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その17 累進課税
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東京都千代田区にある私立ケインズ女子高校は本来の意味でリベラルな学校で、在学生には(後略)
「これまで人生で数回しか来たことがないのですが、回転寿司というのはいいものですね。見たところお寿司が回っていないようですが……」
「茶碗蒸し美味しいですー。あといくつか注文してもいいですか?」
「ええ、どうぞ……次で8個目かしらね……」
ある日の硬式テニス部の練習後、私と三島右子ちゃんはいつもの先輩2名に回転寿司をおごって貰っていた。
右子ちゃんは実家があまりカタギではないのでご両親に回転寿司に連れてきて貰った経験はほぼないらしく、茶碗蒸しやかっぱ巻きなどをメインに食べている私の隣で目を輝かせて色々なお寿司を食べていた。
「ここ最近ね、ガリガリ、若者が回転寿司で醤油差しをなめたり取ったお皿をレーンに戻したりして炎上する事件が続いてるから、ガリガリ、しばらくは注文しないとお寿司が来ないらしいわよ、ガリガリ」
「そういえばそんなニュースよく聞きますよね……ってののか先輩何ガリばっかり食べてるんですか!? しかも容器から直接!?」
3年生の出羽ののか先輩はよく考えると入店してから甘酢生姜しか食べておらず、300円の皿ばかり取っている2年生の宇津田志乃先輩とは対照的に1円も使っていなかった。
「これは別にお金をけちってる訳じゃなくて、その……この前の健康診断で……」
「ああ、そういえば出羽先輩2キロも増えてたってひいい痛い痛い痛い痛い!!」
「具体的な数字を出さないでちょうだい!!」
「な、なるほど……」
ののか先輩は要するに健康診断で体重が増えていたことを気にしてダイエットをしていたらしく、増加分をうっかり口にしてしまった志乃先輩はほっぺたをものすごい力で引っ張られていた。
「こんなに太っちゃったら乙女失格よ! これじゃその内裏羽田君に振られちゃって、北欧の男性にも将来求婚して貰えないかも……ガリガリ……」
「出羽先輩、そこまでお気になさらなくても。生姜ばかり食べていては栄養が偏りますし、累進課税制度のように体重が増えたらそれだけ運動をすればよいだけではありませんか。先ほどまで頑張ってテニスをしていた訳ですし、むしろお肉のお寿司でも食べてタンパク質を摂取された方がよいと思います」
「右子ちゃん、流石の目の付けどころ! 今からののか先輩の茶碗蒸しも注文するので、一緒に食べましょう?」
「ありがとう。こんなに優しい後輩に囲まれて私は幸せよ……」
ののか先輩はそれからはお寿司や茶碗蒸しも普通に食べてくれて、退店後は途中まで私と一緒に帰ることになった。
「菜々ちゃん、ちょっと郵便局に寄って手紙出してきてもいい? 好きな漫画家さんにファンレターを送りたかったのに切手を貼り忘れちゃって」
「分かりました、私も切手でも見てますね」
この近くの郵便局は夕方8時頃まで営業しており、私を連れて郵便局に入った先輩はバッグから封筒を取り出すと受付のお姉さんに持っていった。
「普通郵便でお願いします。94円でいいですか?」
「ええ、このサイズなら……あ、すみません。55グラムだったので定形外で140円になります」
「誰が55キログラムの女には累進課税ですって!? もう一度言ってみなさいよ!!」
「ひいいいいい、誰もそんなこと言ってませんー!!」
「ののか先輩ー!!」
ののか先輩は55という数字を口にしたお姉さんに激怒すると両手で首元を締め上げ、私は慌てて先輩を制止しに走ったのだった。
(続く)
「これまで人生で数回しか来たことがないのですが、回転寿司というのはいいものですね。見たところお寿司が回っていないようですが……」
「茶碗蒸し美味しいですー。あといくつか注文してもいいですか?」
「ええ、どうぞ……次で8個目かしらね……」
ある日の硬式テニス部の練習後、私と三島右子ちゃんはいつもの先輩2名に回転寿司をおごって貰っていた。
右子ちゃんは実家があまりカタギではないのでご両親に回転寿司に連れてきて貰った経験はほぼないらしく、茶碗蒸しやかっぱ巻きなどをメインに食べている私の隣で目を輝かせて色々なお寿司を食べていた。
「ここ最近ね、ガリガリ、若者が回転寿司で醤油差しをなめたり取ったお皿をレーンに戻したりして炎上する事件が続いてるから、ガリガリ、しばらくは注文しないとお寿司が来ないらしいわよ、ガリガリ」
「そういえばそんなニュースよく聞きますよね……ってののか先輩何ガリばっかり食べてるんですか!? しかも容器から直接!?」
3年生の出羽ののか先輩はよく考えると入店してから甘酢生姜しか食べておらず、300円の皿ばかり取っている2年生の宇津田志乃先輩とは対照的に1円も使っていなかった。
「これは別にお金をけちってる訳じゃなくて、その……この前の健康診断で……」
「ああ、そういえば出羽先輩2キロも増えてたってひいい痛い痛い痛い痛い!!」
「具体的な数字を出さないでちょうだい!!」
「な、なるほど……」
ののか先輩は要するに健康診断で体重が増えていたことを気にしてダイエットをしていたらしく、増加分をうっかり口にしてしまった志乃先輩はほっぺたをものすごい力で引っ張られていた。
「こんなに太っちゃったら乙女失格よ! これじゃその内裏羽田君に振られちゃって、北欧の男性にも将来求婚して貰えないかも……ガリガリ……」
「出羽先輩、そこまでお気になさらなくても。生姜ばかり食べていては栄養が偏りますし、累進課税制度のように体重が増えたらそれだけ運動をすればよいだけではありませんか。先ほどまで頑張ってテニスをしていた訳ですし、むしろお肉のお寿司でも食べてタンパク質を摂取された方がよいと思います」
「右子ちゃん、流石の目の付けどころ! 今からののか先輩の茶碗蒸しも注文するので、一緒に食べましょう?」
「ありがとう。こんなに優しい後輩に囲まれて私は幸せよ……」
ののか先輩はそれからはお寿司や茶碗蒸しも普通に食べてくれて、退店後は途中まで私と一緒に帰ることになった。
「菜々ちゃん、ちょっと郵便局に寄って手紙出してきてもいい? 好きな漫画家さんにファンレターを送りたかったのに切手を貼り忘れちゃって」
「分かりました、私も切手でも見てますね」
この近くの郵便局は夕方8時頃まで営業しており、私を連れて郵便局に入った先輩はバッグから封筒を取り出すと受付のお姉さんに持っていった。
「普通郵便でお願いします。94円でいいですか?」
「ええ、このサイズなら……あ、すみません。55グラムだったので定形外で140円になります」
「誰が55キログラムの女には累進課税ですって!? もう一度言ってみなさいよ!!」
「ひいいいいい、誰もそんなこと言ってませんー!!」
「ののか先輩ー!!」
ののか先輩は55という数字を口にしたお姉さんに激怒すると両手で首元を締め上げ、私は慌てて先輩を制止しに走ったのだった。
(続く)
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