165 / 181
第5部 天然女子高生のための真そーかつ
第148話 物質主義
しおりを挟む
東京都千代田区にある私立マルクス高等学校は今時珍しい革新系の学校で、在学生にはリベラルアーツ精神と左派系の思想が叩き込まれている。
冬休み中の12月24日の昼過ぎ、私、野掘真奈と弟の正輝はお隣さんの6歳児である村田蓮くんを連れてクリスマスシーズン真っ只中の繁華街を歩いていた。
「やったー、かえったらこのあるてぃめっとすぺーすだいおーのおもちゃであそべるぞー!」
「よかったね蓮くん。お父さんとお母さんチキンとクリスマスケーキ買って待ってるって」
今日は蓮くんの両親は朝から昼過ぎまで久しぶりの夫婦デートに出かけていて、私と正輝はご両親から費用と手間賃を貰ってデパートのレストランで蓮くんに昼食を食べさせ、おもちゃ屋で少し前まで放映されていたスペースレンジャーの最強ロボのプラモデルを買ってあげてから帰途に就いていた。
「それにしても周りはカップルだらけだね。姉ちゃんと蓮くんと並んでたら親子みたいに見えるのかな?」
「まさきおにいちゃん、そんなのだめだよ! まなおねえちゃんはしょうらいぼくとけっこんするんだから!!」
「あはは、蓮くんがそう言ってくれて嬉しいけど女の子の方が10歳も上だと色々苦労するからやめといた方がいいよ」
「姉ちゃん、6歳児にそういうこと言わない……」
うっかり蓮くんの夢を壊しそうになりつつ歩いていると、私たちは通りの向こうで謎の団体がデモ行進をしている所に遭遇した。
「アニバーサリー反対ー! クリスマスなどという物質主義に反する文化を今すぐ廃止せよー!!」
「そうだそうだ、アニバーサリーなんてぶっ潰せー!!」
「うわっ、治定度先輩何されてるんですか。クリぼっちが悔しいからってデモしたって何も解決しないですよ」
「ミス野掘、話をいきなり結論に持っていくんじゃない!!」
デモ行進を率いていたのは例によって2年生で軽音部員の治定度力先輩で、大体の事情を察した私は話を早めに切り上げようとした。
「クリスマスに限らず誕生日なんていうのは生まれた日から何周年という意味合いしかない訳で、それをわざわざ毎年祝うのは資源の無駄に他ならない! 俺たち『アニバーサリーを許さない市民の会』はクリスマスや(自粛)誕生日の廃止を全国民に訴える!!」
「誕生日に限定しなくても、例えば有名なゲームがシリーズ30周年記念作品を出すとか言ってそれまで何年間も新作が出なかったりするのも理不尽だ! 新作を出せるならすぐに出すのが一番ファンのためになるんだから、アニバーサリーなんて文化は百害あって一利なしだ!!」
「梅畑君まで参加してるの!? まあそれはちょっと分からなくもないけど……」
同じクラスの高校生プロゲーマーである梅畑伝治君はクリぼっちとは別の理由で「アニバーサリーを許さない市民の会」に参加しているらしく、私はアニバーサリーは確かに誰もが喜ぶ行事ではないのかも知れないと少し思った。
「よくわからないけど、みんなでこうしんしてたのしそう! ところでおにいちゃんたち、きょうはいえすきりすとがうまれてから736695にちめなんだよ! このまえぱそこんでしらべたの!!」
「なっ、何だって!? その理屈だと今日は俺が生まれてから6467日目だから、俺は自分の生誕6467日記念日をデモ行進で祝っていたということなのか!? こんな自己矛盾に満ちた自分は総括だああああああ!!」
「ちょっ、治定度会長!? そんなことしてたらお巡りさんが来ますって!!」
「帰ろっか」
「うん!」
蓮くんの話にショックを受けて地面に頭をガンガンぶつけ始めた治定度先輩を無視して帰りつつ、私はクリスマスの熱気って結構人をおかしくするなあと思った。
(続く)
冬休み中の12月24日の昼過ぎ、私、野掘真奈と弟の正輝はお隣さんの6歳児である村田蓮くんを連れてクリスマスシーズン真っ只中の繁華街を歩いていた。
「やったー、かえったらこのあるてぃめっとすぺーすだいおーのおもちゃであそべるぞー!」
「よかったね蓮くん。お父さんとお母さんチキンとクリスマスケーキ買って待ってるって」
今日は蓮くんの両親は朝から昼過ぎまで久しぶりの夫婦デートに出かけていて、私と正輝はご両親から費用と手間賃を貰ってデパートのレストランで蓮くんに昼食を食べさせ、おもちゃ屋で少し前まで放映されていたスペースレンジャーの最強ロボのプラモデルを買ってあげてから帰途に就いていた。
「それにしても周りはカップルだらけだね。姉ちゃんと蓮くんと並んでたら親子みたいに見えるのかな?」
「まさきおにいちゃん、そんなのだめだよ! まなおねえちゃんはしょうらいぼくとけっこんするんだから!!」
「あはは、蓮くんがそう言ってくれて嬉しいけど女の子の方が10歳も上だと色々苦労するからやめといた方がいいよ」
「姉ちゃん、6歳児にそういうこと言わない……」
うっかり蓮くんの夢を壊しそうになりつつ歩いていると、私たちは通りの向こうで謎の団体がデモ行進をしている所に遭遇した。
「アニバーサリー反対ー! クリスマスなどという物質主義に反する文化を今すぐ廃止せよー!!」
「そうだそうだ、アニバーサリーなんてぶっ潰せー!!」
「うわっ、治定度先輩何されてるんですか。クリぼっちが悔しいからってデモしたって何も解決しないですよ」
「ミス野掘、話をいきなり結論に持っていくんじゃない!!」
デモ行進を率いていたのは例によって2年生で軽音部員の治定度力先輩で、大体の事情を察した私は話を早めに切り上げようとした。
「クリスマスに限らず誕生日なんていうのは生まれた日から何周年という意味合いしかない訳で、それをわざわざ毎年祝うのは資源の無駄に他ならない! 俺たち『アニバーサリーを許さない市民の会』はクリスマスや(自粛)誕生日の廃止を全国民に訴える!!」
「誕生日に限定しなくても、例えば有名なゲームがシリーズ30周年記念作品を出すとか言ってそれまで何年間も新作が出なかったりするのも理不尽だ! 新作を出せるならすぐに出すのが一番ファンのためになるんだから、アニバーサリーなんて文化は百害あって一利なしだ!!」
「梅畑君まで参加してるの!? まあそれはちょっと分からなくもないけど……」
同じクラスの高校生プロゲーマーである梅畑伝治君はクリぼっちとは別の理由で「アニバーサリーを許さない市民の会」に参加しているらしく、私はアニバーサリーは確かに誰もが喜ぶ行事ではないのかも知れないと少し思った。
「よくわからないけど、みんなでこうしんしてたのしそう! ところでおにいちゃんたち、きょうはいえすきりすとがうまれてから736695にちめなんだよ! このまえぱそこんでしらべたの!!」
「なっ、何だって!? その理屈だと今日は俺が生まれてから6467日目だから、俺は自分の生誕6467日記念日をデモ行進で祝っていたということなのか!? こんな自己矛盾に満ちた自分は総括だああああああ!!」
「ちょっ、治定度会長!? そんなことしてたらお巡りさんが来ますって!!」
「帰ろっか」
「うん!」
蓮くんの話にショックを受けて地面に頭をガンガンぶつけ始めた治定度先輩を無視して帰りつつ、私はクリスマスの熱気って結構人をおかしくするなあと思った。
(続く)
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最近の女子高生は思想が強い ~雇用・利子および女子高生の一般りろん~
輪島ライ
大衆娯楽
東京都千代田区にある私立ケインズ女子高校は本来の意味でリベラルな学校で、在学生には寛容の精神と資本主義思想が教え込まれている。
社会派ドタバタポリティカルコメディ、ここでも開幕!!
※この作品は「小説家になろう」「アルファポリス」「カクヨム」「エブリスタ」に投稿しています。
※これは架空の物語です。過去、あるいは現在において、たまたま実在する人物、出来事と類似していても、それは偶然に過ぎません。
※姉妹作「天然女子高生のためのそーかつ」を並行連載中です。(内容に一部重複があります)
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ!
コバひろ
大衆娯楽
格闘技を通して、男と女がリングで戦うことの意味、ジェンダー論を描きたく思います。また、それによる両者の苦悩、家族愛、宿命。
性差とは何か?
【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》
小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です
◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ
◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます!
◆クレジット表記は任意です
※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください
【ご利用にあたっての注意事項】
⭕️OK
・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用
※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可
✖️禁止事項
・二次配布
・自作発言
・大幅なセリフ改変
・こちらの台本を使用したボイスデータの販売
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる