107 / 181
第4部 天然女子高生のための大そーかつ
第95話 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に(以下略)
しおりを挟む
東京都千代田区にある私立マルクス高等学校は今時珍しい革新系の学校で、在学生には(後略)
「マナちゃん、このクッキー1つどう?」
「ありがとう朝日さん。パンダクッキーってことは香港旅行のお土産?」
夏休み明けの始業式当日、教室に入った私は新聞部員の朝日千春さんから大きめの缶に入ったパンダの模様のクッキーを貰った。
「ううん、香港は最近政情が不安定だから外国のお土産専門のお店で買ったの。本場のやつじゃないけどごめん」
「いやいや、すごく嬉しいよ。そのうち香港にも安心して行ける日が来るといいね」
「本当に。中華人民共和国香港特別行政区国家安全維持法が早く解消されるといいんだけど……」
「えっ?」
「中華人民共和国香港特別行政区国家安全維持法がどうかしたの?」
「あ、いや大丈夫」
「真奈さん、私はお土産はないですけど夏休みに美術館に行きましたよ。これはその時に買ったクリアファイルです」
横から話しかけてきた漫研部員の宝来遵さんはカラフルなクリアファイルを持っていて、その表面には私も見たことがある独特なタッチの絵画が印刷されていた。
「あー、これピカソの絵だよね? 流石は宝来さん、美術に興味があるんだね」
「ええ、漫画を描く者としてパブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・ホアン・ネポムセーノ・チプリアーノ・デ・ラ・サンティシマ・トリニダード・ルイス・イ・ピカソの芸術技法ぐらいは押さえておくべきと思いまして」
「えっ?」
「パブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・ホアン・ネポムセーノ・チプリアーノ」
「ごめんもういいです……」
何となく日常に違和感を覚えつつ始業式に参加した私は、教室に帰る途中に2年生で従兄妹同士である金原真希先輩と裏羽田由自先輩に出くわした。
「お久しぶりです。先輩方、その本は一体……?」
「やあ野掘さん。夏休みに真希が家族で沖縄旅行に行って、米軍基地問題に関する書籍をいくつか買ってきてくれたんだよ。この本は米軍が管理している空域について研究した書籍で、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定及び日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定の実施に伴う航空法の特例に関する法律について深く学ぶためにとても役に立つんだよ」
「私は自分用にこの本を買ったの。沖縄の道路事情に関する研究書なんだけど、後半の章で米軍車両の扱いについての記述もあるから日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定及び日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定の実施に伴う道路運送法等の特例に関する法律のことがよく分かったわ」
「嫌あああああ勘弁してええええええええええええええ」
「うわっ、どうしたんだ野掘さん、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定及び日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定の実施に伴う道路運送法等の特例に関する法律の話でそんなにショックを受けなくてもいいじゃないか。おーい」
私はその場で目を回して倒れ、そのまま2人に保健室へと運ばれて……
「はっ、ここは保健室!?」
「姉ちゃん、さっきからうなされてたけど大丈夫? 昼寝するなら自分の部屋にした方がいいよ」
夏休み真っ最中のリビングのソファで寝ぼけていた私を、弟の正輝は心配そうな表情で見ていた。
(続く)
「マナちゃん、このクッキー1つどう?」
「ありがとう朝日さん。パンダクッキーってことは香港旅行のお土産?」
夏休み明けの始業式当日、教室に入った私は新聞部員の朝日千春さんから大きめの缶に入ったパンダの模様のクッキーを貰った。
「ううん、香港は最近政情が不安定だから外国のお土産専門のお店で買ったの。本場のやつじゃないけどごめん」
「いやいや、すごく嬉しいよ。そのうち香港にも安心して行ける日が来るといいね」
「本当に。中華人民共和国香港特別行政区国家安全維持法が早く解消されるといいんだけど……」
「えっ?」
「中華人民共和国香港特別行政区国家安全維持法がどうかしたの?」
「あ、いや大丈夫」
「真奈さん、私はお土産はないですけど夏休みに美術館に行きましたよ。これはその時に買ったクリアファイルです」
横から話しかけてきた漫研部員の宝来遵さんはカラフルなクリアファイルを持っていて、その表面には私も見たことがある独特なタッチの絵画が印刷されていた。
「あー、これピカソの絵だよね? 流石は宝来さん、美術に興味があるんだね」
「ええ、漫画を描く者としてパブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・ホアン・ネポムセーノ・チプリアーノ・デ・ラ・サンティシマ・トリニダード・ルイス・イ・ピカソの芸術技法ぐらいは押さえておくべきと思いまして」
「えっ?」
「パブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・ホアン・ネポムセーノ・チプリアーノ」
「ごめんもういいです……」
何となく日常に違和感を覚えつつ始業式に参加した私は、教室に帰る途中に2年生で従兄妹同士である金原真希先輩と裏羽田由自先輩に出くわした。
「お久しぶりです。先輩方、その本は一体……?」
「やあ野掘さん。夏休みに真希が家族で沖縄旅行に行って、米軍基地問題に関する書籍をいくつか買ってきてくれたんだよ。この本は米軍が管理している空域について研究した書籍で、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定及び日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定の実施に伴う航空法の特例に関する法律について深く学ぶためにとても役に立つんだよ」
「私は自分用にこの本を買ったの。沖縄の道路事情に関する研究書なんだけど、後半の章で米軍車両の扱いについての記述もあるから日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定及び日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定の実施に伴う道路運送法等の特例に関する法律のことがよく分かったわ」
「嫌あああああ勘弁してええええええええええええええ」
「うわっ、どうしたんだ野掘さん、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定及び日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定の実施に伴う道路運送法等の特例に関する法律の話でそんなにショックを受けなくてもいいじゃないか。おーい」
私はその場で目を回して倒れ、そのまま2人に保健室へと運ばれて……
「はっ、ここは保健室!?」
「姉ちゃん、さっきからうなされてたけど大丈夫? 昼寝するなら自分の部屋にした方がいいよ」
夏休み真っ最中のリビングのソファで寝ぼけていた私を、弟の正輝は心配そうな表情で見ていた。
(続く)
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最近の女子高生は思想が強い ~雇用・利子および女子高生の一般りろん~
輪島ライ
大衆娯楽
東京都千代田区にある私立ケインズ女子高校は本来の意味でリベラルな学校で、在学生には寛容の精神と資本主義思想が教え込まれている。
社会派ドタバタポリティカルコメディ、ここでも開幕!!
※この作品は「小説家になろう」「アルファポリス」「カクヨム」「エブリスタ」に投稿しています。
※これは架空の物語です。過去、あるいは現在において、たまたま実在する人物、出来事と類似していても、それは偶然に過ぎません。
※姉妹作「天然女子高生のためのそーかつ」を並行連載中です。(内容に一部重複があります)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる