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2019年11月 生化学発展コース
216 気分は悲しい知らせ
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朝から夕方まで大変盛り上がった大学祭も18時を回ると来客の姿は減っていき、20時から開催されたくじ引き大会を最後に今年度の大学祭は閉会となった。
閉会式の終了後は会場で用いられた机や椅子、テントなどの機材を片づけるために全学生が動員され、僕も他の学生と協力しつつ既にいくつもの机を第二キャンパスの倉庫まで運んでいた。
「チャラミツ君、ちょっと一緒に机運んでくれない?」
「全然いいっすけど先輩なら一人でも持てるんじゃないっすか? どうせ運ぶなら俺は美人の先輩と」
「力がなくたって喧嘩は強いんだよ……?」
「わー! すみませんすみません俺が悪かったです」
ヤッ君先輩がいつものノリで計良君を手伝わせているのを見つつ僕も次に運べそうな机を探していた。
「お疲れー。カナやん、その机手伝おうか?」
「ええの? じゃあ頼むわ、よっこいしょ」
カナやんが長机の片側に手をかけて周囲を見回していたので僕は反対側を両手で持って一緒に長机を持ち上げた。
「今更やけど今日はたこ焼き買いに来てくれてありがとな。林君とか山形さんも買いに来てくれて、壬生川さんなんか女子バスケ部員を何人も連れて来てくれてめっちゃ嬉しかったわ」
「そうなんだ。こちらこそおいしいたこ焼きを作ってくれてありがとう」
壬生川さんは立場上僕を連れて行けなかった代わりに女子バスケ部員を誘って買いに行ったらしく、カナやんも率直に喜んでいたようだった。
「そういえば、珠樹君は今日来てたの? 去年は来てくれたって聞いたけど」
「うちはどっちでもええよって言ってんけど、勉強せなあかんから今年は行かんって決めててんって。まあうちは来年も多分たこ焼き作るし、その時でええんちゃうかな」
「確かに。その時には無事に医学生になれてたらいいね」
「あはは、白神君も心の中で応援したってや」
彼との関係を前向きに考え始めたカナやんに、僕は笑顔で頷いた。
そのまま協力して長机を倉庫まで運び、僕らは既に置かれている長机の上にそれを裏返して重ねた。
「よいしょっと! ふー、疲れたね」
「白神君のおかげで助かったわ。また次の机を……ごめん、ちょっと携帯鳴ってるわ」
ポケットに入れていたスマホが鳴動していたのに気づき、カナやんは倉庫から出ると通路の隅で電話に出た。
「もしもし、おとん? どしたん、もうすぐ帰るけど……えっ?」
電話してきたのはお父さんらしく、慣れた様子で電話に出たカナやんはお父さんの話を聞いて凍りついた。
「あ……うん、帰れる、けど……ちょっと待ってな、またすぐ連絡するわ」
手短に答えて電話を切ったカナやんは、そのまま身体をふらつかせて通路の壁に背中をぶつけた。
「何かあったの?」
そんなにショックな内容だったのかと思って恐る恐る尋ねると、
「おじちゃんが……珠樹のお父さんが……仕事中に倒れて、病院に運ばれたんやって。……心肺蘇生しても反応がなくて、せやから、多分……」
カナやんは生気のない声でそこまで話し、沈痛な表情でうつむいた。
「おとんはすぐ来て欲しいって言うねんけど、でも……」
普段の生き生きした様子とは全く違った彼女の姿に、僕は必死で感情を抑えつつ、
「……今すぐ、帰って。後は僕がやるし、ここには何十人も学生がいるから」
「……」
「早く行こう。叔父さんはもう助からないかも知れないけど、もしそうなった時に珠樹君を支えられるのはカナやんだけだから」
彼女が今すべきことを端的に伝えた。
「……うん」
カナやんは短く答えると両目からぶわっと涙を流し、それに構うことなく第二キャンパスの通路を全速力で走り始めた。
ちょうど長机を運搬していた学生が陸上部員の全力疾走に驚くのを見ながら、僕は心の中で彼女に声援を送った。
閉会式の終了後は会場で用いられた机や椅子、テントなどの機材を片づけるために全学生が動員され、僕も他の学生と協力しつつ既にいくつもの机を第二キャンパスの倉庫まで運んでいた。
「チャラミツ君、ちょっと一緒に机運んでくれない?」
「全然いいっすけど先輩なら一人でも持てるんじゃないっすか? どうせ運ぶなら俺は美人の先輩と」
「力がなくたって喧嘩は強いんだよ……?」
「わー! すみませんすみません俺が悪かったです」
ヤッ君先輩がいつものノリで計良君を手伝わせているのを見つつ僕も次に運べそうな机を探していた。
「お疲れー。カナやん、その机手伝おうか?」
「ええの? じゃあ頼むわ、よっこいしょ」
カナやんが長机の片側に手をかけて周囲を見回していたので僕は反対側を両手で持って一緒に長机を持ち上げた。
「今更やけど今日はたこ焼き買いに来てくれてありがとな。林君とか山形さんも買いに来てくれて、壬生川さんなんか女子バスケ部員を何人も連れて来てくれてめっちゃ嬉しかったわ」
「そうなんだ。こちらこそおいしいたこ焼きを作ってくれてありがとう」
壬生川さんは立場上僕を連れて行けなかった代わりに女子バスケ部員を誘って買いに行ったらしく、カナやんも率直に喜んでいたようだった。
「そういえば、珠樹君は今日来てたの? 去年は来てくれたって聞いたけど」
「うちはどっちでもええよって言ってんけど、勉強せなあかんから今年は行かんって決めててんって。まあうちは来年も多分たこ焼き作るし、その時でええんちゃうかな」
「確かに。その時には無事に医学生になれてたらいいね」
「あはは、白神君も心の中で応援したってや」
彼との関係を前向きに考え始めたカナやんに、僕は笑顔で頷いた。
そのまま協力して長机を倉庫まで運び、僕らは既に置かれている長机の上にそれを裏返して重ねた。
「よいしょっと! ふー、疲れたね」
「白神君のおかげで助かったわ。また次の机を……ごめん、ちょっと携帯鳴ってるわ」
ポケットに入れていたスマホが鳴動していたのに気づき、カナやんは倉庫から出ると通路の隅で電話に出た。
「もしもし、おとん? どしたん、もうすぐ帰るけど……えっ?」
電話してきたのはお父さんらしく、慣れた様子で電話に出たカナやんはお父さんの話を聞いて凍りついた。
「あ……うん、帰れる、けど……ちょっと待ってな、またすぐ連絡するわ」
手短に答えて電話を切ったカナやんは、そのまま身体をふらつかせて通路の壁に背中をぶつけた。
「何かあったの?」
そんなにショックな内容だったのかと思って恐る恐る尋ねると、
「おじちゃんが……珠樹のお父さんが……仕事中に倒れて、病院に運ばれたんやって。……心肺蘇生しても反応がなくて、せやから、多分……」
カナやんは生気のない声でそこまで話し、沈痛な表情でうつむいた。
「おとんはすぐ来て欲しいって言うねんけど、でも……」
普段の生き生きした様子とは全く違った彼女の姿に、僕は必死で感情を抑えつつ、
「……今すぐ、帰って。後は僕がやるし、ここには何十人も学生がいるから」
「……」
「早く行こう。叔父さんはもう助からないかも知れないけど、もしそうなった時に珠樹君を支えられるのはカナやんだけだから」
彼女が今すべきことを端的に伝えた。
「……うん」
カナやんは短く答えると両目からぶわっと涙を流し、それに構うことなく第二キャンパスの通路を全速力で走り始めた。
ちょうど長机を運搬していた学生が陸上部員の全力疾走に驚くのを見ながら、僕は心の中で彼女に声援を送った。
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