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2019年12月 生理学発展コース
242 気分はストレートな一言
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朝7時にスマホのアラームで目を覚ますと、同じベッドに壬生川さんの姿はなかった。
彼女は既に起きて洗面所で顔を洗っているらしく、昨夜使われたあれこれは処分されていた。
「おはよう、塔也。早く服着て朝ご飯行きましょ」
洗面所から出てきた壬生川さんは既に外行きの服に着替えていて、いつもの調子で僕にそう呼びかけた。
「あ、うん。シャワーもう浴びた?」
「ええ。……言っとくけど、一緒に入ったりしないからね」
昨夜のことは夢でも何でもなかったらしく、壬生川さんは答えながら顔をそむけた。
本音ではもうちょっと彼女とイチャイチャしていたかったが、既にそういう雰囲気ではないので僕はやむなく一人でシャワーを浴びた。
今治インターナショナルホテルの朝食は標準的だがしっかりしたバイキングで、じゃこ天や魚介出汁のうどんなど地元の特産品も並べられていた。
運動して疲れた分だけ食欲はあり、僕は和食を中心に料理を取ると壬生川さんと向かい合ってテーブルに座った。
「このじゃこ天いいね。久々に食べるけどやっぱり美味しい」
「そうね……」
壬生川さんも色々な料理を取ってきて食べているが、どうにも彼女は朝から元気がない。
まだ寝ぼけているのか昨夜のことははっきり思い出せないが、何か彼女に辛い思いをさせてしまったのではないかと僕は心配していた。
「…………」
食事中、壬生川さんは何度も上の空になっては僕の顔をじっと見つめ、すぐに頭を振って目をそらした。
今の状態で何かあったのか聞くのも無粋だろうと考えて僕は黙々と朝食を口にした。
壬生川さんが何やら不安定な一方で僕は朝から目の前が光り輝いているような感覚が続いており、気分はとてもすっきりしていた。
向かい側の席に座る壬生川さんの姿は昨日までよりもずっと愛しく見えて、その感情は僕自身を幸せにしていた。
ほぼ無言で食事を終えると2人で客室まで戻り、チェックアウトの11時まで僕らは再び暇になった。
「壬生川さん、昨日は、その……ありがとう」
「……こちらこそ」
再びベッドに寝転んでいた壬生川さんに声をかけると彼女は無表情で返事をした。
「壬生川さんとこんな関係になれて僕は嬉しい。これからも、ずっと大事にするから」
あまりにも気障な台詞に自分自身恥ずかしくなりつつ僕は彼女にそう言った。
壬生川さんは寝たまま無言で頷き、これで良かったのだろうかと僕は再び不安になった。
それから彼女はベッドから上半身を起こし、
「じゃあ、塔也。あんたに聞きたいことがあるんだけど、いい?」
真剣な表情で尋ねた。
「もちろん。何でも聞いて」
その言葉を聞き、彼女はすっと息を吸うと、
「私とセ……じゃなくて、そういうことしたんだから結婚してくれるのよね?」
「えっ!?」
ストレートな一言を放った。
「私をお母さんに会わせて私のおじいちゃんとおばあちゃんに挨拶して、私のことずっと大事にしてくれるってそういうことでしょ?」
「いや、まあ、それは本当に光栄だけど……」
あまりにも飛躍しすぎた論理に僕は慌てて答えを探した。
「ほら、僕らまだ2回生だし結婚には早いって。婚約するにしてももっとちゃんと準備しないといけないし……」
「……っ!!」
教科書的な回答を口にすると、彼女は表情を引きつらせて頭から布団を被った。
「壬生川さん……?」
「何よ、あんたなんてもう知らない! 結婚してくれるならもう1回付き合ってあげようと思ってたのに!!」
「え、じゃあ結婚する」
「バカ!! 今更遅いっ!!」
それから壬生川さんは布団に隠れたまま出てきてくれず、僕は自分が間抜けさのせいで貴重なチャンスを失ったことを理解した。
彼女は既に起きて洗面所で顔を洗っているらしく、昨夜使われたあれこれは処分されていた。
「おはよう、塔也。早く服着て朝ご飯行きましょ」
洗面所から出てきた壬生川さんは既に外行きの服に着替えていて、いつもの調子で僕にそう呼びかけた。
「あ、うん。シャワーもう浴びた?」
「ええ。……言っとくけど、一緒に入ったりしないからね」
昨夜のことは夢でも何でもなかったらしく、壬生川さんは答えながら顔をそむけた。
本音ではもうちょっと彼女とイチャイチャしていたかったが、既にそういう雰囲気ではないので僕はやむなく一人でシャワーを浴びた。
今治インターナショナルホテルの朝食は標準的だがしっかりしたバイキングで、じゃこ天や魚介出汁のうどんなど地元の特産品も並べられていた。
運動して疲れた分だけ食欲はあり、僕は和食を中心に料理を取ると壬生川さんと向かい合ってテーブルに座った。
「このじゃこ天いいね。久々に食べるけどやっぱり美味しい」
「そうね……」
壬生川さんも色々な料理を取ってきて食べているが、どうにも彼女は朝から元気がない。
まだ寝ぼけているのか昨夜のことははっきり思い出せないが、何か彼女に辛い思いをさせてしまったのではないかと僕は心配していた。
「…………」
食事中、壬生川さんは何度も上の空になっては僕の顔をじっと見つめ、すぐに頭を振って目をそらした。
今の状態で何かあったのか聞くのも無粋だろうと考えて僕は黙々と朝食を口にした。
壬生川さんが何やら不安定な一方で僕は朝から目の前が光り輝いているような感覚が続いており、気分はとてもすっきりしていた。
向かい側の席に座る壬生川さんの姿は昨日までよりもずっと愛しく見えて、その感情は僕自身を幸せにしていた。
ほぼ無言で食事を終えると2人で客室まで戻り、チェックアウトの11時まで僕らは再び暇になった。
「壬生川さん、昨日は、その……ありがとう」
「……こちらこそ」
再びベッドに寝転んでいた壬生川さんに声をかけると彼女は無表情で返事をした。
「壬生川さんとこんな関係になれて僕は嬉しい。これからも、ずっと大事にするから」
あまりにも気障な台詞に自分自身恥ずかしくなりつつ僕は彼女にそう言った。
壬生川さんは寝たまま無言で頷き、これで良かったのだろうかと僕は再び不安になった。
それから彼女はベッドから上半身を起こし、
「じゃあ、塔也。あんたに聞きたいことがあるんだけど、いい?」
真剣な表情で尋ねた。
「もちろん。何でも聞いて」
その言葉を聞き、彼女はすっと息を吸うと、
「私とセ……じゃなくて、そういうことしたんだから結婚してくれるのよね?」
「えっ!?」
ストレートな一言を放った。
「私をお母さんに会わせて私のおじいちゃんとおばあちゃんに挨拶して、私のことずっと大事にしてくれるってそういうことでしょ?」
「いや、まあ、それは本当に光栄だけど……」
あまりにも飛躍しすぎた論理に僕は慌てて答えを探した。
「ほら、僕らまだ2回生だし結婚には早いって。婚約するにしてももっとちゃんと準備しないといけないし……」
「……っ!!」
教科書的な回答を口にすると、彼女は表情を引きつらせて頭から布団を被った。
「壬生川さん……?」
「何よ、あんたなんてもう知らない! 結婚してくれるならもう1回付き合ってあげようと思ってたのに!!」
「え、じゃあ結婚する」
「バカ!! 今更遅いっ!!」
それから壬生川さんは布団に隠れたまま出てきてくれず、僕は自分が間抜けさのせいで貴重なチャンスを失ったことを理解した。
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