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2019年10月 解剖学発展コース
181 正直な気持ち
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それからはお互いのプロフィールに関する無難な話が続いて、剖良は学生研究と部活の話を中心に日常生活を語り真琴はサークル活動の話題に加えて就活に向けた学習や資格取得の経験について一通り話した。
剖良が熱心に語った医学研究の話を真琴は興味深く聞いてくれたが6年制大学の3回生と異なり4年制大学の3回生というのは就活に向けて具体的に動き始める時期であり、まだ学生気分が全く抜けていない剖良にとって真琴の姿は実際以上に大人びて見えた。
「上白石さんはすごいですね。私なんて未だに高校生みたいな毎日を送ってるのに今から新聞社にまで出入りしてるなんて」
「いえいえ、文系大学は勉強をする所というよりも就職に向けて自分を鍛える所ですから。お医者さんは医学という高度な学問に基づいて沢山の患者さんを救う訳ですからその分だけ学生生活が長くて当然ですよ」
医学部医学科という世界を知らなくても論理的に医学生の生活を肯定してくれた真琴に、剖良は心が温かくなるのを感じた。
「ここでずっと話してるのもあれなので、ちょっとカラオケでも行きません? いくつかクーポン持ってるのでお安く済みますよ」
「ええ、ぜひ行きたいです。よろしくお願いします」
レズビアン同士という関係上カラオケボックスの方が深い話はしやすいと考え、真琴と剖良は割り勘でコーヒー代を払うと喫茶店を出た。
それから数十分後。
「へえー、剖良さんもノーマルな女の子に告白しちゃったんですか? お互いやらかしちゃってますね」
「そうなんです。……真琴さんも似たような経験が?」
マットルームの床に腰かけて低いテーブルに置かれたコップのおいしい水をこくこくと飲みながら、剖良は真琴に尋ねた。
「私は高校でも文化部に入ってたんですけどそこにすっごく美人でセクシーな先輩がいて、合宿の時に好きですってはっきり伝えたんです。その人は優しいので私を強く拒絶したり気味悪がったりはしなくて、気持ちは嬉しいけど付き合えないって言ってくれました。今でもその先輩とは友達ですけど、やっぱり告白を断られた時は辛かったですよ」
「…………」
カラオケの部屋に入ってからはお互いに露骨な話題で盛り上がるようになり、会話の流れで剖良は理子に失恋したことを正直に話していた。
真琴も高校生の頃に似たような経験をしたらしく、明るい調子で話してはいるが失恋の苦しみを味わったのはやはり辛い経験だったらしい。
「その先輩は少し前にようやく彼氏ができたらしいんですけど、私が失恋したのはずいぶん前なのでもう悔しいとも辛いとも思いませんでした。大好きな人だったからこそ彼氏と幸せになって欲しいと思いますけど、剖良さんは最初に失恋してから2年経ってないんですよね」
「……ええ。だから、まだ割り切れない気持ちが強いんです」
剖良の辛い気持ちを冷静に分析する真琴に剖良は暗い表情で答えた。
「これはもう他の人に言われてるかもですけど、ノーマルな女性に振られたことを思い悩むより今は新しい出会いを探しましょうよ。今日は私と出会うためにここまで来て頂きましたけど、この機会にお互い理想の相手について語り合いません? 例えば、剖良さんはその友達のどんな所がお好きだったんですか?」
「それ、いい考えですね。ええと、私があの子を好きだったのは……」
真琴の提案に賛同した剖良はそのまま理子の魅力的な所を次々に述べた。
顔が綺麗な所をはじめとして思いやりのある所、細かい気配りができる所、面倒見がよい所、家柄がよい所、とても知的な所といった長所を述べていった剖良に、真琴は笑顔で頷きながら話を聞いた。
「その友達って素晴らしい女性だったんですね。私も一度お会いしてみたいぐらいです」
「ええ、本当に最高な女の子なんです。真琴さんはその先輩のどこが好きだったんですか?」
「もちろん魅力的な所は沢山ありますよ。若干ツンデレな感じですが優しくて思いやりに溢れてますし、大学受験には二年間も浪人されてましたけど人間としては知的な人でした。それから何より……」
そこで真琴は一拍置いてから口を開き、
「おっぱいがとても大きくて、形も綺麗ですっごく柔らかかったです。それでいて余計なお肉もついてなくてスタイルが最高でした。元々美肌な上にお肌のお手入れもちゃんとされてて、いつかはあんな女性とベッドをご一緒したいですね」
にへらと笑みを浮かべながら、憧れていた先輩の最大の魅力を語った。
「…………」
相手の口から思いもよらぬ言葉が連発され、剖良は無言で表情を硬直させていた。
「剖良さん、もうちょっと正直になりません? 性格も家柄も知的さも確かに大切ですけどそれだけなら親友で十分なはずですよね。剖良さんはその人と恋人になりたかったんですから少なくとも性的な魅力を感じていたんでしょう? それを認めない限り、新しい恋は探せませんよ」
穏やかな笑みを浮かべて言った真琴に剖良は心を突き動かされた。
そして両目からじわりと涙を流しながら、剖良は口を開いた。
「……はい、その通りです。……私は、ヤミ子の胸を触りたかった。一緒に部屋のお風呂に入りたかったし、ベッドで愛し合いたかった。なのに、なのに……」
自分が理子と一番したかったことを彼女はこれから柳沢とするのだと想像してしまい、剖良は声を上げて泣き始めた。
両手で涙を拭う剖良を真琴は正面から優しく抱きしめた。
「剖良さん。今は好きなだけ泣いてください。泣いて、泣いて、気が済んだらその人のことは忘れましょう。私でよければいくらでもお相手します」
「……ありがとう、真琴さん」
腕の中の剖良へと静かに呼びかけた真琴に、剖良は涙声で感謝を伝えた。
剖良が熱心に語った医学研究の話を真琴は興味深く聞いてくれたが6年制大学の3回生と異なり4年制大学の3回生というのは就活に向けて具体的に動き始める時期であり、まだ学生気分が全く抜けていない剖良にとって真琴の姿は実際以上に大人びて見えた。
「上白石さんはすごいですね。私なんて未だに高校生みたいな毎日を送ってるのに今から新聞社にまで出入りしてるなんて」
「いえいえ、文系大学は勉強をする所というよりも就職に向けて自分を鍛える所ですから。お医者さんは医学という高度な学問に基づいて沢山の患者さんを救う訳ですからその分だけ学生生活が長くて当然ですよ」
医学部医学科という世界を知らなくても論理的に医学生の生活を肯定してくれた真琴に、剖良は心が温かくなるのを感じた。
「ここでずっと話してるのもあれなので、ちょっとカラオケでも行きません? いくつかクーポン持ってるのでお安く済みますよ」
「ええ、ぜひ行きたいです。よろしくお願いします」
レズビアン同士という関係上カラオケボックスの方が深い話はしやすいと考え、真琴と剖良は割り勘でコーヒー代を払うと喫茶店を出た。
それから数十分後。
「へえー、剖良さんもノーマルな女の子に告白しちゃったんですか? お互いやらかしちゃってますね」
「そうなんです。……真琴さんも似たような経験が?」
マットルームの床に腰かけて低いテーブルに置かれたコップのおいしい水をこくこくと飲みながら、剖良は真琴に尋ねた。
「私は高校でも文化部に入ってたんですけどそこにすっごく美人でセクシーな先輩がいて、合宿の時に好きですってはっきり伝えたんです。その人は優しいので私を強く拒絶したり気味悪がったりはしなくて、気持ちは嬉しいけど付き合えないって言ってくれました。今でもその先輩とは友達ですけど、やっぱり告白を断られた時は辛かったですよ」
「…………」
カラオケの部屋に入ってからはお互いに露骨な話題で盛り上がるようになり、会話の流れで剖良は理子に失恋したことを正直に話していた。
真琴も高校生の頃に似たような経験をしたらしく、明るい調子で話してはいるが失恋の苦しみを味わったのはやはり辛い経験だったらしい。
「その先輩は少し前にようやく彼氏ができたらしいんですけど、私が失恋したのはずいぶん前なのでもう悔しいとも辛いとも思いませんでした。大好きな人だったからこそ彼氏と幸せになって欲しいと思いますけど、剖良さんは最初に失恋してから2年経ってないんですよね」
「……ええ。だから、まだ割り切れない気持ちが強いんです」
剖良の辛い気持ちを冷静に分析する真琴に剖良は暗い表情で答えた。
「これはもう他の人に言われてるかもですけど、ノーマルな女性に振られたことを思い悩むより今は新しい出会いを探しましょうよ。今日は私と出会うためにここまで来て頂きましたけど、この機会にお互い理想の相手について語り合いません? 例えば、剖良さんはその友達のどんな所がお好きだったんですか?」
「それ、いい考えですね。ええと、私があの子を好きだったのは……」
真琴の提案に賛同した剖良はそのまま理子の魅力的な所を次々に述べた。
顔が綺麗な所をはじめとして思いやりのある所、細かい気配りができる所、面倒見がよい所、家柄がよい所、とても知的な所といった長所を述べていった剖良に、真琴は笑顔で頷きながら話を聞いた。
「その友達って素晴らしい女性だったんですね。私も一度お会いしてみたいぐらいです」
「ええ、本当に最高な女の子なんです。真琴さんはその先輩のどこが好きだったんですか?」
「もちろん魅力的な所は沢山ありますよ。若干ツンデレな感じですが優しくて思いやりに溢れてますし、大学受験には二年間も浪人されてましたけど人間としては知的な人でした。それから何より……」
そこで真琴は一拍置いてから口を開き、
「おっぱいがとても大きくて、形も綺麗ですっごく柔らかかったです。それでいて余計なお肉もついてなくてスタイルが最高でした。元々美肌な上にお肌のお手入れもちゃんとされてて、いつかはあんな女性とベッドをご一緒したいですね」
にへらと笑みを浮かべながら、憧れていた先輩の最大の魅力を語った。
「…………」
相手の口から思いもよらぬ言葉が連発され、剖良は無言で表情を硬直させていた。
「剖良さん、もうちょっと正直になりません? 性格も家柄も知的さも確かに大切ですけどそれだけなら親友で十分なはずですよね。剖良さんはその人と恋人になりたかったんですから少なくとも性的な魅力を感じていたんでしょう? それを認めない限り、新しい恋は探せませんよ」
穏やかな笑みを浮かべて言った真琴に剖良は心を突き動かされた。
そして両目からじわりと涙を流しながら、剖良は口を開いた。
「……はい、その通りです。……私は、ヤミ子の胸を触りたかった。一緒に部屋のお風呂に入りたかったし、ベッドで愛し合いたかった。なのに、なのに……」
自分が理子と一番したかったことを彼女はこれから柳沢とするのだと想像してしまい、剖良は声を上げて泣き始めた。
両手で涙を拭う剖良を真琴は正面から優しく抱きしめた。
「剖良さん。今は好きなだけ泣いてください。泣いて、泣いて、気が済んだらその人のことは忘れましょう。私でよければいくらでもお相手します」
「……ありがとう、真琴さん」
腕の中の剖良へと静かに呼びかけた真琴に、剖良は涙声で感謝を伝えた。
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