気分は基礎医学

輪島ライ

文字の大きさ
上 下
268 / 338
2020年2月 病理学発展コース

268 期待と不安

しおりを挟む
 1月25日土曜日に京都河原町駅前のラブホテルで真琴と破局した剖良は無気力な状態のまま週末を過ごした。

 3月上旬の進級試験に向けて今は空き時間を見つけては勉強しなければならないのに、何をする気も起こらなかった。

 剖良は理子への思いを断ち切ったつもりが実際には未練にまみれていて、自分のことを本気で好きになってくれた真琴に対して誠実な態度を示せなかった。

 こんな自分にはもはや恋愛をする資格はないから、これからはそういったことには関わらず生きていこう。


 そう思っていたから、週明けの月曜日の午後に理子から着信が入った時も剖良はちょっとした用件だろうとしか思わなかった。

 毎週月曜日は弓道部の練習がある日だがこの日は午前中で授業が終わったため16時になるまでは学生研究に取り組んでいて、学生研究員の待機室で剖良は電話に出た。


「もしもし、解川です。ヤミ子、何かあったの?」
「さっちゃん、私、さっちゃんに大事な話があるの。なるべく早いうちに私の家まで来てくれない?」
「えっ?」

 最後に理子の自宅に行ったのは1回生の秋頃であり、大学生同士は一緒に遊ぶ際にわざわざ自宅まで行く必要もないのでそれきりになっていた。

 逆に言えば、理子が自分を自宅に呼ぶということはそれ相応の重大な用件ということになる。


「うん、全然いいよ。今日は部活があるから明日でもいい?」
「それで大丈夫。いきなり本当に申し訳ないけど、明日の放課後は一緒に帰ろうね。……あと、一つだけ聞いときたいんだけど」
「何?」

 声のトーンを落として前置きした理子に剖良は何気なく尋ねた。


「さっちゃんって今、付き合ってる人はいる? 女性でももしかすると男性でも、誰かいるなら教えて」

 飛んできた質問は剖良の心にクリーンヒットし、その瞬間に剖良の心拍数は急上昇した。


「えっ……ううん、誰とも付き合ってないよ。それがどうしたの?」
「そっか。来て貰う前にそれだけは聞いておきたかったから。じゃあ明日よろしくね」

 理子はそう言うとさっさと通話を切り、剖良は彼女から明日何を言われるのだろうと期待と不安が混合した感情にとらわれた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

ウェブ小説家見習いの第117回医師国家試験受験記録

輪島ライ
エッセイ・ノンフィクション
ウェブ小説家見習いの現役医学生が第117回医師国家試験に合格するまでの体験記です。 ※このエッセイは「小説家になろう」「アルファポリス」「カクヨム」「エブリスタ」に投稿しています。 ※このエッセイの内容は一人の医師国家試験受験生の受験記録に過ぎません。今後国試を受験する医学生の参考になれば幸いですが実際に自分自身の勉強法に取り入れるかはよく考えて決めてください。

妻がヌードモデルになる日

矢木羽研
大衆娯楽
男性画家のヌードモデルになりたい。妻にそう切り出された夫の動揺と受容を書いてみました。

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...