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第5部 天然女子高生のための真そーかつ
第123話 製造物責任法
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東京都千代田区にある私立マルクス高等学校は(後略)
「はえー、あれがゴッホの『ひまわり』言うやつか。せやけどあれも贋作なんとちゃうの?」
「他の絵画は贋作みたいですけど、『ひまわり』だけは本物らしいんですよ。といってもゴッホの『ひまわり』自体が全部で7作品あるそうですけど」
ある日の放課後、硬式テニス部所属の2年生である平塚鳴海先輩と一緒にデパートに来ていた私はちょうど開催されていた絵画展覧会を興味本位で見物していた。
先ほど立ち寄った果実ジュース専門店で私はぶどうジュースを、なるみ先輩はトマトジュースを買い、今はお互い蓋付き紙コップのジュースを飲みながら美術についてよく分からないまま絵画を見て回っていた。
その時……
「君、待ちなさい! 展覧会になぜ塗料タンクを持ってきているんだ!!」
「展覧会は誰でも立ち入り自由のはずでしょう! これは私の個人的な持ち物です!!」
緑色のジャケットを着た長身の白人女性は絵画展覧会に塗料タンクを持ち込もうとして警備員さんに制止され、何らかのテロを警戒した警備員さんは女性から塗料タンクを奪い取った。
「ええい、こうなっては仕方がありません! そこの女子高生、ちょっとお借りしますよ!!」
「うわっ何すんねん、うちのトマトジュースー!!」
女性は上手な日本語でなるみ先輩にそう言うとトマトジュースを奪い取り、その勢いのまま展示されているゴッホの『ひまわり』へと紙コップを投げつけた。
紙コップは『ひまわり』に激突した衝撃で蓋が取れて中身のトマトジュースを飛び散らせ、透明なプラスチックカバーで覆われていたため絵画自体に損傷はなかったものの会場は騒然となった。
「ギャー!! うちのトマトジュースにゴッホの『ひまわり』がー!!」
「先輩、驚き方が逆です!!」
「こんな絵画に何千万ドルもの価格が付くのは許せません! 地球環境の保護と1枚の絵のどちらが大切でしょうか!!」
「何言うとんねん、そんなんうちの美味しいトマトジュースの方が数億倍大事に決まっとるやろ!! 弁償せえこの○○!!」
トマトジュースを飲めなくされて激怒したなるみ先輩は警備員さんが駆け寄ってくる前に環境保護団体の人らしい白人女性を地面に押さえつけ、鬼の形相で彼女を怒鳴りつけ始めた。
「欧米がどうか知らんけど、日本には製造物責任法言うものがあんねん! あんたがトマトジュース弁償せえへんのやったら今すぐあんたのおとんとかおかんを連れてきて弁償させえや!!」
「何を言うのです、元はと言えばあのようなくだらない絵画に何千万ドルもの価値を認める資本主義社会が悪いのです! トマトジュースの責任を取るべきは私の両親ではなくこの資本主義社会全体です!!」
「やかましいわ、製造物責任法は特定の企業や集団に責任を負わせるもんや! せやったらそのくだらん絵画を描いたゴッホを天国から連れてきて賠償させえや!!」
「そのような発言は天国への冒涜です! そうです、この世界の万物を創造したのは神なのですから製造物責任法を問われるべきは神なのです!!」
「あの、私が仲裁に入ると面倒なことになりそうなのであの女子高生さんを犯人から引きはがして貰えませんか?」
「嫌ですよ……」
環境保護団体の女性を拘束したままのなるみ先輩をどうにかして欲しいと頼んできた男性の警備員さんに、私は関わり合いになるのを避けることにした。
(続く)
「はえー、あれがゴッホの『ひまわり』言うやつか。せやけどあれも贋作なんとちゃうの?」
「他の絵画は贋作みたいですけど、『ひまわり』だけは本物らしいんですよ。といってもゴッホの『ひまわり』自体が全部で7作品あるそうですけど」
ある日の放課後、硬式テニス部所属の2年生である平塚鳴海先輩と一緒にデパートに来ていた私はちょうど開催されていた絵画展覧会を興味本位で見物していた。
先ほど立ち寄った果実ジュース専門店で私はぶどうジュースを、なるみ先輩はトマトジュースを買い、今はお互い蓋付き紙コップのジュースを飲みながら美術についてよく分からないまま絵画を見て回っていた。
その時……
「君、待ちなさい! 展覧会になぜ塗料タンクを持ってきているんだ!!」
「展覧会は誰でも立ち入り自由のはずでしょう! これは私の個人的な持ち物です!!」
緑色のジャケットを着た長身の白人女性は絵画展覧会に塗料タンクを持ち込もうとして警備員さんに制止され、何らかのテロを警戒した警備員さんは女性から塗料タンクを奪い取った。
「ええい、こうなっては仕方がありません! そこの女子高生、ちょっとお借りしますよ!!」
「うわっ何すんねん、うちのトマトジュースー!!」
女性は上手な日本語でなるみ先輩にそう言うとトマトジュースを奪い取り、その勢いのまま展示されているゴッホの『ひまわり』へと紙コップを投げつけた。
紙コップは『ひまわり』に激突した衝撃で蓋が取れて中身のトマトジュースを飛び散らせ、透明なプラスチックカバーで覆われていたため絵画自体に損傷はなかったものの会場は騒然となった。
「ギャー!! うちのトマトジュースにゴッホの『ひまわり』がー!!」
「先輩、驚き方が逆です!!」
「こんな絵画に何千万ドルもの価格が付くのは許せません! 地球環境の保護と1枚の絵のどちらが大切でしょうか!!」
「何言うとんねん、そんなんうちの美味しいトマトジュースの方が数億倍大事に決まっとるやろ!! 弁償せえこの○○!!」
トマトジュースを飲めなくされて激怒したなるみ先輩は警備員さんが駆け寄ってくる前に環境保護団体の人らしい白人女性を地面に押さえつけ、鬼の形相で彼女を怒鳴りつけ始めた。
「欧米がどうか知らんけど、日本には製造物責任法言うものがあんねん! あんたがトマトジュース弁償せえへんのやったら今すぐあんたのおとんとかおかんを連れてきて弁償させえや!!」
「何を言うのです、元はと言えばあのようなくだらない絵画に何千万ドルもの価値を認める資本主義社会が悪いのです! トマトジュースの責任を取るべきは私の両親ではなくこの資本主義社会全体です!!」
「やかましいわ、製造物責任法は特定の企業や集団に責任を負わせるもんや! せやったらそのくだらん絵画を描いたゴッホを天国から連れてきて賠償させえや!!」
「そのような発言は天国への冒涜です! そうです、この世界の万物を創造したのは神なのですから製造物責任法を問われるべきは神なのです!!」
「あの、私が仲裁に入ると面倒なことになりそうなのであの女子高生さんを犯人から引きはがして貰えませんか?」
「嫌ですよ……」
環境保護団体の女性を拘束したままのなるみ先輩をどうにかして欲しいと頼んできた男性の警備員さんに、私は関わり合いになるのを避けることにした。
(続く)
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