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その14 利己的な遺伝子
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東京都千代田区にある私立ケインズ女子高校は本来の意味でリベラルな学校で、在学生には(後略)
ある日の放課後、私は同じクラスの弓道部員である馬鈴流如何ちゃんに誘われて三島右子ちゃんと共に駄菓子屋で買い物をしていた。
「駄菓子屋に来たのは小学生の頃以来ですけど、いつ来ても楽しいものですね。これだけ買って300円というのにも驚きです」
「久々にエキサイトしてるゆっこ見れてテンション上げ上げって感じ~。ななちーはちょっと買いすぎかもだけど!」
「ほら、これでも普段買ってる量よりは少ないから……あれ、子供同士が喧嘩してる?」
袋一杯の駄菓子を抱えて店の外に出ると、近くの通りで見覚えのある顔の男子小学生が友達らしい女子小学生と喧嘩していた。
「かっ、返せよ! 芽依ちゃんが見せて欲しいっていうから見せてあげたのに結果見て笑うなんてあんまりじゃないか!」
「えー、だってマジ受けるんだけどぉ? シンジ君ってやっぱりあたしより5センチも低かったんだね~」
男子小学生は硬式テニス部員の宇津田志乃先輩の弟である真嗣君で、彼はメイちゃんという女友達に小学校の身体測定表を奪われて低身長を笑われていたらしかった。
「こんなに背がちっちゃいのに座高はあたしと同じなんてマジ受ける~。座高ぉ、座ぁ高ぉ~」
「うう……どうせ僕は短足だって言いたいんでしょ……」
「まーたメイの奴シンジ君いじめてんのかよ。これはわからせないとダメっぽいね」
「流如何さん、どうぞ注意なさってきてください」
流如何ちゃんはいじめっ子の女子小学生と知り合いだったらしく、右子ちゃんの応援に頷くと駄菓子の入った袋を持ったまま女の子につかつかと歩み寄った。
「こらメイ、男の子を身長が低いとか何とか言っていじめちゃダメでしょーが。あんただって将来好きな男の子に貧乳とか言われたら傷つくっしょ?」
「あっルイ姉。別にあたしはシンジ君の身長が低いって言っただけでいじめてなんかないし、将来貧乳って言われても気にしないもんねー。だってルイ姉もぺたんこだし」
「あ?」
「ごめんなさい」
「お姉さん、芽依ちゃんは僕に身長のことでひどいことばっかり言うんです。利己的な遺伝子? がどうとか言って、僕は身長が低いから将来女の子に選んで貰えないって……」
態度からするにメイちゃんという女の子は真嗣君を異性として意識しているらしいが、まだ子供なのでついつい相手が嫌がることを言ってしまい、真嗣君も真に受けて傷ついてしまっているようだった。
「利己的な遺伝子? はっはーん、メイはもうそんな大人みたいなこと言ってんだ。まだガキのくせして」
「あたしガキじゃないもん! 毎日図書室に行って難しい本一杯読んでるもんね~」
「あっそ。じゃあこれ、ジャンボヨーグルト1つしかないからこの男子と分け分けするね。ほれ少年、あーんして」
「えっ!? あ、はい。……おいしい!」
大人ぶるメイちゃんに対して流如何ちゃんは先ほど買ったショートニングのヨーグルト風駄菓子を開封すると真嗣君に食べさせ、真嗣君は美人女子高生に駄菓子を食べさせて貰って喜んでいた。
「そ、そんなの見せつけたってあたしどうってことないから!」
「そーかそーか、じゃあ少年、このウマボーで度胸試ししない? あたしが片側からかじるから、少年はその反対側からかじるんだよ」
「や、やります! ちょっとドキドキするけど……」
「いやーダメー!! シンジ君がルイ姉とそんなことしちゃダメー!! うわーん!!」
棒状の駄菓子で真嗣君とポッキーゲーム的なことをしようとした流如何ちゃんを見てメイちゃんは泣きながら制止しにかかり、私はいくら早熟でも女子小学生はあくまで子供だなあと思った。
(続く)
ある日の放課後、私は同じクラスの弓道部員である馬鈴流如何ちゃんに誘われて三島右子ちゃんと共に駄菓子屋で買い物をしていた。
「駄菓子屋に来たのは小学生の頃以来ですけど、いつ来ても楽しいものですね。これだけ買って300円というのにも驚きです」
「久々にエキサイトしてるゆっこ見れてテンション上げ上げって感じ~。ななちーはちょっと買いすぎかもだけど!」
「ほら、これでも普段買ってる量よりは少ないから……あれ、子供同士が喧嘩してる?」
袋一杯の駄菓子を抱えて店の外に出ると、近くの通りで見覚えのある顔の男子小学生が友達らしい女子小学生と喧嘩していた。
「かっ、返せよ! 芽依ちゃんが見せて欲しいっていうから見せてあげたのに結果見て笑うなんてあんまりじゃないか!」
「えー、だってマジ受けるんだけどぉ? シンジ君ってやっぱりあたしより5センチも低かったんだね~」
男子小学生は硬式テニス部員の宇津田志乃先輩の弟である真嗣君で、彼はメイちゃんという女友達に小学校の身体測定表を奪われて低身長を笑われていたらしかった。
「こんなに背がちっちゃいのに座高はあたしと同じなんてマジ受ける~。座高ぉ、座ぁ高ぉ~」
「うう……どうせ僕は短足だって言いたいんでしょ……」
「まーたメイの奴シンジ君いじめてんのかよ。これはわからせないとダメっぽいね」
「流如何さん、どうぞ注意なさってきてください」
流如何ちゃんはいじめっ子の女子小学生と知り合いだったらしく、右子ちゃんの応援に頷くと駄菓子の入った袋を持ったまま女の子につかつかと歩み寄った。
「こらメイ、男の子を身長が低いとか何とか言っていじめちゃダメでしょーが。あんただって将来好きな男の子に貧乳とか言われたら傷つくっしょ?」
「あっルイ姉。別にあたしはシンジ君の身長が低いって言っただけでいじめてなんかないし、将来貧乳って言われても気にしないもんねー。だってルイ姉もぺたんこだし」
「あ?」
「ごめんなさい」
「お姉さん、芽依ちゃんは僕に身長のことでひどいことばっかり言うんです。利己的な遺伝子? がどうとか言って、僕は身長が低いから将来女の子に選んで貰えないって……」
態度からするにメイちゃんという女の子は真嗣君を異性として意識しているらしいが、まだ子供なのでついつい相手が嫌がることを言ってしまい、真嗣君も真に受けて傷ついてしまっているようだった。
「利己的な遺伝子? はっはーん、メイはもうそんな大人みたいなこと言ってんだ。まだガキのくせして」
「あたしガキじゃないもん! 毎日図書室に行って難しい本一杯読んでるもんね~」
「あっそ。じゃあこれ、ジャンボヨーグルト1つしかないからこの男子と分け分けするね。ほれ少年、あーんして」
「えっ!? あ、はい。……おいしい!」
大人ぶるメイちゃんに対して流如何ちゃんは先ほど買ったショートニングのヨーグルト風駄菓子を開封すると真嗣君に食べさせ、真嗣君は美人女子高生に駄菓子を食べさせて貰って喜んでいた。
「そ、そんなの見せつけたってあたしどうってことないから!」
「そーかそーか、じゃあ少年、このウマボーで度胸試ししない? あたしが片側からかじるから、少年はその反対側からかじるんだよ」
「や、やります! ちょっとドキドキするけど……」
「いやーダメー!! シンジ君がルイ姉とそんなことしちゃダメー!! うわーん!!」
棒状の駄菓子で真嗣君とポッキーゲーム的なことをしようとした流如何ちゃんを見てメイちゃんは泣きながら制止しにかかり、私はいくら早熟でも女子小学生はあくまで子供だなあと思った。
(続く)
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