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最終話 宇宙人さんこんにちは! 魔法少女エミリー地球を救う!!
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東京都足立区に住む清水絵美里ちゃんは小学4年生の女の子です。成績は中の上、顔面偏差値は58ぐらいで、クラスではそこそこ高めのスクールカーストを保っています。公立小学校の治安は地域によって全然違うから、都内在住の人はリサーチが大変だよね。
「やっと話題の回まで見れたー。この作画もこれはこれで味があるよね」
今日は待ちに待った日曜日。中学受験をしない絵美里ちゃんはお母さんのタブレット端末を借りて定額制動画配信サイトのアニメを見ています。一昔前に放映されていた深夜アニメに出てきた作画崩壊にはシュールな味わいがあったようです。
『魔法少女エミリーよ、そんなことをしている場合ではありません』
「どうしたのタカミン……じゃなくて女王様? こんな所に一体何のご用ですか?」
勉強机の上空に出現したのはいつもの使い魔ではなく、異世界シニカルランドを統べる女王様の立体映像でした。女王様は魔法の力で自らの姿を絵美里ちゃんの部屋に投影し、指令を伝えようとしているのです。とりあえず魔法って言っとけば何でも許されるのがファンタジーのいい所ですね。
『この地球と同じ世界、外宇宙の惑星に住む異星人たちが、何らかの理由で地球を滅ぼそうとしています。地球が滅んだところでシニカルランドには何の影響もありませんが、シニカルエナジーの供給源が失われることは避けたいのです。今からあなたを異星人のもとに転送しますから、異星人を説得して地球を救いなさい。頼みましたよ』
「えっ、今アニメがいい所なんですけどうわあああああ」
女王様は指令を伝えると異世界から魔力を放ち、絵美里ちゃんを外宇宙の惑星へとワープさせました。部屋着姿の絵美里ちゃんは自室から姿を消し、女王様は彼女の無事を祈りつつ普段のお仕事に戻りました。パワハラ気質はいつも通りですね。
時は少し戻り、現場は外宇宙の惑星です。
「太陽系第三惑星地球を滅ぼす手立ては整った。後は他の惑星への影響を抑えるための準備が必要だ」
『ブラックホール発生装置はいつでも始動できますが、地球消滅後の処置には気を配る必要があります。しばしお待ちください』
この惑星は全体が機械化されていて、はるか昔に何者かによって造られた機械生命体たちによって支配されていました。彼らは同じ宇宙にあるあらゆる星々を監視し、宇宙全体にとってリスクとなり得る知的生命体は先んじて滅ぼすことを使命としていました。
惑星全体を統べる円筒状のマザーコンピューターは4本の腕を持つ研究者の機械生命体と通信し、地球の中心部にブラックホールを発生させて地球と人類を消滅させる手立てについて相談していました。
「現在の地球人に罪はないが、これから数千年という時の中で、彼らは銀河系を食い潰し始める。我々にはこの宇宙全体を守る使命があるのだ」
通信を切ると、マザーコンピューターは地球人への罪の意識を感じつつも自らの決断を呟きました。
「お忙しいところ恐縮なんですけど、ちょっといいですか? 私、地球から来た魔法少女のエミリーっていいます」
「何だと、地球人は生命体をこの惑星にまでワープさせることができるのか!? 文明の発達を見誤っていたか……」
ワープ中に魔法少女エミリーへの変身を済ませ、異星人と話せるよう魔法を使っていた絵美里ちゃんはマザーコンピューターの後方から話しかけました。シニカルランドからの使者に過ぎないのに地球人代表と勘違いされてしまったようです。
「文明の発達とか正直よく分からないんですけど、宇宙人さんたちは地球を滅ぼしたいって聞きました。外宇宙の宇宙人さんがそこまで考えるからには何か理由があると思うので、聞かせて貰えませんか?」
「わざわざ来てくれた客人には事情を説明する他あるまい。我々はこの宇宙全体を守るために……」
マザーコンピューターはエミリーに自分たちの使命と地球の文明を放置した場合のリスクについて説明し、これから地球を消滅させるが他の星々に被害をもたらすことはないと宣言しました。
「地球人は自らの惑星の中でも戦争を繰り返し、無尽蔵に人口を増やして資源を食い潰す。このような生命体が銀河系に進出すれば、やがては宇宙全体を破滅に追い込みかねないのだ」
「その理屈は分かりますし否定できませんけど、宇宙人さんは宇宙全体を守りたいんじゃないんですか?」
「どういうことだ?」
「宇宙全体を守るために地球を滅ぼすって言いますけど、宇宙全体には地球も含まれるはずですよね。地球を滅ぼした時点で宇宙人さんは宇宙全体を守れてないですし、本当に使命を果たしたいなら地球を温存した上で人類の危険性を抑制するのが先なんじゃないですか? まあ人類なんて放っておいてもそのうち自滅するでしょうし、積極的な介入は諦めて」
「君の言うことには一理あるな。よし、地球人に高度な文明を与えてしまうリスクはあるが、直接の交渉を試みてみよう」
「いやちょっと、話はまだ終わって」
「今から我々の使者を地球に送り込み、地球人の文明を監視できるか確かめる。この度は対話の機会を与えてくれて感謝する。お礼に君を地球まで転送しよう」
「別に自分で帰れまうわあああああ」
マザーコンピューターはそう言うとエミリーに感謝を伝え、相手の了解も得ずにエミリーを元いた場所へとワープさせました。1日に2回も強制ワープさせられて災難ですね。
異星人たちはそれから使者を乗せた宇宙船を地球にワープさせ、外宇宙の機械生命体として地球人との平和的交流を行いたいと提案しました。宇宙人の来訪に地球ではしばらく混乱が続きましたが武力衝突に至ることはなく、機械生命体たちは地球人の監視という名目で地球観光を楽しむようになりました。人類にも様々なタイプの人がいると理解してくれたようです。
地球人と異星人の未来を魔法の望遠鏡で見ながら、シニカルランドの女王様は怒りに身震いしていました。
「地球を救うという任務は果たしましたが、平和的な交流を樹立させてどうするのですか。友好関係が成立したせいでシニカルエナジーがどんどん減っていますよ」
「だって宇宙人が意外といい人だとは思わなかったんですよー。どうせなら地球侵略とかしてくれればよかったのに」
「たらればの話をしても仕方ないでしょう! お仕置きとして成人しても魔法少女を続けることを命じます!!」
「そんなー」
エミリーはパワハラ上司のせいでいつも大変ですね。彼女の活躍はこれからも続いていきます。
(おしまい)
「やっと話題の回まで見れたー。この作画もこれはこれで味があるよね」
今日は待ちに待った日曜日。中学受験をしない絵美里ちゃんはお母さんのタブレット端末を借りて定額制動画配信サイトのアニメを見ています。一昔前に放映されていた深夜アニメに出てきた作画崩壊にはシュールな味わいがあったようです。
『魔法少女エミリーよ、そんなことをしている場合ではありません』
「どうしたのタカミン……じゃなくて女王様? こんな所に一体何のご用ですか?」
勉強机の上空に出現したのはいつもの使い魔ではなく、異世界シニカルランドを統べる女王様の立体映像でした。女王様は魔法の力で自らの姿を絵美里ちゃんの部屋に投影し、指令を伝えようとしているのです。とりあえず魔法って言っとけば何でも許されるのがファンタジーのいい所ですね。
『この地球と同じ世界、外宇宙の惑星に住む異星人たちが、何らかの理由で地球を滅ぼそうとしています。地球が滅んだところでシニカルランドには何の影響もありませんが、シニカルエナジーの供給源が失われることは避けたいのです。今からあなたを異星人のもとに転送しますから、異星人を説得して地球を救いなさい。頼みましたよ』
「えっ、今アニメがいい所なんですけどうわあああああ」
女王様は指令を伝えると異世界から魔力を放ち、絵美里ちゃんを外宇宙の惑星へとワープさせました。部屋着姿の絵美里ちゃんは自室から姿を消し、女王様は彼女の無事を祈りつつ普段のお仕事に戻りました。パワハラ気質はいつも通りですね。
時は少し戻り、現場は外宇宙の惑星です。
「太陽系第三惑星地球を滅ぼす手立ては整った。後は他の惑星への影響を抑えるための準備が必要だ」
『ブラックホール発生装置はいつでも始動できますが、地球消滅後の処置には気を配る必要があります。しばしお待ちください』
この惑星は全体が機械化されていて、はるか昔に何者かによって造られた機械生命体たちによって支配されていました。彼らは同じ宇宙にあるあらゆる星々を監視し、宇宙全体にとってリスクとなり得る知的生命体は先んじて滅ぼすことを使命としていました。
惑星全体を統べる円筒状のマザーコンピューターは4本の腕を持つ研究者の機械生命体と通信し、地球の中心部にブラックホールを発生させて地球と人類を消滅させる手立てについて相談していました。
「現在の地球人に罪はないが、これから数千年という時の中で、彼らは銀河系を食い潰し始める。我々にはこの宇宙全体を守る使命があるのだ」
通信を切ると、マザーコンピューターは地球人への罪の意識を感じつつも自らの決断を呟きました。
「お忙しいところ恐縮なんですけど、ちょっといいですか? 私、地球から来た魔法少女のエミリーっていいます」
「何だと、地球人は生命体をこの惑星にまでワープさせることができるのか!? 文明の発達を見誤っていたか……」
ワープ中に魔法少女エミリーへの変身を済ませ、異星人と話せるよう魔法を使っていた絵美里ちゃんはマザーコンピューターの後方から話しかけました。シニカルランドからの使者に過ぎないのに地球人代表と勘違いされてしまったようです。
「文明の発達とか正直よく分からないんですけど、宇宙人さんたちは地球を滅ぼしたいって聞きました。外宇宙の宇宙人さんがそこまで考えるからには何か理由があると思うので、聞かせて貰えませんか?」
「わざわざ来てくれた客人には事情を説明する他あるまい。我々はこの宇宙全体を守るために……」
マザーコンピューターはエミリーに自分たちの使命と地球の文明を放置した場合のリスクについて説明し、これから地球を消滅させるが他の星々に被害をもたらすことはないと宣言しました。
「地球人は自らの惑星の中でも戦争を繰り返し、無尽蔵に人口を増やして資源を食い潰す。このような生命体が銀河系に進出すれば、やがては宇宙全体を破滅に追い込みかねないのだ」
「その理屈は分かりますし否定できませんけど、宇宙人さんは宇宙全体を守りたいんじゃないんですか?」
「どういうことだ?」
「宇宙全体を守るために地球を滅ぼすって言いますけど、宇宙全体には地球も含まれるはずですよね。地球を滅ぼした時点で宇宙人さんは宇宙全体を守れてないですし、本当に使命を果たしたいなら地球を温存した上で人類の危険性を抑制するのが先なんじゃないですか? まあ人類なんて放っておいてもそのうち自滅するでしょうし、積極的な介入は諦めて」
「君の言うことには一理あるな。よし、地球人に高度な文明を与えてしまうリスクはあるが、直接の交渉を試みてみよう」
「いやちょっと、話はまだ終わって」
「今から我々の使者を地球に送り込み、地球人の文明を監視できるか確かめる。この度は対話の機会を与えてくれて感謝する。お礼に君を地球まで転送しよう」
「別に自分で帰れまうわあああああ」
マザーコンピューターはそう言うとエミリーに感謝を伝え、相手の了解も得ずにエミリーを元いた場所へとワープさせました。1日に2回も強制ワープさせられて災難ですね。
異星人たちはそれから使者を乗せた宇宙船を地球にワープさせ、外宇宙の機械生命体として地球人との平和的交流を行いたいと提案しました。宇宙人の来訪に地球ではしばらく混乱が続きましたが武力衝突に至ることはなく、機械生命体たちは地球人の監視という名目で地球観光を楽しむようになりました。人類にも様々なタイプの人がいると理解してくれたようです。
地球人と異星人の未来を魔法の望遠鏡で見ながら、シニカルランドの女王様は怒りに身震いしていました。
「地球を救うという任務は果たしましたが、平和的な交流を樹立させてどうするのですか。友好関係が成立したせいでシニカルエナジーがどんどん減っていますよ」
「だって宇宙人が意外といい人だとは思わなかったんですよー。どうせなら地球侵略とかしてくれればよかったのに」
「たらればの話をしても仕方ないでしょう! お仕置きとして成人しても魔法少女を続けることを命じます!!」
「そんなー」
エミリーはパワハラ上司のせいでいつも大変ですね。彼女の活躍はこれからも続いていきます。
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