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第2話 夢は未来の大文豪! 君も小説家になろう!!

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 東京都足立区に住む清水しみず絵美里えみりちゃんは小学4年生の女の子です。成績は中の上、顔面偏差値は58ぐらいで、クラスではそこそこ高めのスクールカーストを保っています。みんなも女の子と付き合うなら顔面偏差値55は欲しいよね。お勉強の偏差値は人によるけどね。


「今日はどんなこと呟いてるのかな。あれれー、この人FXにお金ぶっこんでから音沙汰がないよー?」

 宿題は帰宅後にささっと片付け、おやつに大好きな鮭とばを食べながら絵美里ちゃんはツィターの裏アカウントを見ています。東京大学を中退して資産運用で生きていくと宣言していた元女子大生のアカウントはとても面白かったようです。

「えみりちゃん! そんなことやってる場合じゃないよ!」
「どうしたのタカミン、イケメンアイドル歌手が彼女殴ってたスクープでも流れてたの?」

 勉強机の上空に出現したデフォルメ体型の小さなたかは、絵美里ちゃんの使い魔にしてパートナーのタカミンです。2回目なので一応紹介しました。

「栃木県にシニカルエナジーの発生源を感知したんだ! 今回はエナジーの量が多そうだから、頑張ってみて!」
「りょーかい、最近上手いことエナジー集められてないしね。じゃ、よろしくー」

 絵美里ちゃんはそう言うとタカミンの翼を右手で掴み、彼女の身体はタカミンと一緒に消えていきました。文章の使い回しですね。


 時は少し戻り、現場は栃木県内の広い一軒家です。

「AG文庫の大賞なら受かると思ったのに……ええい、気を落とさずに雷撃大賞を目指して頑張るぞ」
「おとうさん、ようちえんでおえかきのしょうじょうをもらったんだけど」
「悪いけど、今日は小説を書くのに専念したいんだ。賞状はお母さんに見せてきなさい」

 このご家庭のご主人は両親の後を継いで八百屋を経営していて、まだ27歳だけど幼稚園児の娘さんがいます。何がとは言わないけどそれらしいですね。
 ご主人は中学生の頃からずっと小説家になりたいと考えていて、高校生になってから現在に至るまでいくつもの小説を新人賞に応募していますが、受賞に至った作品は一つもありませんでした。


「くそう、俺はこんなに小説を書いているのに、どうして受賞できないんだ。もっと下手な奴がいくらでも受賞してるじゃないか」

 八百屋の定休日なのに娘さんとも遊ばず小説を書いていたご主人の前に、そこそこかわいい小さな女の子とデフォルメ体型の鷹が現れました。

「こんにちはー、お悩みを聞きにきました」
「き、君、どこから入ったんだ! 娘の知り合いって訳でもなさそうだし……」

 小さな書斎に突然現れた女の子を見て、ご主人はとても驚きました。小さな娘さんがいるので流石にロリコンのはないようです。あったらあったで問題ですね。

「それはともかく、おじさんは何かお悩みがあるんでしょう? 私、魔法少女のエミリーっていいます」
「魔法少女? 冗談を言われても困るけど、悩みがあるのは確かだね。実はかくかくしかじかで……」

 今日の絵美里ちゃんは既に魔法少女エミリーに変身していて、さっさと本題に入ろうとしました。
 ご主人は自分の抱えている悩みをエミリーに説明し、これまで何十本もの小説を書いて新人賞に応募したのにどうしてもプロ作家になれないと嘆きました。

「私も小説はたまに読みますけど、ちょっと見せて貰ってもいいですか?」
「もちろん。紙の本じゃないけど、テキストファイルを開くね」

 興味本位で頼んだエミリーに、ご主人は笑顔で頷くと過去の応募作品の文章を見せてくれました。
 経験豊富なだけあってご主人の文章はとても上手で、独創性はあまりありませんが小説としてはちゃんと成立していました。


「ちょっと確認したいんですけど、この作品はどこかで公開されてますか?」
「そんなことはしないよ。僕の目標は新人賞を受賞してプロ作家になることだから、同人作家みたいな真似はできないね」
「あの、そんなこと言って何になるんですか?」
「えっ?」

「おじさんはせっかく沢山の小説を書いたのに、ほとんど誰にも読まれてないじゃないですか。新人賞も結構ですけど、こんなに作品があるならインターネット上で公開して、読者の反応を見てみるべきなんじゃないですか? それで受けないならそれまでですし、人気になるようなら万々歳です。まあ才能があるかと言うと微妙ですし、この機会にプロ作家の夢なんて諦め」
「そうだね、僕は本当に大切なものを見失っていたよ」
「いやちょっと、話はまだ終わって」
「今からこれまでの応募作品を全部小説投稿サイトで公開して、読者の反応を見てみるよ! それで自分の才能を見極めるんだ!!」

 ご主人はそう言うとパソコンに食らいつき、エミリーのことなど忘れてパソコンのキーボードを叩き始めました。


 ご主人はそれから多作にして速筆なウェブ小説家として有名になり、知名度を得たことで小さな出版社から小説の単行本を出版できました。さっぱり売れなかったため商業作品はその1冊で終わってしまいましたが、成功体験を得たことによりご主人は小説を大切な趣味と考えて生きていくようになりました。


 彼の未来を魔法の望遠鏡で見ながら、シニカルランドの女王様は額に青スジを立てていました。

「エミリー、あなた最近仕事をなめていませんか。あのような痛い人間はもっと追い詰めるべきでしょう」
「小さな娘さんもいますし、私もちょっと手加減したんですよ。タカミンのリサーチにも問題があるんじゃないかと」
「人のせいにするんじゃありません! お仕置きとしてエントリーシート100枚の手書きを命じます!!」
「そんなー」


 エミリーは優しい女の子ですね。魔法少女エミリーの活躍を次回も応援してください。

 (つづく)
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