141 / 181
第5部 天然女子高生のための真そーかつ
第124話 付加価値
しおりを挟む
東京都千代田区にある私立マルクス高等学校は今時珍しい革新系の学校で、在学生にはリベラルアーツ精神と左派系の思想が叩き込まれている。
夏休み真っ最中の8月。私、野掘真奈は弟の正輝がマルクス中学校アメフト部の友達と海水浴に行くというので保護者代わりに付いてきていた。
「まっ、真奈さん、ご指定のかき氷買ってきましたよ! どうぞ召し上がってください!!」
「ありがとー、後で代金と手間賃渡すね」
「いえいえ、俺らは真奈さんが来てくださっただけで本当に満足なんで! 代金だけで結構ですので!!」
海の家に食べ物を買いに行く係の男子についでにブルーハワイのかき氷を買ってきてとお願いすると彼は全速力で持ってきてくれて、私は水着姿でビーチパラソルの下に寝そべったままかき氷を受け取った。
正輝とは中1の頃から親しいらしいその男子は若干前かがみの姿勢のまま焼きそばや唐揚げなどを正輝たちのいる砂浜に持っていき、私は真夏の日差しの下でかき氷を食べることにした。
「日焼けはちょっと嫌だけどこんな機会でもないと海水浴なんて来ないもんね。後でナンパされちゃったりして」
『楽しんでいるようだな、地球人の少女よ!』
「ギャーーかき氷の中にフナムシがーーーー!!!」
ブルーハワイのシロップをかき分けているとかき氷の中からダンゴムシとGを足して2で割ったような姿の甲殻類が出てきて、私は叫びながらかき氷を砂浜へと放り投げた。
『おっと、驚かせてしまったようで申し訳ない。このかき氷とかいう食物は確かに美味だな』
「いやもう食べられないんで好きにしてくださっていいですけど、また何かあったんですか?」
フナムシに憑依しているのは例によって外宇宙の恒星系から地球を訪れたブラッキ星人らしく、私は先ほどの衝撃に心臓をバクバク言わせながらそう尋ねた。
『ローキ星人との戦争の長期化に伴い宇宙軍もコストカットを強いられているのだが、その中で糧食のコストを大幅に低下させるやり方を考えていてな。この地球という惑星の日本という国には固体の水を砕いて味付きの水をかけて食べるというこのかき氷や、砂糖を膨らませてかじりつくだけの綿あめとかいう食物があると聞き、それで商品として成立する理由を知りたくなったのだ』
「言い方が色々とあれですけど、確かにどっちも原価率がすごく低いらしいですね。でもどっちも露店で安くても300円とかしますよね……」
かき氷や綿あめが300円や400円で売れる理由はこれまで考えたことがなかったが、私は持っている知識を総動員して考察してみることにした。
「そうですね、どっちも材料費は確かに安いですけど、今時のかき氷は氷の砕き方を工夫したり豪華なトッピングを付けたりすることで1000円でも売れてますし、綿あめだって砂糖の味や品質を工夫することで色んなバリエーションを出せるじゃないですか。要は安い材料でも付加価値を上手に付けるのが大事なんじゃないですか?」
『なるほど、このような庶民の食物でも付加価値という概念が考慮されているのだな。我々が兵士用糧食に与えられる付加価値というと……よし分かった、今から母星に戻って会議を開くとしよう。今回も世話になった!』
宇宙人はそう言うとフナムシへの憑依を解いて母星に戻り、私は食べられなくなったかき氷を容器ごとごみ捨て場に捨てて海の家で新しくメロン味のかき氷を買った。
その1か月後……
『地球人の少女よ、兵士用糧食のシチューから肉を抜く代わりにハートマークにカットした根菜ニーンジーンを多めに入れたのだが、兵士たちからふざけるなと苦情が殺到しているんだ。どうか肉なしシチューで満足させる方法を教えてうわなにをするやめくぁwせdrftgyふじこlp;@:』
「知らんっ!!」
庭先にいたダンゴムシに憑依して助けを求めてきた宇宙人に、私はその辺にあったレンガを真上に落としたのだった。
(続く)
夏休み真っ最中の8月。私、野掘真奈は弟の正輝がマルクス中学校アメフト部の友達と海水浴に行くというので保護者代わりに付いてきていた。
「まっ、真奈さん、ご指定のかき氷買ってきましたよ! どうぞ召し上がってください!!」
「ありがとー、後で代金と手間賃渡すね」
「いえいえ、俺らは真奈さんが来てくださっただけで本当に満足なんで! 代金だけで結構ですので!!」
海の家に食べ物を買いに行く係の男子についでにブルーハワイのかき氷を買ってきてとお願いすると彼は全速力で持ってきてくれて、私は水着姿でビーチパラソルの下に寝そべったままかき氷を受け取った。
正輝とは中1の頃から親しいらしいその男子は若干前かがみの姿勢のまま焼きそばや唐揚げなどを正輝たちのいる砂浜に持っていき、私は真夏の日差しの下でかき氷を食べることにした。
「日焼けはちょっと嫌だけどこんな機会でもないと海水浴なんて来ないもんね。後でナンパされちゃったりして」
『楽しんでいるようだな、地球人の少女よ!』
「ギャーーかき氷の中にフナムシがーーーー!!!」
ブルーハワイのシロップをかき分けているとかき氷の中からダンゴムシとGを足して2で割ったような姿の甲殻類が出てきて、私は叫びながらかき氷を砂浜へと放り投げた。
『おっと、驚かせてしまったようで申し訳ない。このかき氷とかいう食物は確かに美味だな』
「いやもう食べられないんで好きにしてくださっていいですけど、また何かあったんですか?」
フナムシに憑依しているのは例によって外宇宙の恒星系から地球を訪れたブラッキ星人らしく、私は先ほどの衝撃に心臓をバクバク言わせながらそう尋ねた。
『ローキ星人との戦争の長期化に伴い宇宙軍もコストカットを強いられているのだが、その中で糧食のコストを大幅に低下させるやり方を考えていてな。この地球という惑星の日本という国には固体の水を砕いて味付きの水をかけて食べるというこのかき氷や、砂糖を膨らませてかじりつくだけの綿あめとかいう食物があると聞き、それで商品として成立する理由を知りたくなったのだ』
「言い方が色々とあれですけど、確かにどっちも原価率がすごく低いらしいですね。でもどっちも露店で安くても300円とかしますよね……」
かき氷や綿あめが300円や400円で売れる理由はこれまで考えたことがなかったが、私は持っている知識を総動員して考察してみることにした。
「そうですね、どっちも材料費は確かに安いですけど、今時のかき氷は氷の砕き方を工夫したり豪華なトッピングを付けたりすることで1000円でも売れてますし、綿あめだって砂糖の味や品質を工夫することで色んなバリエーションを出せるじゃないですか。要は安い材料でも付加価値を上手に付けるのが大事なんじゃないですか?」
『なるほど、このような庶民の食物でも付加価値という概念が考慮されているのだな。我々が兵士用糧食に与えられる付加価値というと……よし分かった、今から母星に戻って会議を開くとしよう。今回も世話になった!』
宇宙人はそう言うとフナムシへの憑依を解いて母星に戻り、私は食べられなくなったかき氷を容器ごとごみ捨て場に捨てて海の家で新しくメロン味のかき氷を買った。
その1か月後……
『地球人の少女よ、兵士用糧食のシチューから肉を抜く代わりにハートマークにカットした根菜ニーンジーンを多めに入れたのだが、兵士たちからふざけるなと苦情が殺到しているんだ。どうか肉なしシチューで満足させる方法を教えてうわなにをするやめくぁwせdrftgyふじこlp;@:』
「知らんっ!!」
庭先にいたダンゴムシに憑依して助けを求めてきた宇宙人に、私はその辺にあったレンガを真上に落としたのだった。
(続く)
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最近の女子高生は思想が強い ~雇用・利子および女子高生の一般りろん~
輪島ライ
大衆娯楽
東京都千代田区にある私立ケインズ女子高校は本来の意味でリベラルな学校で、在学生には寛容の精神と資本主義思想が教え込まれている。
社会派ドタバタポリティカルコメディ、ここでも開幕!!
※この作品は「小説家になろう」「アルファポリス」「カクヨム」「エブリスタ」に投稿しています。
※これは架空の物語です。過去、あるいは現在において、たまたま実在する人物、出来事と類似していても、それは偶然に過ぎません。
※姉妹作「天然女子高生のためのそーかつ」を並行連載中です。(内容に一部重複があります)
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》
小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です
◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ
◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます!
◆クレジット表記は任意です
※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください
【ご利用にあたっての注意事項】
⭕️OK
・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用
※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可
✖️禁止事項
・二次配布
・自作発言
・大幅なセリフ改変
・こちらの台本を使用したボイスデータの販売

雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ!
コバひろ
大衆娯楽
格闘技を通して、男と女がリングで戦うことの意味、ジェンダー論を描きたく思います。また、それによる両者の苦悩、家族愛、宿命。
性差とは何か?
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる