わなければいいだけす。力だけが強さとは限りませんからね」
「そうなのか?」
「そうですよ。知恵もまた力になります」
ノーザンとドランを乗せた竜車は国境を越えオオイ・マキニド共和国へと帰って行く。
その様子を部屋からずっと千里眼で監視していたコピーエーナ。
事件が起きてから町の上空を飛ぶ龍人族のドランの事をマークしていた。
ケーナの探索範囲には入らないギリギリのところで滞空し何もしてこないので逆に不信に思い千里眼で追跡していたのだ。
先手を打つこともできたのだが、オオイ・マキニド共和国の関与は予想外だったので泳がせることにしたのだった。
「どこの誰だか知らないけど、カスケード家に喧嘩を売ったこと後悔させてあげるからね」
「既に1時間が過ぎています」
「奇襲部隊からの連絡は?」
「同じくありません」
「この状況をどう見る?敵の罠か。まさか、こちらの情報が漏れていた?」
「支援部隊がそろそろ到着の予定時刻です。異常があれば転移魔法で書簡が届きます」
「万が一に備えこちらからも伝令を走らせろ!」
襲撃の指揮を執ったナジョト国の司令部では、連絡が途絶えた連合部隊と奇襲部隊の捜索で侵略どころではなくなってしまった。
「なにやら慌ただしくなってきましたね?」
「そ、それよりカスケード軍の様子はどうなんじゃ? ノーザン殿」
「こちらは何事もなく。長時間睨みあいしてるみたいですよ。ただ部隊の一部が町の方に向かったとの報告も受けています」
「大した数じゃなかろう」
「そうですね、大した数ではありません。ましてやこの作戦に支障が出るような数ではないはずです」
「ああ、そうじゃろうな……」
指令部の者達が走り回り、怒号が飛び交う。
それは綿密に練られた作戦が崩れていくさまを表しているようだった。
「……今回の襲撃は失敗ですかな?」
「ん、んーまだ待っとくれ、何かのトラブルかもしれん。作戦が失敗したと決めるのは次の報告が来てからでも遅くはない」
「そうですね、まぁどちらでも構わないのですが、こちらは予定通り時間になったらこちらの兵を全て引き揚げさせていただきなす。よろしいですね」
「わかっとる」
「それとそれと中将さん。約束の物もお忘れなくお願い致しますね」
「念を押さんでもちゃんと用意しとるから、帰りにもってけ」
「はい、ありがうございます」
(くっそ、この狐男め。何もしとらんのに報酬だけは一丁前に高額だ。金で動くが金が掛かり過ぎるのも問題じゃ)
暫くして指令室に書簡が送られてくる。内容は予想通り作戦の失敗、そして。全部隊の行方不明ということだった。
町に被害を起こすことはできたが想定より遥かに小規模でこちらの代償が大きくなってしまった。
静まり返った指令室に1人の将官の呟きが響く。
「やはり辺境といえど、女神のおひざ元であったか……」
『アヤフローラ教国と戦争でもしようものなら天罰がくだる』
おとぎ話の一文でもあるが、アヤフローラ国民はこれに疑いを持ったとこはない。
他国の者がそんな世迷言に耳を傾けるわけもないのたが過去にも幾度となく侵略を阻止しされ、今回もよくわからないまま失敗に終わったことを考えるとそんな言葉が出てしまっても誰も何も言えないのだろう。
この一件で得をしたのはノーザンと言う男だけ。アヤフローラ教国カスケード軍の戦力を把握。ナジョト国に手を貸したことで報酬を受け取り、そしてカスケード軍とは別に部隊を消失させるほどの何かがあることを確認できた。
自らは代償も危険もなく大きな報酬と情報を得る事ができたのだ。
「それでは私はこれで帰りますね中将さん」
「ああ、気を付けて帰るがいい。ここで見送りとさせていただく」
「また、何かありましたらお呼びくださいね」
「……」
ノーザンが外に待たせてある竜車に乗り込むと、そこには既にもう一人乗っている。
「速かったですね、ドラン。いやはやこちらの人達はダメダメでしたね」
「知ってた」
「私も最初から当てにしていなかったのですよ。で、そちらの様子はどうでしたか?」
「化け物が1人いた」
「ん? 化け物と言いますとモンスターでしょうか?」
「違う、良く見えなかったが人族だと思う。尋常じゃない力を使っていた」
「噂の勇者様でもいたと」
「アレは勇者ではない。あの国の最強と呼ばれている勇者は一度見たことがあるから分かる」
「そもそもあなたの龍眼でも良く見えないなんてことがあるのですか?」
「今回の場合は例外。環境的なこと、距離的なこと、能力的なこと、いくつか原因が重なった」
「運が悪かったのでしょうか……、ドランはその化け物に勝てそうですか?」
「単独では無理。力の上限が見えない。それだけで脅威」
「あなたがそこまで弱気な事を言うのを初めてみました」
「別に相手を過大評価しているわけじゃない。正直に話している」
「わかっていますよ。ただ、珍しいと思っただけです。ですが問題ありません。負けると分かっているならば戦わなければいいだけす。力だけが強さとは限りませんからね」
「そうなのか?」
「そうですよ。知恵もまた力になります」
ノーザンとドランを乗せた竜車は国境を越えオオイ・マキニド共和国へと帰って行く。
その様子を部屋からずっと千里眼で監視していたコピーエーナ。
事件が起きてから町の上空を飛ぶ龍人族のドランの事をマークしていた。
ケーナの探索範囲には入らないギリギリのところで滞空し何もしてこないので逆に不信に思い千里眼で追跡していたのだ。
先手を打つこともできたのだが、オオイ・マキニド共和国の関与は予想外だったので泳がせることにしたのだった。
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