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2019年11月 生化学発展コース
210 気分は占い師
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「それはそれとして、占って貰ってもいいかな?」
「もちろんっす! とりあえず相性診断から行きます?」
「じゃあそれでお願いします」
計良君はその言葉を聞いてすぐさま立ち直り、テーブルの向かい側に置かれているパイプ椅子に座るよう僕に促した。
占いのテーブルの中央には紫色の布に載せられた水晶玉がありその隣にはノートパソコンが置かれている。
AI占いという宣伝文句からすると計良君の占いはパソコンを用いて行われるのだろう。
「この相性診断では白神先輩と恵理ちゃん先輩の個人情報を入力することで統計的なデータに基づいたお似合い度判定が自動的に行われます。個人情報って言っても判定が終わったら自動消去されますし基本的なものだけなんで、個人情報保護とかは心配されなくて大丈夫っすよ」
「へえー、面白そうだね」
占いというのは一般的に迷信と思われがちだが統計的なデータに基づくお似合い度判定であれば信憑性が高そうだと思われた。
これはかなり後になってから聞いたことだが計良君は中高生の頃からパソコン操作やプログラミングなどIT関連の才能に秀でており、この時点で社会医学教室の一つであり統計学を直接取り扱う公衆衛生学教室への所属を考え始めていたらしい。
また、道心君は教養課程の授業で心理学や行動科学について学ぶ内にそれらの学問への興味を持ったらしく、彼もこの時点で心理学・行動科学教室を何度も見学しに行っていたという。既に法医学教室への所属を決めていた黒根さんと合わせて、研究医養成コースの1回生は3名とも基礎医学ではなく社会医学の道に進もうとしていたのだった。
「じゃあ始めますね。お2人の個人情報を項目別に聞いてくんで、白神先輩から恵理ちゃん先輩の順番で答えていってください。まず、お2人の生まれ故郷は? 市区町村までお願いします」
「えーと、2人とも愛媛県松山市です」
「らしいっすね。現在のご住所は?」
「僕は大阪府皆月市、壬生川さんは大阪府枚方市……」
計良君は個人情報を聞き取りつつパソコンに素早く打ち込んでいき、この調子だとスムーズに占いが済みそうだと思われた。
「ここからが大事な情報っすよ。お2人のきょうだい構成は?」
「僕は一人っ子で、えーと、壬生川さんも一人っ子のはず」
「OKっす。次にお2人の血液型は?」
「えっ? 僕はA型で、壬生川さんは……ごめん知らないです」
彼女とはこれまでお互いの血液型の話をしたことがなく、その質問には答えられなかった。
「分かりました、空欄にしときますね。じゃあお互い付き合うのは何人目っすか?」
「僕は1人目で、壬生川さんは……多分、1人目、なのかな?」
「自信ないっすね……お2人ともペットは飼われてます?」
「僕は実家でも下宿でも飼ってないけど、壬生川さんのことは……」
それからも度々答えられない質問が続き、僕は本当に彼女と付き合っているのだろうかと若干不安になった。
「いやー、全然答えられなくてごめんね。情けないです」
「本来はカップルで協力しつつ答えて貰うものなんで落ち込まれなくて大丈夫っすよ。……あ、出ました。お似合い度は80%±20%です」
「結構ざっくりしてるね」
「すいません、空欄が多いとこうなるんです……」
微妙な結果になってお互い苦笑していると、後方のテント入り口から誰かが入ってきた。
「すみません、占いお願いします……って白神君?」
「カナやん! ちょうど今終わった所だよ」
入ってきたのは今月お世話になっているところのカナやんで、出店を抜けてきたのか衣服からはたこ焼きの香りが漂っていた。
「どーもどーもカナちゃん先輩。占いは色々ありますけど何にします? 金運占いとか勉強占いもありますよ」
「相性診断! AI相性診断で頼むわ!」
席を立ってテントを出ようとするとカナやんは僕が離れたパイプ椅子に勢いよく腰かけつつ言った。
「分っかりましたー。お2人の生まれ故郷は?」
「大阪府大阪市天王寺区。住所も同じ天王寺区です」
「おおっ、幼馴染とかっすかね。お2人のきょうだい構成は?」
「2人とも一人っ子です」
「なるほどなるほど、血液型も分かります?」
「2人ともO型!!」
それからカナやんは元気よくそれぞれの項目について答えていき、相手が相手だからかどの質問にも完璧に答えられていた。
そのやり取りが盛り上がり過ぎていて僕もつい最後まで聞いてしまい、ついでに珠樹君の個人情報に意味もなく詳しくなった。
「これはすごい、お似合い度100%で誤差も±0!! 最高のお相手っすよ!!」
「えへへ、やっぱりお似合いなんかな……」
嬉々として結果を伝える計良君と表情をほころばせるカナやんを見て、これはこれで彼女も幸せなのではないかと思った。
それはそれとして計良君に真相を伝えたらどういう反応になるのかは気になる。
「もちろんっす! とりあえず相性診断から行きます?」
「じゃあそれでお願いします」
計良君はその言葉を聞いてすぐさま立ち直り、テーブルの向かい側に置かれているパイプ椅子に座るよう僕に促した。
占いのテーブルの中央には紫色の布に載せられた水晶玉がありその隣にはノートパソコンが置かれている。
AI占いという宣伝文句からすると計良君の占いはパソコンを用いて行われるのだろう。
「この相性診断では白神先輩と恵理ちゃん先輩の個人情報を入力することで統計的なデータに基づいたお似合い度判定が自動的に行われます。個人情報って言っても判定が終わったら自動消去されますし基本的なものだけなんで、個人情報保護とかは心配されなくて大丈夫っすよ」
「へえー、面白そうだね」
占いというのは一般的に迷信と思われがちだが統計的なデータに基づくお似合い度判定であれば信憑性が高そうだと思われた。
これはかなり後になってから聞いたことだが計良君は中高生の頃からパソコン操作やプログラミングなどIT関連の才能に秀でており、この時点で社会医学教室の一つであり統計学を直接取り扱う公衆衛生学教室への所属を考え始めていたらしい。
また、道心君は教養課程の授業で心理学や行動科学について学ぶ内にそれらの学問への興味を持ったらしく、彼もこの時点で心理学・行動科学教室を何度も見学しに行っていたという。既に法医学教室への所属を決めていた黒根さんと合わせて、研究医養成コースの1回生は3名とも基礎医学ではなく社会医学の道に進もうとしていたのだった。
「じゃあ始めますね。お2人の個人情報を項目別に聞いてくんで、白神先輩から恵理ちゃん先輩の順番で答えていってください。まず、お2人の生まれ故郷は? 市区町村までお願いします」
「えーと、2人とも愛媛県松山市です」
「らしいっすね。現在のご住所は?」
「僕は大阪府皆月市、壬生川さんは大阪府枚方市……」
計良君は個人情報を聞き取りつつパソコンに素早く打ち込んでいき、この調子だとスムーズに占いが済みそうだと思われた。
「ここからが大事な情報っすよ。お2人のきょうだい構成は?」
「僕は一人っ子で、えーと、壬生川さんも一人っ子のはず」
「OKっす。次にお2人の血液型は?」
「えっ? 僕はA型で、壬生川さんは……ごめん知らないです」
彼女とはこれまでお互いの血液型の話をしたことがなく、その質問には答えられなかった。
「分かりました、空欄にしときますね。じゃあお互い付き合うのは何人目っすか?」
「僕は1人目で、壬生川さんは……多分、1人目、なのかな?」
「自信ないっすね……お2人ともペットは飼われてます?」
「僕は実家でも下宿でも飼ってないけど、壬生川さんのことは……」
それからも度々答えられない質問が続き、僕は本当に彼女と付き合っているのだろうかと若干不安になった。
「いやー、全然答えられなくてごめんね。情けないです」
「本来はカップルで協力しつつ答えて貰うものなんで落ち込まれなくて大丈夫っすよ。……あ、出ました。お似合い度は80%±20%です」
「結構ざっくりしてるね」
「すいません、空欄が多いとこうなるんです……」
微妙な結果になってお互い苦笑していると、後方のテント入り口から誰かが入ってきた。
「すみません、占いお願いします……って白神君?」
「カナやん! ちょうど今終わった所だよ」
入ってきたのは今月お世話になっているところのカナやんで、出店を抜けてきたのか衣服からはたこ焼きの香りが漂っていた。
「どーもどーもカナちゃん先輩。占いは色々ありますけど何にします? 金運占いとか勉強占いもありますよ」
「相性診断! AI相性診断で頼むわ!」
席を立ってテントを出ようとするとカナやんは僕が離れたパイプ椅子に勢いよく腰かけつつ言った。
「分っかりましたー。お2人の生まれ故郷は?」
「大阪府大阪市天王寺区。住所も同じ天王寺区です」
「おおっ、幼馴染とかっすかね。お2人のきょうだい構成は?」
「2人とも一人っ子です」
「なるほどなるほど、血液型も分かります?」
「2人ともO型!!」
それからカナやんは元気よくそれぞれの項目について答えていき、相手が相手だからかどの質問にも完璧に答えられていた。
そのやり取りが盛り上がり過ぎていて僕もつい最後まで聞いてしまい、ついでに珠樹君の個人情報に意味もなく詳しくなった。
「これはすごい、お似合い度100%で誤差も±0!! 最高のお相手っすよ!!」
「えへへ、やっぱりお似合いなんかな……」
嬉々として結果を伝える計良君と表情をほころばせるカナやんを見て、これはこれで彼女も幸せなのではないかと思った。
それはそれとして計良君に真相を伝えたらどういう反応になるのかは気になる。
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