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第4部 天然女子高生のための大そーかつ
第94話 ポストハーベスト
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東京都千代田区にある私立マルクス高等学校は今時珍しい革新系の学校で、在学生にはリベラルアーツ精神と左派系の思想が叩き込まれている。
「雨の日もたまにはいいよねー。こうやってハムリンに癒されるの最高~」
朝から雨が降っている日曜日の昼間。私、野掘真奈は自室で飼っているハムスターに癒されていた。
勉強机にはこの間買った小型のハムスター用アスレチック迷路キットが置かれていて、ハムリンは段ボール製の迷路を走り回ったり途中に置いてある回し車で遊んだりしている。
「あっ、ナメクジ! 私ナメクジってそんなに苦手じゃないんだよね。流石に中には入れてあげないけど」
『楽しそうだな、地球人の少女よ!』
「ってあんたかい!!」
勉強机に面した窓の外側をナメクジが這っていて、これは今時珍しいと思っているとそのナメクジには宇宙人が憑依していた。
外宇宙の恒星系から地球を訪れたブラッキ星人は例によって私に相談があるようなので、私は窓を少しだけ開けるとティッシュペーパーでナメクジを包んで勉強机の上に移した。
『それで今日の用件なのだがって食べないでくれええええぇぇぇ』
「駄目だよハムリン、ナメクジなんて食べたら何かやばそうな寄生虫を貰っちゃうよ」
ハムリンは物珍しそうに宇宙人(が憑依したナメクジ)を見ると食いつこうとしたので、私は慌ててハムリンを飼育ケージに戻した。
『という訳で仕切り直しだ。ローキ星人との戦争は現在膠着状態にあるのだが、宇宙軍の内部である問題が起きていてな。我が軍では兵士用糧食の材料には害虫などが付かないよう農薬を散布しているのだが、残留農薬の濃度が安全基準値を超過しているという話が週刊誌から報じられたのだ。この地球という惑星の言葉ではポストハーベスト農薬というらしいが、その問題で一時は軍上層部が大騒ぎになったのだ』
「まあ総力戦が長引けばそういうこともありそうですけど、それなら公的に謝罪するなりして再発を防止すればいいんじゃないですか?」
これまでの相談と比べるとあまり深刻な問題ではなさそうだったので、私は宇宙人同士の星間戦争という話題に慣れてきている自分に気づかずそう尋ねた。
『ああ、その問題は週刊誌の会社を武力制圧して捏造報道ということにできたのだが、騒ぎをきっかけに兵士たちから糧食の味についての不満が多数寄せられているのだ。残留農薬はどうでもいいからもうちょっとましな味にしろというのだが、軍の予算にも限りがあってな』
「そちらの惑星の政情が何となくうかがえますけど、それは確かに難しい問題ですよね。お話を聞く限りでは食材の質を上げるとかは難しそうですし……」
最前線で戦う兵隊さんにとっては普段の食事の美味しさは重要な問題だろうと思いつつ、私は何かお金をかけずに糧食を美味しくする方法がないか考えた。
「そうだ、以前ミリタリー系のライトノベルで読んだことがあるんですけど、カレー粉みたいな調味料を兵隊さん全員に配るのはどうですか? カレー味とかうま味調味料の味みたいな大体誰でも美味しいと思う味の調味料を全員が持っていれば、味が気に食わない時はそれをかけて食べればいいと思うんです。費用対効果も高そうですし」
『なるほど、それはいいアイディアだな。今から母星に帰って採用する調味料を検討するとしよう』
宇宙人はそう言うとナメクジへの憑依を解いて母星に帰ったらしく、私は意識を取り戻して動き始めたナメクジを窓の外に戻してあげた。
1か月後の雨の日……
『地球人の少女よ、兵士たちの士気を向上させる意味も込めて調味料に原生植物シャーブの粉を少しだけ混ぜたのだが、最前線で兵士同士のもめ事や調味料の奪い合いが多発しているんだ。どうかこの事態の解決策を教えてうわなにをするやめくぁwせdrftgyふじこlp;@:』
「知らんっ!!」
再びナメクジに憑依して助けを求めてきた宇宙人に、私はあらかじめ用意しておいた大量の塩を振りかけたのだった。
(続く)
「雨の日もたまにはいいよねー。こうやってハムリンに癒されるの最高~」
朝から雨が降っている日曜日の昼間。私、野掘真奈は自室で飼っているハムスターに癒されていた。
勉強机にはこの間買った小型のハムスター用アスレチック迷路キットが置かれていて、ハムリンは段ボール製の迷路を走り回ったり途中に置いてある回し車で遊んだりしている。
「あっ、ナメクジ! 私ナメクジってそんなに苦手じゃないんだよね。流石に中には入れてあげないけど」
『楽しそうだな、地球人の少女よ!』
「ってあんたかい!!」
勉強机に面した窓の外側をナメクジが這っていて、これは今時珍しいと思っているとそのナメクジには宇宙人が憑依していた。
外宇宙の恒星系から地球を訪れたブラッキ星人は例によって私に相談があるようなので、私は窓を少しだけ開けるとティッシュペーパーでナメクジを包んで勉強机の上に移した。
『それで今日の用件なのだがって食べないでくれええええぇぇぇ』
「駄目だよハムリン、ナメクジなんて食べたら何かやばそうな寄生虫を貰っちゃうよ」
ハムリンは物珍しそうに宇宙人(が憑依したナメクジ)を見ると食いつこうとしたので、私は慌ててハムリンを飼育ケージに戻した。
『という訳で仕切り直しだ。ローキ星人との戦争は現在膠着状態にあるのだが、宇宙軍の内部である問題が起きていてな。我が軍では兵士用糧食の材料には害虫などが付かないよう農薬を散布しているのだが、残留農薬の濃度が安全基準値を超過しているという話が週刊誌から報じられたのだ。この地球という惑星の言葉ではポストハーベスト農薬というらしいが、その問題で一時は軍上層部が大騒ぎになったのだ』
「まあ総力戦が長引けばそういうこともありそうですけど、それなら公的に謝罪するなりして再発を防止すればいいんじゃないですか?」
これまでの相談と比べるとあまり深刻な問題ではなさそうだったので、私は宇宙人同士の星間戦争という話題に慣れてきている自分に気づかずそう尋ねた。
『ああ、その問題は週刊誌の会社を武力制圧して捏造報道ということにできたのだが、騒ぎをきっかけに兵士たちから糧食の味についての不満が多数寄せられているのだ。残留農薬はどうでもいいからもうちょっとましな味にしろというのだが、軍の予算にも限りがあってな』
「そちらの惑星の政情が何となくうかがえますけど、それは確かに難しい問題ですよね。お話を聞く限りでは食材の質を上げるとかは難しそうですし……」
最前線で戦う兵隊さんにとっては普段の食事の美味しさは重要な問題だろうと思いつつ、私は何かお金をかけずに糧食を美味しくする方法がないか考えた。
「そうだ、以前ミリタリー系のライトノベルで読んだことがあるんですけど、カレー粉みたいな調味料を兵隊さん全員に配るのはどうですか? カレー味とかうま味調味料の味みたいな大体誰でも美味しいと思う味の調味料を全員が持っていれば、味が気に食わない時はそれをかけて食べればいいと思うんです。費用対効果も高そうですし」
『なるほど、それはいいアイディアだな。今から母星に帰って採用する調味料を検討するとしよう』
宇宙人はそう言うとナメクジへの憑依を解いて母星に帰ったらしく、私は意識を取り戻して動き始めたナメクジを窓の外に戻してあげた。
1か月後の雨の日……
『地球人の少女よ、兵士たちの士気を向上させる意味も込めて調味料に原生植物シャーブの粉を少しだけ混ぜたのだが、最前線で兵士同士のもめ事や調味料の奪い合いが多発しているんだ。どうかこの事態の解決策を教えてうわなにをするやめくぁwせdrftgyふじこlp;@:』
「知らんっ!!」
再びナメクジに憑依して助けを求めてきた宇宙人に、私はあらかじめ用意しておいた大量の塩を振りかけたのだった。
(続く)
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