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その21 コンセプトカフェ
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東京都千代田区にある私立ケインズ女子高校は(後略)
ある日曜日の朝、私は2年生の宇津田志乃先輩に誘われて私立アダムスミス高校の学園祭に来ていた。
「確かこの先の教室で水戸さんがコンセプトカフェやってるんだよね。男子校の学園祭自体初めてだからどんな感じなのか楽しみ」
「あーしは彼ぴっぴの中学校の学園祭行ったことあるけど男子校はこれが初だわ。見た目がひどかったらゲラゲラ笑って帰ろ!」
硬式テニス部員で同じく誘われた出羽ののか先輩は日本の男子校の生徒になんて興味ないと言って来ず、三島右子ちゃんは生来の男嫌いのためやはり来なかったのでその代わりに同じクラスの弓道部員である馬鈴流如何ちゃんが興味本位で付いてきていた。
志乃先輩がトイレに行っている間に私と流如何ちゃんは先輩の彼氏である水戸学さんが参加しているコンセプトカフェの教室に向かっており、近くに行くと室内から話し声が聞こえてきた。
「それでさー、あたしが好きな男子って全然女の子の気持ち分かってくれないんだよねー。水戸さんみたいに女慣れしてないからかもだけど小学3年生ってまだまだガキなのかな?」
「そうだねえ、メイちゃんの気持ちはよく理解できるよ。小学生ぐらいの年頃だとやっぱり女の子の方が精神的に成熟してるから、その男子とも中学生ぐらいになれば両想いになれるかもね。あ、ちょっとホットココアでも注文してくれないかな?」
室内ではやはり顔見知りである秋水小学校3年生の菅木芽依ちゃんが水戸さんに悩みを相談しており、ラフな私服に身を包んだ水戸さんは小学生女子の悩みを頷きながら聞いてあげていた。
「水戸さんお疲れ様です、志乃先輩は後から来られますよ。あと今日は女友達も連れてきました」
「やあ灰田さん、今日はこの『理解のある彼くんカフェ』に来てくれてありがとう。よかったら後で何か注文してね」
「じゃーとりあえずホットココア3人分で! 水戸センパイ、何か変なカフェですけど男子校ってフツーは女装カフェとかするんじゃないんすかー?」
流如何ちゃんは芽依ちゃんの分も含めてメニューを注文すると水戸さんになぜわざわざ「理解のある彼くんカフェ」なのかを質問した。
「うーん、実はこの高校では2年前まで女装カフェをやってたんだけど最近はコンプライアンスが色々と厳しくてね。特に女装カフェは性的少数者の人権に配慮して絶対禁止ってことになって、際どいコスプレとかも駄目だから私服でできるこのカフェになったんだよ。現実的な設定でも意外とお客さんは集まってるけどね」
「そーそー、水戸さんすっごく優しいんだよ! こういうコンカフェって普通の服でもできちゃうんだって驚いたんだー」
「なるほど、メイにそこまで言わせるのは中々ですねー。あーしらも今度学園祭でコンカフェやるんで真似してみよっかな」
流如何ちゃんが何かを思いついていると志乃先輩も到着し、その後は4人で他にもメニューを注文して料金は全部志乃先輩におごって頂けた。
それから数か月後、ケインズ女子高校の学園祭で……
「ちーっすオタク男子くん。何これラノベってやつ? あーしも勝手に読んじゃお~」
「お姉さん、一体何を……」
「ふーん、君って女の子とこんなことしたいんだ~。そーゆーガツガツしたのあーし嫌いじゃないかも! そーいや喉乾いたな~」
「えへへ、じゃあ僕とお姉さんにウーロン茶一つずつ! 麦茶の方がよかったですか?」
「流石は流如何さんですね、小学生男子をあれほど懐かせるとは心の優しさが表れています」
「右子ちゃん、多分そういう理由じゃないと思うよ……」
数週間前から準備を重ねた「オタクに優しいギャルカフェ」で志乃先輩の弟である宇津田真嗣君をデレデレさせている流如何ちゃんを見て、私はこれは現実的な設定とは言えないのではないかと思った。
(続く)
ある日曜日の朝、私は2年生の宇津田志乃先輩に誘われて私立アダムスミス高校の学園祭に来ていた。
「確かこの先の教室で水戸さんがコンセプトカフェやってるんだよね。男子校の学園祭自体初めてだからどんな感じなのか楽しみ」
「あーしは彼ぴっぴの中学校の学園祭行ったことあるけど男子校はこれが初だわ。見た目がひどかったらゲラゲラ笑って帰ろ!」
硬式テニス部員で同じく誘われた出羽ののか先輩は日本の男子校の生徒になんて興味ないと言って来ず、三島右子ちゃんは生来の男嫌いのためやはり来なかったのでその代わりに同じクラスの弓道部員である馬鈴流如何ちゃんが興味本位で付いてきていた。
志乃先輩がトイレに行っている間に私と流如何ちゃんは先輩の彼氏である水戸学さんが参加しているコンセプトカフェの教室に向かっており、近くに行くと室内から話し声が聞こえてきた。
「それでさー、あたしが好きな男子って全然女の子の気持ち分かってくれないんだよねー。水戸さんみたいに女慣れしてないからかもだけど小学3年生ってまだまだガキなのかな?」
「そうだねえ、メイちゃんの気持ちはよく理解できるよ。小学生ぐらいの年頃だとやっぱり女の子の方が精神的に成熟してるから、その男子とも中学生ぐらいになれば両想いになれるかもね。あ、ちょっとホットココアでも注文してくれないかな?」
室内ではやはり顔見知りである秋水小学校3年生の菅木芽依ちゃんが水戸さんに悩みを相談しており、ラフな私服に身を包んだ水戸さんは小学生女子の悩みを頷きながら聞いてあげていた。
「水戸さんお疲れ様です、志乃先輩は後から来られますよ。あと今日は女友達も連れてきました」
「やあ灰田さん、今日はこの『理解のある彼くんカフェ』に来てくれてありがとう。よかったら後で何か注文してね」
「じゃーとりあえずホットココア3人分で! 水戸センパイ、何か変なカフェですけど男子校ってフツーは女装カフェとかするんじゃないんすかー?」
流如何ちゃんは芽依ちゃんの分も含めてメニューを注文すると水戸さんになぜわざわざ「理解のある彼くんカフェ」なのかを質問した。
「うーん、実はこの高校では2年前まで女装カフェをやってたんだけど最近はコンプライアンスが色々と厳しくてね。特に女装カフェは性的少数者の人権に配慮して絶対禁止ってことになって、際どいコスプレとかも駄目だから私服でできるこのカフェになったんだよ。現実的な設定でも意外とお客さんは集まってるけどね」
「そーそー、水戸さんすっごく優しいんだよ! こういうコンカフェって普通の服でもできちゃうんだって驚いたんだー」
「なるほど、メイにそこまで言わせるのは中々ですねー。あーしらも今度学園祭でコンカフェやるんで真似してみよっかな」
流如何ちゃんが何かを思いついていると志乃先輩も到着し、その後は4人で他にもメニューを注文して料金は全部志乃先輩におごって頂けた。
それから数か月後、ケインズ女子高校の学園祭で……
「ちーっすオタク男子くん。何これラノベってやつ? あーしも勝手に読んじゃお~」
「お姉さん、一体何を……」
「ふーん、君って女の子とこんなことしたいんだ~。そーゆーガツガツしたのあーし嫌いじゃないかも! そーいや喉乾いたな~」
「えへへ、じゃあ僕とお姉さんにウーロン茶一つずつ! 麦茶の方がよかったですか?」
「流石は流如何さんですね、小学生男子をあれほど懐かせるとは心の優しさが表れています」
「右子ちゃん、多分そういう理由じゃないと思うよ……」
数週間前から準備を重ねた「オタクに優しいギャルカフェ」で志乃先輩の弟である宇津田真嗣君をデレデレさせている流如何ちゃんを見て、私はこれは現実的な設定とは言えないのではないかと思った。
(続く)
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