天然女子高生のためのそーかつ

輪島ライ

文字の大きさ
上 下
160 / 181
第5部 天然女子高生のための真そーかつ

第143話 ランダム商法

しおりを挟む
 東京都千代田区にある私立マルクス高等学校は今時珍しい革新系の学校で、在学生には(後略)


「やったー、ゆきのカプセルにミスターソイドのフィギュアが入ってたよ! ここに4人で来たかいがあったよ!!」
「良かったですね。コラボメニューの料金ははたこ先輩持ちですし、私も先輩方とスイーツビュッフェ来られて嬉しいです」

 ある日曜日、私は硬式テニス部のいつもの3人の先輩方と繁華街のスイーツビュッフェ専門店に来ていた。

 このスイーツビュッフェは以前からテレビアニメやゲームとのコラボメニューを展開しており、赤城あかぎ旗子はたこ先輩は最近はまっている少年漫画原作のテレビアニメ『スパイ大家族』のグッズを目当てに私と堀江ほりえ有紀ゆき先輩、平塚ひらつか鳴海なるみ先輩を連れてきたのだった。

 4人で1皿ずつ注文したコラボメニューには1皿につきグッズが入ったカプセルが1つ付いてきて、はたこ先輩が欲しがっていたアニメの主人公のフィギュアはゆき先輩のカプセルに入っていたらしかった。

「あのアニメはわたくしも声優の勉強のために見ていますけど、視聴者に一番人気なのは旗子と鳴海のカプセルに入っていたエスニャみたいですわね。転売すれば結構高く売れるかも知れませんわ」
「うちはまなちゃんが当てたレディミッドナイトの方が乳でかいし美脚やしええと思うけどな。それよりこのパスタ美味しいわ!」
「甘い洋菓子が多いのでアクセントにいいですよね。あ、何か向こうの方で騒いでます?」

 店舗の入り口近くのテーブルから店員さんとお客さんが言い争うような声が聞こえてきたので、私たちはそちらに目をやった。

「お客様、コラボメニューを複数注文してくださったのはありがたいのですが当店では食べ残しはご遠慮しておりまして。罰金などを頂くつもりはありませんが、今後はこのようなことは控えていただければと……」
「えー、だって私たちビュッフェのメニューは全部食べきりましたよ? コラボメニューは単品注文なのに食べ残しちゃ駄目なんですかぁ?」
「お気持ちは分かりますが、でしたら1人で複数のコラボメニューを注文するのは……」
「仕方ないじゃないですか! コラボメニューはどのグッズが当たるかランダムなのに、20種類以上もあるグッズから目当てのを引き当てなきゃいけない側の気持ち分かりませんか? 私たちに文句言う前にこういうランダム商法を何とかしてください!!」

 女子大生かOLさんに見える複数名の女性客は剣や刀をイケメンキャラに擬人化したソーシャルゲーム『美剣みつるぎボーイズ』のコラボメニューを大量に注文して食べ残したらしく、これはどうしても目当てのグッズを手に入れたい客側の事情も食べ残しを敬遠する店側の事情も理解できる一件だと私は思った。

「いくら理屈並べても食べ残しはあかん思うけどな。せやけど沢山種類があるグッズを指定できへんのも確かに大変やな」
「難しい話ですわね。……そうですわ、こういったトラブルから新たなお仕事を作れそうですわ! 帰ったら早速準備を始めます!!」

 店員さんに怒りながら帰っていった女性客を見てゆき先輩はまた何かお金儲けを思いついたらしく、今回はせめて人のためになる商売であって欲しいと私は思った。


 その翌月……

「マルクス中高アメフト部の皆様、本日はこのスイーツビュッフェにお集まり頂きありがとうございます。今回は皆様からビュッフェの料金の半額を頂き、依頼主の女性からは残りの半額とコラボメニューの代金を頂いております。どうぞスイーツビュッフェを半額で楽しんでくださいませ」
「ありがとうございます! でも、それじゃ堀江先輩は儲からないんじゃ?」
「マナの弟君、その点は心配ありませんわ。依頼主が不要なグッズは全てわたくしが引き受け、それを転売すればいくらでも元は取れるという訳です。気兼ねなくお召し上がりなさいませ!!」
「やったー! 部員の皆、今日は皆でビュッフェを食べまくるぞ!!」
「「イエッサー!!」」


『スイーツビュッフェのコラボメニューが原因の食べ残し問題に対処するため近頃都内で広まっている食事代行サービスですが、新たな問題が発生しています。食事代行役として店舗を訪れる男子運動部員のグループが原価割れするほどにビュッフェを食べ尽くす事態が頻発しており、一部の店舗では男性集団客の入店を断る動きも発生しているとのことです』

「キィー! せっかく新しい商売を思いついたのに邪魔されるなんて許せませんわ!! ここは大学の女子レスリングサークルにでも話を持っていくしかありませんわね」
「は、ははは……」

 街頭のテレビモニターで流れているニュースを見て商売の改善策を考えているゆき先輩に、私は先輩の何があっても諦めない姿勢にはある意味憧れるなあと思った。


 (続く)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最近の女子高生は思想が強い ~雇用・利子および女子高生の一般りろん~

輪島ライ
大衆娯楽
 東京都千代田区にある私立ケインズ女子高校は本来の意味でリベラルな学校で、在学生には寛容の精神と資本主義思想が教え込まれている。  社会派ドタバタポリティカルコメディ、ここでも開幕!! ※この作品は「小説家になろう」「アルファポリス」「カクヨム」「エブリスタ」に投稿しています。 ※これは架空の物語です。過去、あるいは現在において、たまたま実在する人物、出来事と類似していても、それは偶然に過ぎません。 ※姉妹作「天然女子高生のためのそーかつ」を並行連載中です。(内容に一部重複があります)

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ!

コバひろ
大衆娯楽
格闘技を通して、男と女がリングで戦うことの意味、ジェンダー論を描きたく思います。また、それによる両者の苦悩、家族愛、宿命。 性差とは何か?

【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》

小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です ◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ ◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます! ◆クレジット表記は任意です ※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください 【ご利用にあたっての注意事項】  ⭕️OK ・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用 ※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可 ✖️禁止事項 ・二次配布 ・自作発言 ・大幅なセリフ改変 ・こちらの台本を使用したボイスデータの販売

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...