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2021年7月 極楽天使めでぃかる☆エンジェルもしくは薬師寺龍之介の新たな世界
第5話 女装とユーチューバー
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「それで、今回私がわざわざここまで来た理由なんですけど……龍之介君、女装とユーチューバーに興味ない?」
「はいっ?」
双葉さんが何を考えているのか全く分からないが、前置きの質問であるのは確からしいのでボクはうろたえつつ答えた。
「女装は興味ないし前に大学のイベントでやらされたことしかないけど、ユーチューバーは割と見てます。といってもゲームの攻略動画とかでネットアイドルみたいなのは全然知らないけど」
最近はバーチャルYoutuber(Vtuber)という仮想人格のネットアイドルも流行しているらしいがたいてい美少女キャラクターだし、ボクには二次元のキャラクターに恋する趣味がそもそもなかった。
「なるほど、そういうレベルなんですね。余計な偏見がないならむしろ好条件! 色々グッズ持ってきたんで今から女装して私と一緒にユーチューバーの練習しましょう。ちょっとしたお金儲けになりまっせ~」
「いや何言ってるんですか! ボクは女装なんてしたくないし自分の顔を全世界にさらすとか死んでもごめんですよ!!」
ボクは自分の性的指向のこともあって以前からインターネットでの発信には忌避感が強く、ツィターなどのSNSでは友達や有名人の投稿を見ることしかしていない。
ましてや自分の顔を出して動画配信するなど絶対に嫌で、ボクは初対面の相手につい苦手な大声を上げてしまった。
「龍之介さん、あなた自分の立場分かってます? 私、公祐君の幼馴染だったんですよ? それこそお互いおねしょしてた頃から交流があったんですよ?」
「そうなんですか? それ以前に双葉さん、ボク君のプロフィール全然分かってないんですけど……」
「ありゃ、そういえばまだ自己紹介してなかったよね。ごめーん」
完全に順番が前後しているが双葉さんはそう言うと巨大なボストンバッグからパンフレットらしきものを取り出し、ボクが見られるようにリビングテーブルの上に置いて自己紹介を始めた。
「繰り返しになるけど私の名前は双葉里美。今は21歳で関可大学の経営学部3回生です。で、こういう機種を全国展開しているのが私の実家の会社。『極楽天使めでぃかる☆エンジェル』は現在最新機種を展開中!」
「この機種? は知らないけどパチンコ会社のツインズっていうのは聞いたことあるよ。ボクはそもそもパチンコやったことないけど……」
コウ君と交際し始めてからもうすぐ2年になるが、ボク自身はパチンコ店の空気にはどうしても馴染めず今の今まで遊んだことはなかった。
それでも「ツインズ」というパチンコ会社はコウ君から名前を聞いたことがあり、コウ君の実家である「ホフマン」と並ぶ有名企業のはずだった。
「まあめでぃエンはパチスロなんだけど、それはどっちでもいいでしょう。で、私の実家は大阪に本社を置く企業だから公祐君の実家とはライバル企業同士で付き合いがあったの。公祐君は昔から勉強も運動もできたし男らしいナイスガイだったから私ずっと片思いしてたのよ? それこそお互い大学生になったら付き合ってって言いたかったのに彼は私が大学生になってすぐにあなたと付き合い始めて、同時にゲイだったってカミングアウトされた私の気持ち想像できる? 高校卒業まで18年間の努力がパアよ?」
「いや、それはまあ申し訳ないです……」
コウ君がゲイである以上はボクと付き合わなかったにしても結果は一緒だったと思うが、双葉さんが傷ついた気持ちは理解できた。
「だからその罪滅ぼしとして、龍之介君には私と一緒にユーチューバーをやって貰います。個人情報は絶対に明かさないし女装したまま出て貰うから身バレは多分大丈夫。説明遅れたけどユーチューバー活動は私の経営学部生としてのフィールドワークも兼ねてるからそもそも半年ぐらいでやめるつもり。ねっ、これならいいでしょ?」
「身バレが大丈夫かは分かんないけど、そういう事情なら一緒にユーチューバーやるのは別にいいですよ。土日は付き合えると思うし、ボクはバイトやってないからお小遣いが稼げると助かるし。でも女装だけはどうにも……」
先述の通り以前に大学祭で新入生相手にメイド服を着て余興をやらされたことはあったが、あの時も自分の中で違和感は拭えなかったのでもう一度女装をしてみる気にはなれなかった。
「男は度胸、何でもやってみるものよ! 食わず嫌いせずに私が持ってきた衣装を着てみて。まずはオーソドックスに女子高生の制服にしといたから」
「ええー、着てみるだけですよ……」
そう言うとボクは双葉さんからコスプレ衣装を受け取り、さっさとリビングを出て自室で着替えようとした。
その時。
「ちょっと、何一人で行こうとしてるの!? 女装っていうのは単に女の子の服を着るだけじゃ駄目なの! まずお化粧するから下着姿になって私と洗面所に来て!!」
「えっ、あっ、あーれー」
双葉さんは大声でそう言うとボクの外着を無理やり脱がせ、そのままボクをシャツとトランクスだけの姿にして洗面所に連れていった。
そこでボクは彼女に徹底的なメイクを施され、その場で女子高生の制服を着せられ……
「あっ……かわいい?」
「でしょー? 龍之介君は素材がすごくいいからちゃんとメイクすれば綺麗な女の子になれるの! さっ、早速ライブ配信の予行演習よ!!」
そのままボクは自室に連行され、双葉さんが持参した撮影機材でライブ配信の練習をさせられた。
動画の背景にボクの部屋の様子が映っているのは大丈夫なのかと聞いてみると今回は予行演習なので実際にYoutubeに投稿することはせず、次回以降は双葉さんが住んでいる高級マンションの一室で収録を行うとのことだった。
「はいっ?」
双葉さんが何を考えているのか全く分からないが、前置きの質問であるのは確からしいのでボクはうろたえつつ答えた。
「女装は興味ないし前に大学のイベントでやらされたことしかないけど、ユーチューバーは割と見てます。といってもゲームの攻略動画とかでネットアイドルみたいなのは全然知らないけど」
最近はバーチャルYoutuber(Vtuber)という仮想人格のネットアイドルも流行しているらしいがたいてい美少女キャラクターだし、ボクには二次元のキャラクターに恋する趣味がそもそもなかった。
「なるほど、そういうレベルなんですね。余計な偏見がないならむしろ好条件! 色々グッズ持ってきたんで今から女装して私と一緒にユーチューバーの練習しましょう。ちょっとしたお金儲けになりまっせ~」
「いや何言ってるんですか! ボクは女装なんてしたくないし自分の顔を全世界にさらすとか死んでもごめんですよ!!」
ボクは自分の性的指向のこともあって以前からインターネットでの発信には忌避感が強く、ツィターなどのSNSでは友達や有名人の投稿を見ることしかしていない。
ましてや自分の顔を出して動画配信するなど絶対に嫌で、ボクは初対面の相手につい苦手な大声を上げてしまった。
「龍之介さん、あなた自分の立場分かってます? 私、公祐君の幼馴染だったんですよ? それこそお互いおねしょしてた頃から交流があったんですよ?」
「そうなんですか? それ以前に双葉さん、ボク君のプロフィール全然分かってないんですけど……」
「ありゃ、そういえばまだ自己紹介してなかったよね。ごめーん」
完全に順番が前後しているが双葉さんはそう言うと巨大なボストンバッグからパンフレットらしきものを取り出し、ボクが見られるようにリビングテーブルの上に置いて自己紹介を始めた。
「繰り返しになるけど私の名前は双葉里美。今は21歳で関可大学の経営学部3回生です。で、こういう機種を全国展開しているのが私の実家の会社。『極楽天使めでぃかる☆エンジェル』は現在最新機種を展開中!」
「この機種? は知らないけどパチンコ会社のツインズっていうのは聞いたことあるよ。ボクはそもそもパチンコやったことないけど……」
コウ君と交際し始めてからもうすぐ2年になるが、ボク自身はパチンコ店の空気にはどうしても馴染めず今の今まで遊んだことはなかった。
それでも「ツインズ」というパチンコ会社はコウ君から名前を聞いたことがあり、コウ君の実家である「ホフマン」と並ぶ有名企業のはずだった。
「まあめでぃエンはパチスロなんだけど、それはどっちでもいいでしょう。で、私の実家は大阪に本社を置く企業だから公祐君の実家とはライバル企業同士で付き合いがあったの。公祐君は昔から勉強も運動もできたし男らしいナイスガイだったから私ずっと片思いしてたのよ? それこそお互い大学生になったら付き合ってって言いたかったのに彼は私が大学生になってすぐにあなたと付き合い始めて、同時にゲイだったってカミングアウトされた私の気持ち想像できる? 高校卒業まで18年間の努力がパアよ?」
「いや、それはまあ申し訳ないです……」
コウ君がゲイである以上はボクと付き合わなかったにしても結果は一緒だったと思うが、双葉さんが傷ついた気持ちは理解できた。
「だからその罪滅ぼしとして、龍之介君には私と一緒にユーチューバーをやって貰います。個人情報は絶対に明かさないし女装したまま出て貰うから身バレは多分大丈夫。説明遅れたけどユーチューバー活動は私の経営学部生としてのフィールドワークも兼ねてるからそもそも半年ぐらいでやめるつもり。ねっ、これならいいでしょ?」
「身バレが大丈夫かは分かんないけど、そういう事情なら一緒にユーチューバーやるのは別にいいですよ。土日は付き合えると思うし、ボクはバイトやってないからお小遣いが稼げると助かるし。でも女装だけはどうにも……」
先述の通り以前に大学祭で新入生相手にメイド服を着て余興をやらされたことはあったが、あの時も自分の中で違和感は拭えなかったのでもう一度女装をしてみる気にはなれなかった。
「男は度胸、何でもやってみるものよ! 食わず嫌いせずに私が持ってきた衣装を着てみて。まずはオーソドックスに女子高生の制服にしといたから」
「ええー、着てみるだけですよ……」
そう言うとボクは双葉さんからコスプレ衣装を受け取り、さっさとリビングを出て自室で着替えようとした。
その時。
「ちょっと、何一人で行こうとしてるの!? 女装っていうのは単に女の子の服を着るだけじゃ駄目なの! まずお化粧するから下着姿になって私と洗面所に来て!!」
「えっ、あっ、あーれー」
双葉さんは大声でそう言うとボクの外着を無理やり脱がせ、そのままボクをシャツとトランクスだけの姿にして洗面所に連れていった。
そこでボクは彼女に徹底的なメイクを施され、その場で女子高生の制服を着せられ……
「あっ……かわいい?」
「でしょー? 龍之介君は素材がすごくいいからちゃんとメイクすれば綺麗な女の子になれるの! さっ、早速ライブ配信の予行演習よ!!」
そのままボクは自室に連行され、双葉さんが持参した撮影機材でライブ配信の練習をさせられた。
動画の背景にボクの部屋の様子が映っているのは大丈夫なのかと聞いてみると今回は予行演習なので実際にYoutubeに投稿することはせず、次回以降は双葉さんが住んでいる高級マンションの一室で収録を行うとのことだった。
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