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第4部 天然女子高生のための大そーかつ
第107話 一次資料
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東京都千代田区にある私立マルクス高等学校は今時珍しい革新系の学校で、在学生には(後略)
「あれ、どうしたの灰田さん。うちの高校に用事?」
「こんにちは野掘さん。実はある人に渡すものがあるんです」
ある日の放課後、下校しようと高校の校舎を出た私は校門の前で他校の友達が誰かを待っているのを見かけた。
彼女はマルクス高校硬式テニス部のライバル校であるケインズ女子高校の灰田菜々さんで、お互い1年生であることもあって普段から部活外でも仲良くしていた。
「灰田さんが私以外で用事がありそうな人というと……誰かな?」
「ごめん灰田さん、応援団の用事で来るのが遅れてしまって申し訳ない」
「いえいえ、全然待ってないですよ。裏羽田さん、これが招待状です」
灰田さんの姿を見て走ってきたのは2年生で応援団長を務める裏羽田由自先輩で、彼は合流するなり灰田さんからチケットらしきものを受け取っていた。
「裏羽田先輩、灰田さんからプレゼントですか? 招待状って一体?」
「ああ、野掘さん。実は今度ケインズ女子高校の学園祭があって、出羽さんに会うために僕も行きたいんだけど学外の男性は招待状を持っていないと入場できないんだよ。それで灰田さんにお願いして招待状を手配して貰ったんだ」
「なるほど、確かに女子校ですもんね」
最近の女子校では変質者対策として文化祭や学園祭に学校関係者でない男性の入場を制限している所が多く、ケインズ女子高校もその一つだったらしい。
裏羽田先輩はケインズ女子高校3年生で硬式テニス部長でもある出羽ののかさんに好意を抱いており、彼女に会いに行くために招待状を入手したようだった。
「灰田さん、今回は招待状を僕にくれて本当にありがとう。絶対に君に迷惑をかけないようにするからね」
「いえいえ、お食事券のお礼ですから。あと耳より情報なんですけど、今回の学園祭では目玉企画としてコスプレ企画があるんです。ののか先輩は最近『霊☆礼☆白書』のアニメにはまってて、火影っていうイケメンキャラが一押しみたいですよ。参考までにどうぞ」
「ありがとう! そうと聞けば僕も火影のコスプレをしないといけないな。帰ってコスプレのやり方について調べてみるよ」
裏羽田先輩はそう言うとレストランチェーンの食事券5000円分を灰田さんに渡し、灰田さんはよかったら野掘さんも学園祭に来てくださいと言ってくれたので私も行ってみることにした。
そしてケインズ女子高校の学園祭当日……
「お疲れ様です! 野掘さん、あえてテニス選手のコスプレとは意表を突きますね」
「灰田さんの妖精のコスプレもいい感じだよ。出羽さんも来てるの?」
「ええ、あっちでアンナマリーズの制服を着てます。……あっ、裏羽田さん、その火影のコスプレ本格的ですね。漫画から飛び出してきたみたいです」
灰田さんの視線の方を見るとそこには有名な少年漫画である『霊☆礼☆白書』のメインキャラクター「火影」のコスプレをした裏羽田先輩が立っていて、先輩は元々大柄な体格だが身長以外はほぼ完璧に火影を再現できていた。
「ふっ、出羽さん、遠くから見てもますます美しい顔をしているな……北欧への憧れだか何だか知らんが、オレの魅力に気づかせてみせるぜ」
「火影ってこんなキャラクターでしたっけ?」
「野掘さん、僕は心からキャラクターになりきってコスプレをするために、アニメやゲームではなく一次資料である原作コミックを読み込んだんだよ。その中でもできるだけ原典を重視するために、初登場した頃の火影になりきることにしたんだ」
私がにわか知識で知っている火影は無口でクールなイケメンキャラだが、裏羽田先輩は初期の火影を再現しようとしているらしかった。
「あら、裏羽田君? その火影のコスプレすっごく上手! もしかして私の好みに合わせてくれたの?」
海外の有名レストランであるアンナマリーズのお洒落な制服を着た出羽さんは裏羽田先輩の姿に気づいて歩み寄ってきて、彼女の姿を見た裏羽田先輩は不敵な笑みを浮かべると口を開いた。
「オレが君の好みに合わせただと? あまりに図星で驚いたぞ。このオレの額を見てみろ! 面白いものがあるぞ!! この邪眼! この邪眼でオレは君の心を掴んでみせるんだぁ!! さぁ楽しくなってきたな、そこの中庭で追いかけっこをしようか! どうだ、君にはオレの残像すら捕らえることはできまぐふぅっ」
「火影はそんなこと言わない!!」
小者感を漂わせながらハイテンションで長文の台詞を口にした裏羽田先輩は、その演技に激怒した出羽さんの右ストレートで顔面を潰されつつ地面に倒れたのだった。
(続く)
「あれ、どうしたの灰田さん。うちの高校に用事?」
「こんにちは野掘さん。実はある人に渡すものがあるんです」
ある日の放課後、下校しようと高校の校舎を出た私は校門の前で他校の友達が誰かを待っているのを見かけた。
彼女はマルクス高校硬式テニス部のライバル校であるケインズ女子高校の灰田菜々さんで、お互い1年生であることもあって普段から部活外でも仲良くしていた。
「灰田さんが私以外で用事がありそうな人というと……誰かな?」
「ごめん灰田さん、応援団の用事で来るのが遅れてしまって申し訳ない」
「いえいえ、全然待ってないですよ。裏羽田さん、これが招待状です」
灰田さんの姿を見て走ってきたのは2年生で応援団長を務める裏羽田由自先輩で、彼は合流するなり灰田さんからチケットらしきものを受け取っていた。
「裏羽田先輩、灰田さんからプレゼントですか? 招待状って一体?」
「ああ、野掘さん。実は今度ケインズ女子高校の学園祭があって、出羽さんに会うために僕も行きたいんだけど学外の男性は招待状を持っていないと入場できないんだよ。それで灰田さんにお願いして招待状を手配して貰ったんだ」
「なるほど、確かに女子校ですもんね」
最近の女子校では変質者対策として文化祭や学園祭に学校関係者でない男性の入場を制限している所が多く、ケインズ女子高校もその一つだったらしい。
裏羽田先輩はケインズ女子高校3年生で硬式テニス部長でもある出羽ののかさんに好意を抱いており、彼女に会いに行くために招待状を入手したようだった。
「灰田さん、今回は招待状を僕にくれて本当にありがとう。絶対に君に迷惑をかけないようにするからね」
「いえいえ、お食事券のお礼ですから。あと耳より情報なんですけど、今回の学園祭では目玉企画としてコスプレ企画があるんです。ののか先輩は最近『霊☆礼☆白書』のアニメにはまってて、火影っていうイケメンキャラが一押しみたいですよ。参考までにどうぞ」
「ありがとう! そうと聞けば僕も火影のコスプレをしないといけないな。帰ってコスプレのやり方について調べてみるよ」
裏羽田先輩はそう言うとレストランチェーンの食事券5000円分を灰田さんに渡し、灰田さんはよかったら野掘さんも学園祭に来てくださいと言ってくれたので私も行ってみることにした。
そしてケインズ女子高校の学園祭当日……
「お疲れ様です! 野掘さん、あえてテニス選手のコスプレとは意表を突きますね」
「灰田さんの妖精のコスプレもいい感じだよ。出羽さんも来てるの?」
「ええ、あっちでアンナマリーズの制服を着てます。……あっ、裏羽田さん、その火影のコスプレ本格的ですね。漫画から飛び出してきたみたいです」
灰田さんの視線の方を見るとそこには有名な少年漫画である『霊☆礼☆白書』のメインキャラクター「火影」のコスプレをした裏羽田先輩が立っていて、先輩は元々大柄な体格だが身長以外はほぼ完璧に火影を再現できていた。
「ふっ、出羽さん、遠くから見てもますます美しい顔をしているな……北欧への憧れだか何だか知らんが、オレの魅力に気づかせてみせるぜ」
「火影ってこんなキャラクターでしたっけ?」
「野掘さん、僕は心からキャラクターになりきってコスプレをするために、アニメやゲームではなく一次資料である原作コミックを読み込んだんだよ。その中でもできるだけ原典を重視するために、初登場した頃の火影になりきることにしたんだ」
私がにわか知識で知っている火影は無口でクールなイケメンキャラだが、裏羽田先輩は初期の火影を再現しようとしているらしかった。
「あら、裏羽田君? その火影のコスプレすっごく上手! もしかして私の好みに合わせてくれたの?」
海外の有名レストランであるアンナマリーズのお洒落な制服を着た出羽さんは裏羽田先輩の姿に気づいて歩み寄ってきて、彼女の姿を見た裏羽田先輩は不敵な笑みを浮かべると口を開いた。
「オレが君の好みに合わせただと? あまりに図星で驚いたぞ。このオレの額を見てみろ! 面白いものがあるぞ!! この邪眼! この邪眼でオレは君の心を掴んでみせるんだぁ!! さぁ楽しくなってきたな、そこの中庭で追いかけっこをしようか! どうだ、君にはオレの残像すら捕らえることはできまぐふぅっ」
「火影はそんなこと言わない!!」
小者感を漂わせながらハイテンションで長文の台詞を口にした裏羽田先輩は、その演技に激怒した出羽さんの右ストレートで顔面を潰されつつ地面に倒れたのだった。
(続く)
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