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その8 業務自動化
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東京都千代田区にある私立ケインズ女子高校は本来の意味でリベラルな学校で、在学生には(後略)
「こんにちは、特製ラーメンチャーシュー抜きでお願いします!」
「じゃあ、私は普通の特製ラーメンで……」
「いらっしゃいお嬢ちゃんたち。抜いた分のチャーシューはそっちのお嬢ちゃんのラーメンに入れとくよ!」
「ありがとうございます……」
ある日の放課後、私は硬式テニス部所属の2年生である宇津田志乃先輩と一緒にお気に入りのラーメン屋さんに来ていた。
「灰田さん、やっぱり常連客なのね。私もチャーシュー増えて嬉しいわ……」
「本当にありがたいですよね。あっ、早速できたみたいですよ」
店長さんのちょっとしたサービスに感謝していると、2人分の特製ラーメンは早速カウンターに置かれていた。
お互いラーメンをテーブルに移し、志乃先輩はカウンターにある割り箸を一つ取って割った。
「あれ、何かあったんですか? そんな暗い顔されて……」
「灰田さん……この割り箸なんだけど、また失敗しちゃった……」
志乃先輩が見せてくれた割り箸は片方の箸の頭がもう片方の箸にくっ付いた状態で割れており、確かにあまり綺麗に割れていなかった。
「これでもう10回連続なの。私がこんな割り箸もまともに割れないような女だってミト君に知られたら、お育ちが悪いって思われて振られちゃうかも。あああ、私は本当にどうしようもない女なのよ……」
「先輩、お店の迷惑になりますからテーブルに突っ伏して泣くのはやめましょうよ……」
相変わらず変なことで悩んでいる志乃先輩をなだめてどうにかお互いラーメンを食べ終わり、買いたい参考書があるということなので私は志乃先輩に付いてそのまま近場の書店へと足を運んだ。
「さあさあ寄ってらっしゃい見てらっしゃい、今日は皆様に特別商品のご案内です。書店のレシートをお持ちの方には何と500円引きでご提供致しますよ!!」
「志乃先輩、あれは……」
書店の前では書店員さんらしき若い男性が謎の機械を売っていて、志乃先輩は機械に貼られている説明書きを見ると書店員さんの所へと駆け寄っていった。
「どうも、こちらの商品にご興味がおありですか? 地元の工場の試作品『全自動箸割り機』は今なら税込み2000円、お嬢さんにはサービスで1500円でご提供致しましょう! いかがですか?」
「ぜひ買わせてください。どっちみち後で参考書買いますし、1500円で……」
志乃先輩は謎の機械「全自動箸割り機」を即決で購入し、明日部室まで持ってきて見せてくれることになった。
そして翌日の放課後……
「宇津田先輩、これが噂に聞く『全自動箸割り機』なのですね。動く所を見せて貰えませんか?」
「ええ、もちろん。せっかくだからカップ麺でも作ってみてくれない? 灰田さん、3人分よろしく……」
硬式テニス部所属の1年生である三島右子ちゃんは志乃先輩が持ってきた全自動箸割り機を見て目を輝かせており、私は先輩の指示を受けて部室の湯沸かしポットでカップラーメンを3人分作った。
ラーメンが完成するタイミングで志乃先輩は全自動箸割り機に割り箸を突っ込み、スイッチをひねると割り箸は両側から引っ張られ、綺麗に2つに割れた。
「これは素晴らしいですね、まさしく身近な業務自動化です!」
「やっぱり機械で割った割り箸で食べるラーメンは美味しいわね。これでミト君にも恥ずかしくないわ……」
「そ、そうですよね……」
カップラーメンの味は全く変わった気がしないけど、志乃先輩も右子ちゃんも全自動箸割り機の性能には大満足のようだった。
3人でラーメンを食べ終えた後は全自動箸割り機を部室の戸棚にしまっておくことにして、片付けが終わった所で部長である3年生の出羽ののか先輩が部室に入ってきた。
「あら、ラーメンみたいな香りがするわね。皆で食べてたの?」
「ええ、ちょっと事情がありまして。良かったら出羽先輩も後でどうぞ」
「ありがとう。そういえば昨日近くの本屋さんで見たんだけど、何か『全自動箸割り機』とかいうのが売られてて爆笑しちゃったわ。割り箸なんて自分の手があればすぐ割れるのに、あんなバカみたいな機械買う人なんているのかしらね? 綺麗に割れるっていうけど割り箸なんて適当に割っても使えるし、本当に何やってんだかって感じよねぬぐぐぐぐぐぐぐぐぐ」
「志乃先輩、首は駄目です首は!!」
全自動箸割り機に率直な感想を述べたののか先輩に志乃先輩は無言で激怒すると力ずくで黙らせにかかり、私は業務自動化は必要性を考慮しないと残念な結果になるなあと思った。
(続く)
「こんにちは、特製ラーメンチャーシュー抜きでお願いします!」
「じゃあ、私は普通の特製ラーメンで……」
「いらっしゃいお嬢ちゃんたち。抜いた分のチャーシューはそっちのお嬢ちゃんのラーメンに入れとくよ!」
「ありがとうございます……」
ある日の放課後、私は硬式テニス部所属の2年生である宇津田志乃先輩と一緒にお気に入りのラーメン屋さんに来ていた。
「灰田さん、やっぱり常連客なのね。私もチャーシュー増えて嬉しいわ……」
「本当にありがたいですよね。あっ、早速できたみたいですよ」
店長さんのちょっとしたサービスに感謝していると、2人分の特製ラーメンは早速カウンターに置かれていた。
お互いラーメンをテーブルに移し、志乃先輩はカウンターにある割り箸を一つ取って割った。
「あれ、何かあったんですか? そんな暗い顔されて……」
「灰田さん……この割り箸なんだけど、また失敗しちゃった……」
志乃先輩が見せてくれた割り箸は片方の箸の頭がもう片方の箸にくっ付いた状態で割れており、確かにあまり綺麗に割れていなかった。
「これでもう10回連続なの。私がこんな割り箸もまともに割れないような女だってミト君に知られたら、お育ちが悪いって思われて振られちゃうかも。あああ、私は本当にどうしようもない女なのよ……」
「先輩、お店の迷惑になりますからテーブルに突っ伏して泣くのはやめましょうよ……」
相変わらず変なことで悩んでいる志乃先輩をなだめてどうにかお互いラーメンを食べ終わり、買いたい参考書があるということなので私は志乃先輩に付いてそのまま近場の書店へと足を運んだ。
「さあさあ寄ってらっしゃい見てらっしゃい、今日は皆様に特別商品のご案内です。書店のレシートをお持ちの方には何と500円引きでご提供致しますよ!!」
「志乃先輩、あれは……」
書店の前では書店員さんらしき若い男性が謎の機械を売っていて、志乃先輩は機械に貼られている説明書きを見ると書店員さんの所へと駆け寄っていった。
「どうも、こちらの商品にご興味がおありですか? 地元の工場の試作品『全自動箸割り機』は今なら税込み2000円、お嬢さんにはサービスで1500円でご提供致しましょう! いかがですか?」
「ぜひ買わせてください。どっちみち後で参考書買いますし、1500円で……」
志乃先輩は謎の機械「全自動箸割り機」を即決で購入し、明日部室まで持ってきて見せてくれることになった。
そして翌日の放課後……
「宇津田先輩、これが噂に聞く『全自動箸割り機』なのですね。動く所を見せて貰えませんか?」
「ええ、もちろん。せっかくだからカップ麺でも作ってみてくれない? 灰田さん、3人分よろしく……」
硬式テニス部所属の1年生である三島右子ちゃんは志乃先輩が持ってきた全自動箸割り機を見て目を輝かせており、私は先輩の指示を受けて部室の湯沸かしポットでカップラーメンを3人分作った。
ラーメンが完成するタイミングで志乃先輩は全自動箸割り機に割り箸を突っ込み、スイッチをひねると割り箸は両側から引っ張られ、綺麗に2つに割れた。
「これは素晴らしいですね、まさしく身近な業務自動化です!」
「やっぱり機械で割った割り箸で食べるラーメンは美味しいわね。これでミト君にも恥ずかしくないわ……」
「そ、そうですよね……」
カップラーメンの味は全く変わった気がしないけど、志乃先輩も右子ちゃんも全自動箸割り機の性能には大満足のようだった。
3人でラーメンを食べ終えた後は全自動箸割り機を部室の戸棚にしまっておくことにして、片付けが終わった所で部長である3年生の出羽ののか先輩が部室に入ってきた。
「あら、ラーメンみたいな香りがするわね。皆で食べてたの?」
「ええ、ちょっと事情がありまして。良かったら出羽先輩も後でどうぞ」
「ありがとう。そういえば昨日近くの本屋さんで見たんだけど、何か『全自動箸割り機』とかいうのが売られてて爆笑しちゃったわ。割り箸なんて自分の手があればすぐ割れるのに、あんなバカみたいな機械買う人なんているのかしらね? 綺麗に割れるっていうけど割り箸なんて適当に割っても使えるし、本当に何やってんだかって感じよねぬぐぐぐぐぐぐぐぐぐ」
「志乃先輩、首は駄目です首は!!」
全自動箸割り機に率直な感想を述べたののか先輩に志乃先輩は無言で激怒すると力ずくで黙らせにかかり、私は業務自動化は必要性を考慮しないと残念な結果になるなあと思った。
(続く)
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